オーストラリアで学ぶUXデザイン
ユーザーエクスペリエンス・デザイン(UX Design)とは、読んで字のごとく。ユーザーの”体験”をデザインする分野です。
ユーザーエクスペリエンス(UX)の概念は以前から存在していましたが、ここ数年かなり注目されるようになり、WEBサイトやソフトウェア開発の分野で重要なキーワードとなっています。
ユーザエクスペリエンス(UX)の重要性
とその前に、ユーザーエクスペリエンス(UX)についてもう少し詳しく書いてみます。
ユーザーエクスペリエンス(UX)は「
製品やサービスなど、人工物の利用を通じて得られる体験」を表す言葉とされています。と書くと、なんとなくボヤッとしているのですが、一言で言えばモノの「
使いやすさ」や「
わかりやすさ」を学ぶ分野と考えてみてください。
例えば、「WEBサイトで、ある商品を購入する」考えてみましょう。自分のスマホでサイトにアクセスしたものの「あれ?ボタンが隠れてる」「綺麗だけど文字が小さすぎて見えない。。」「あれ?これ下線?それともリンク?」と言う感じで、わかりにくさを感じた経験があると思います。
それとは反対に、「やりたいことがサクサクできる!画面内は見やすいし、ショッピングカートの情報も詳しい!送料もバッチリわかりやすい!!」というサイトもありますよね。見やすい=顧客の満足度をあげていることになり、それはユーザーエクスペリエンスに力を入れているという意味でもあります。
つまり、顧客が実際に手にしたり、サービスを利用した際に期待する以上の「価値」を作り出すことが、ユーザーエクスペリエンスの役割であり、ユーザーエクスペリエンス・デザインの必要性がここにあります!
UX、UI、ユーザビリティ。うーん・・何が違うの?
ユーザーエクスペリエンス(UX)の分野に興味を持ち始めると、UIやユーザビリティというワードも耳にします。
UI(ユーザーインターフェース)
UXと混乱しがちなワードで、UIがあります。「UX/UI」とワンセットで表記されることもありますが、UXがユーザエクスペリエンスに対し、UIはユーザインターフェース「User Interface」を指します。この2つ、言葉は似てるのですが、若干役割は違います。
WEBサイトやスマートフォンのアプリで言えば、メニューの位置や、画像の大きさ、ボタンやフォントの、色など、主に外観に関わる全ての情報は「UI」となります。
たとえば、ボタンを間違えてタップしないよう配置を考えたり、フォントサイズを決めたりなどユーザーにとって使いやすい画面デザインを行うのがUIの概念です。
usability(ユーザビリティ)
そして、もう一つはユーザビリティ。「あ、ヤコブ・ニールセンのあれですね」と即答しまう方は、すでに理解していると思いますので、ここは飛ばしていただいて結構です!
このユーザビリティも、UXに限りなく同義語として使われる言葉ですが、UXはユーザがその製品やサービスを使う際に、どのような体験をするかというユーザ側の体験を指すのに対して、ユーザビリティは、特定の利用状況においての、製品やサービス側の使いやすさでを指します。
例えばカフェ(コーヒー)を例にそれぞれの違いをお伝えすると、
ユーザビリティ → コーヒー飲みたいな・・家に帰れば飲めるけど、そこにみえるカフェに行ってみようかな、飲みたい時にあるカフェって助かるなー。
ユーザーインターフェース → さて頼もう。メニューが見やすいな。カウンターの高さも丁度いいぞ。そしてこのコーヒーカップ持ちやすい!
ユーザーエクスペリエンス → お!この味、美味しいなー。お店の雰囲気もいいし、椅子もふかふかだ!スタッフもしっかりしているし、気に入った!
といった感じです。ユーザビリティ、ユーザーインターフェース本当にざっくりしていて申し訳ありませんが、「ユーザーエクスペリエンスを高めるために、UIやユーザビリティ」にも気を配る必要がある。と考えていただくのがわかりやすいかもしれません。
オーストラリアの大学(学士課程)で学ぶ
オーストラリアの大学では、Bachelor of Designのコース内で、ユーザーエクスペリエンス(UX)の分野を学べます。
ちなみに、ユーザーエクスペリエンス・デザインの分野は、以前であれば、タスマニア大学の、Bachelor of Computing [Human Interface Technology (HIT) Major]や、クイーンズランド工科大学の、Bachelor of Fine Arts(Interactive and Visual Design)でも学ぶことができましたが、現在は開講していません。
クイーンズランド工科大学では、Bachelor of Information Technology (Information Systems)の副専攻で
User Experienceを学ぶことができますが、あくまで副専攻という点はご注意ください。
というのも現在は、「プロとしてのUXデザイナー」が企業に求められており、大学でも、UX デザインをより深く学ぶコースのみが開講されています。その中でおすすめのコースは以下の4コースです。
大学 3年コース
Computingの分野ではオーストラリアで最も評価の高い、メルボルン大学のBachelor of Design(Computing)です。。UXに関する知識はもちろんですが、コース内では主に、数学、設計、プログラミング、データ構造、アルゴリズムの基本的な原理を学び、UX以外のコンピューターデザインの知識も深めることができます。
後述するクイーンズランド大学と同じく、日本の高校を卒業後に進学を目指す場合、ファウンデーションコース経由(トリニティ・カレッジ)の進学を求められることがほとんどですから、同コースに参加する前に1年間のファウンデーションコース受講が必要と考えていただくのが良いです。
また、オーストラリアのIT査定団体でもある、ACSの認可も受けています。
学校名 | メルボルン大学 |
コース | Bachelor of Design(Computing) |
都市 | メルボルン |
期間 | 3年 |
入学日 | 2月、7月 |
費用 | 1年間 46,922ドルX3年間=140,768ドル (1ドル72円計算で約1,013万円) |
認定機関 | ACSの認可を受けています |
英語 | IELTS6.5(各セクション6.0以上) |
学歴 | オーストラリアのYear12卒業相当(Foundationコースを終了)していること |
スインバーン工科大学のBachelor of Designでは、各デザイン業界のニーズにあわせたメジャーを開講していますが、その中で、UX Interaction Designが選択できます
学校名 | スインバーン工科大学 |
コース | Bachelor of Design(UX Interaction Design) |
都市 | メルボルン |
期間 | 3年 |
入学日 | 2月、7月 |
費用 | 3年間 103,000ドル(1ドル72円計算で約741万円) |
認定機関 | ACSの認可を受けています |
英語 | IELTS6.0(各セクション5.5以上)
または、付属英語学校からのPathway進学も可能 |
学歴 | 日本の高校卒業資格 |
サンシャインコーストでも同じく、Bachelor of Design 内でInteractive and UX DesignのMajorが選択可能です。
学校名 | サンシャインコースト大学 |
コース | Bachelor of Design (Interactive and UX Design) |
都市 | サンシャインコースト |
期間 | 3年 |
入学日 | 2月、7月 |
費用 | 3年間72,000ドル(1ドル72円計算で約518万円) |
認定機関 | ACSの認可を受けていません |
英語 | IELTS6.0(各セクション5.5以上)
または、付属英語学校からのPathway進学も可能 |
学歴 | 日本の高校卒業資格 |
クイーンズランド大学も、コンピューターエンジニアやITの専門家の技術者の技術査定機関(ACS)の認可を受けているコースになります。
学校名 | クイーンズランド大学 |
コース | Bachelor of Information Technology (User Experience Design) |
都市 | ブリスベン |
期間 | 3年 |
入学日 | 2月、7月 |
費用 | 3年間-149,400ドル(1ドル72円計算で約518万円) |
認定機関 | ACSの認可を受けています |
英語 | IELTS6.5(各セクション5.5以上)
または、付属英語学校からのPathway進学も可能 |
学歴 | オーストラリアのYear12卒業相当(Foundationコースを終了)していること |
いずれのコースも、UXデザインの基礎から応用、インターフェース、ユーザーテスト、プロジェクト管理、実際に利用されている市販のデザインツールの利用方法を含めて学びます。また、ウェブサイトやアプリなど、ユーザーを中心としたデジタル製品の設計と開発方法を学ぶことができます。
また、今までグラフィックデザイナーとして働いていたが、UXデザインの重要性を知ることになり、UXデザインの分野を新しく学び始める方も増えており、その場合は、Master of Interaction Designが候補となります。
修士課程でも新しいIT関連技術を学ぶのではなく、ユーザー側が使う上での「設計部分」を中心に学びます。現代のテクノロジーは、日々の生活の中でどのように利用されるべきか、また、日常生活をどのようにサポートするべきかを学び、新しいインタラクティブ・テクノロジーのデザインを通して、問題に対処する方法を学びます。
なお、修士課程のInteraction Designコースは3レベル分かれており、期間に応じてコースを選択することができます。
- Graduate Certificate in Interaction Design-(6ヶ月間)
- Graduate Diploma in Interaction Design-(1年間)
- Master of Interaction Design-(2年間)
大学名 | クイーンズランド大学 |
キャンパス | ブリスベン |
コース | Graduate Certificate in Interaction Design |
期間 | 6ヶ月 |
入学日 | 2月、7月 |
費用 | 6ヶ月 23,464ドル(2021年度)1ドル=70円計算で約165万円) |
認定機関 | ACSの認可を受けていません |
英語 | IELTS6.5(各サブスコアは6.0以上) |
学歴 | Interaction Design/User Experience Design/Multimedia Design以外の学士号を保持しており、GPAが4.0以上/7段階中であること。または、同分野にて2年以上の実務経験があること |
大学名 | クイーンズランド大学 |
キャンパス | ブリスベン |
コース | Graduate Diploma in Interaction Design |
期間 | 2年 |
入学日 | 2月、7月 |
費用 | 1年間 46,928ドル(2021年度) 1ドル=70円計算で約329万円) |
認定機関 | ACSの認可を受けていません |
英語基準 | IELTS6.5(各サブスコアは6.0以上) |
学歴 | Interaction Design/User Experience Design/Multimedia Design以外の学士号を保持しており、GPAが4.5以上/7段階中であること。またはGraduate Certificate in Interaction Designを修了していること。 |
大学名 | クイーンズランド大学 |
キャンパス | ブリスベン |
コース | Master of Interaction Design |
認定機関 | オーストラリアコンピュータ協会(ACS)から認可を受けています |
期間 | 2年 |
入学日 | 2月、7月 |
費用 | 1年間 46,928ドル(2021年度)X2年間=93,856ドル(1ドル=70円計算で約657万円) |
認定機関 | ACSの認可を受けています |
英語基準 | IELTS6.5(各サブスコアは6.0以上) |
学歴 | Interaction Design/User Experience Design/Multimedia Design以外の学士号を保持しており、GPAが5.0以上/7段階中であること。またはGraduate Diploma in Interaction Designを修了していること。 |
卒業後の主なキャリア
UX Designのコースを終了すると、おもにWEBやデザイナー関連の職業につなげることができます。
- Digital designer
- UX designer
- Interactive designer
- App developer
- Interface designer
- Web designer
- Multimedia developer
また、UXデザイナーは先述したように、主に、UXを高めるために、ユーザーインタビュー、SEO対策、ABテスト実施、マーケティング、情報設計、サイト解析、工数管理などを受け持ちます。
例えば、WEBサイト上の写真やデザイン、映画、ゲームなど、視覚に訴えかけるのがグラフィックデザイナーの仕事と考えた場合、マーケティングやアクセス解析、SEOなどサイトの情報設計を理解し、「サービス全体の設計を通してより良いユーザー体験を実現する」のがUXデザイナーの仕事と考えるのがわかりやすいと思います。
こんな方にオススメ
ユーザーエクスペリエンス・デザインの分野はモノの「使いやすさ」や「わかりやすさ」を学ぶ分野と同時に、もう一つ踏み込むとそこには、ユーザーに満足してもらいたいと考える「ホスピタリティ」があると思います。
一流ホテルに滞在した時に、丁寧なベッドメイキングや、椅子のきめ細かい配置を含め、心地よく過ごせる部屋の状態になっていることに感動することがあると思います。
実はユーザーエクスペリエンスの分野も同じで、モノと人との接点で必要な分野です。「モノを通してのホスピタリティ」「満足ではなく”感動”するサービスを作りたい」方、そしてWEBやサービス作りで「神は細部に宿る」という信念を持つ方には、是非オススメしたいコースです。