オーストラリアで学ぶ、再生可能エネルギー(Sustainability Energy)
オーストラリアは、石炭、液化天然ガス(LNG)、ウランなど複数のエネルギー資源を輸出する世界有数の資源国ですが、いまオーストラリアがエネルギー産業で最も力を入れているのは、
再生可能エネルギー(持続可能なエネルギー) の分野です。
まず、オーストラリアの目標としては、2032年に国内の全ての電力(!)を再生可能エネルギーにシフトすることを目標としています。
国内の電力をすべて再生エネルギーって、なんだか夢のような話ですが、2000年に再生可能エネルギー(再エネ)法が制定されてから、エネルギー産業に力を入れてきたオーストラリア。実は、2000年から2015年までに、発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合は国全体で8%から15%に上昇し、石炭は83%から63%に低下することができました。
再生エネルギーに全力を注ぐオーストラリア
この15年間で、オーストラリア国内の研究や導入実績は年々進み、再生可能エネルギーの生産能力を向上させてきました。ポイントとなるのは、国土の広さを利用した設備投資と、各州の積極的な再生可能エネルギーの導入です。
2020年現在、オーストラリア国内では120超の水力発電、71の風力発電、150万戸の住宅の屋根に太陽光発電が設置され、139のバイオ燃料プラントが稼働し、2020年現在も豊富な自然エネルギーを利用しています。
たとえば
シティーズ・パワー・パートナーシップ(Cities Power Partnership) では、オーストラリアの地方自治体が、再生エネルギー施設の稼働状況を含め、全国各地でどのように再生可能エネルギーを推進しているか確認することができます。
また、オーストラリアは蓄電池の分野にも力をいれてきました。以前に、
アデレード州政府がTESLA社との協力のもと、世界最大の蓄電施設を建設 したことをお伝えしましたが、この蓄電池施設は引き続き2019年は更にパワーアップ。以前のバッテリー(Power pack)の出力も、
当時の100メガワットから、150メガワットになり、 今もアデレードで稼働中です。
また、ビクトリア州政府は、雇用を創出するために再生可能エネルギープロジェクトに1530万ドルの投入も発表しました。
現在、メルボルン市内を走るトラムは、現在、”100%”再生エネルギーを利用し運用されていますが、今後もオーストラリアの各州&各自治体が協力し、再生エネルギーの分野に力を入れていくことになります。
クイーンズランド大学の取り組み
現在、オーストラリアだけでなく、世界的に再生可能エネルギーの研究で注目を浴びているのは、クイーンズランド大学です。
クイーンズランド大学は現在、2020年内に、大学で賄われる電力を”100%”再生エネルギーで行えるよう計画を進めており、これが成功すれば100%再生エネルギーで運営される、世界初の大学となります。
これが実現するかどうかのキーはとなるには、自然エネルギーを最大元電力に変える設備と、蓄電池技術と言われています。その中で、クイーンズランド大学のSt Lucia Campus(セントルシア・キャンパス)だけでも約10,000枚のソーラーパネルを屋上に設置しており、30以上の建物にはクリーンエネルギーを利用するための、ソーラー設備が設置されています。
https://sustainability.uq.edu.au/projects/renewable-energy/uq-rooftop-solar-facilities
また、Gatton Campus(ガトン・キャンパス)では、以前滑走路だった場所に約37,000枚のソーラーパネルを設備しており、南半球で最大のソーラーパワー施設でもあります。
更にGatton Campustから南へ一時間ほどの場所にある、Warwick(ワーウィック)というエリアで、Solar Falmも運営しています。ここは大学のキャンパスではなく、完全にソーラーパワーの研究施設として借りている土地です。
An artist’s impression of the Warwick solar farm after construction.(Supplied: UQ)
上記のように、2020年現在クイーンズランド大学では合計で49,336枚のソーラーパネルが稼働しており、約900万kWhのクリーンエネルギーが発電しています、これはクイーンズランド州の一般家庭1,500軒以上に電力を供給する量です。
また、クイーンズランド大学は先述した
TeslaのPower packを導入し、今月から正式稼働を開始しました 。
今回クイーンズランド大学が導入した蓄電池の容量は、1.1メガワット分でアデレード州の約1/150の電力量ではありますが、これだけでもクイーンズランド大学は3ヶ月間で約74,000ドルの電気代が節約出来るようです。
これで、蓄電池に関する研究もさらに進むことになります。
土地や街の協力、また大学全体の取り組みがなければ実現できないのが、この再生エネルギーの研究分野ですが、クイーンズランド大学が長年力を入れていた分野だけあり、他の大学ではなかなか真似ができない規模になりました。
そんな再生エネルギーの分野を学べるのが、クイーンズランド大学の
Master of Sustainable Energy です。
クイーンズランド大学のMaster of Sustainable Energy
クイーンズランド大学のM
aster of Sustainable Energy では、クリーンエネルギーと分散型再生可能エネルギーへ移行するための方法を学びます。
コース期間は1.5年間で、コース内ではエネルギーの生成、流通、供給など、持続可能なエネルギーを導入していく上での課題や、エネルギープロジェクトの管理、開発における技術、政策、イノベーションの重要性などを学びます。
学校名 クイーンズランド大学
コース Master of Sustainable Energy
キャンパス ブリスベン
期間 1.5年間
入学日 2月、7月
費用 70.392ドル-1.5年間(2021年)-(1ドル72円計算で約506万円)
英語力基準 IELTS6.5(各セクション6.0以上)
相当の英語力
または、クイーンズランド大学付属英語学校(ICTE)経由のPathway進学
成績基準 関連分野のオーストラリアの学士号と同等の学位を取得し、4点満点中、2.35以上のGPAを取得していること。
また、Master of Sustainable Energy (Management)では、よりビジネスに特化した視点で学ぶことができます。エネルギーの手頃な価格の判断、信頼性、環境の持続可能性など、トリレンマ問題(経済発展、エネルギー・資源の確保、環境保全という、相互に両立が困難とされている問題)に対処する準備ができている、エネルギー業界に特化したチェンジ・エージェント(Change Agent)を目指します。
学校名 クイーンズランド大学
コース Master of Sustainable Energy (Management)
キャンパス ブリスベン
期間 2年間
入学日 2月、7月
費用 授業料 45120ドルX2年間=90,240ドル
Student Services and Amenities Fee (SSAF)313ドルX2年間=626ドル
Total non-tuition fee:$2,081
合計:92,947ドル(2021年)
英語力基準 IELTS6.5(各セクション6.0以上)
相当の英語力
または、クイーンズランド大学付属英語学校(ICTE)経由のPathway進学
成績基準 関連分野のオーストラリアの学士号と同等の学位を取得し、4点満点中、2.35以上のGPAを取得していること。
なお、Master of Sustainable Energyと、Master of Sustainable Energy (Management)のいずれも入学条件として、「関連分野の学士号を取得していること」が求められますが、工学、科学、環境管理、経済学、商学、ビジネス、公共政策、国際開発、エネルギーなどが含まれますが、コース名等に限定されるわけではなく、学んだ内容が重視されます。また、必須ではありませんが、関連分野で3~5年の実務経験があることが望ましいです。
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卒業後のキャリア
エネルギー会社を含め、同コース卒業後のキャリアとしては、以下が上げられます。
Sustainable energy engineer
Solar energy technician
Energy project manager
Wind energy solutions manager
Energy and sustainability professional
Sustainability officer
Clean energy policy officer
Energy analyst
Renewable energy manager
Sustainability engagement manager
今後、400億ドルを超える投資と15,000以上の新たな雇用創出が期待されている、再生エネルギー分野。
「エネルギー分野でリーダーシップを発揮するための知識を身につけたい」という方や、「クリーンなエネルギーで世界を変えていきたい」という方には、是非オススメしたいコースです。