オーストラリアで学ぶ、ビジネスアナリティクス
現在、多くの企業では様々な方法で「データ」を入手できるようになり、顧客や、製品に関する圧倒的な量の情報に簡単にアクセスできるようになりました。
ただ、そのデータをどう活かすかは企業にとって重要な課題です。単にデータを蓄積しても、そこから未来につながるデータに変えなければ、そのデータに価値はありません。そこで、膨大なデータを必要に応じて、分析、加工し、ビジネス上の課題を見つけ、業績を向上させるスペシャリストが必要となります。
例えば、医療と考えた場合、医療保険の利用者、薬剤の給付頻度など、様々な情報が蓄積されていますが、そのデータを元に治療計画の提示、服薬順守の予測、再入院の回数軽減のペースなどがわかってきます。そして、結果的にビジネスの問題改善につなげることが出来るわけです。
つまり、データに価値を見出し、将来的な予測を立てる方法を学ぶことができるのが、ビジネスアナリティクスの分野です。
他に漏れず代表的な人手不足の分野(特に日本)
まず、このビジネスアナリティクスの分野ですが、AIには欠かせない分野です。
というのも、ビジネスアナリティクスが「データが得られるプロセスを推定し、予測などに活用すること」に対し、AIは「精度を高めつつ、まだ手元にないデータを予測すること」を重視します。つまり、ビジネスアナリティクスで立てた予測を、AIで精度を挙げていくことになります。
ただ、まさにここにも問題があり、Business Analyticsを正しく理解できる人材が少ないため、AIの人材が不足に繋がります。
問題はいくつかあると思いますが、このBusiness Analyticsの分野は日本の学士課程では学ぶことが出来ません。オーストラリアを含め、海外の学士課程のように、専門的なコースが開講していないためです。将来的に、日本の大学でも新しくコースが増えていく可能性もゼロではありませんが、きっと時間はかかるのでしょう。
また、このビジネスアナリティクスの分野では、AIの基礎知識を身につけることもできます。つまりAI関連の人材が不足している日本で働く上でも、大きな武器になる分野といえます。
ビジネスアナリティクスと、ビジネスインテリジェンス、データサイエンスの違い
データサイエンス
大きなデータを取り扱うと意味で「データサイエンス」の分野と混同してしまいますが、ビジネスアナリティクスの分野との一番の違いは、扱う問題の範囲にあります。
データを取り扱う上で、アルゴリズムや統計、テクノロジーを駆使した”データの科学”をデータサイエンスと呼びます。データサイエンスの分野であれば、構造化しているかどうかに関わらず、データから顧客行動などの広い視野を解決するための実用的な情報をを提供してくれます。つまり、あくまでデータから「情報」に変えていくステップです。
その情報を元に、ビジネスで必要な価値ある情報に変えていくのが、ビジネスアナリティクスの分野です。目的としては、「ビジネス上の問題や障害に対する解決策」を提供することになります。その為、それぞれのデータ解析等で利用するツールや技術も違います。データサイエンスの分野でまとめた情報を、ビジネスアナリティクスの分野で解決につなげるとイメージする方がわかりやすいかもしれません。
ビジネスインテリジェンス(BI)
混同されがちなもう一つの用語として、ビジネスインテリジェンス(BI)があります。
ビジネスインテリジェンスの分野も最終的な目標は、「データを分析し、ビジネスの状況をより良く理解し、より良い意思決定を行うこと」にあります。そう考えると、ビジネス・アナリティクスと近いと感じるかもしれません。
ただ、ビジネスアナリティクス(BA)はそのBI(ビジネスインテリジェンス)における過去の分析結果をベースにデータマイニングなどによって多変数で解析し、未来の予測を行います。つまり「今」を分析するビジネスインテリジェンスに対して、そこからさらに一歩進み、「未来」に向けて分析をすることがビジネスアナリティクスの分野と考えるのが良いかもしれません。
データサイエンス – 単体では意味を成さなかった「データ」を、示唆を得られる「情報」に変換すること
ビジネス・インテリジェンス(BI) – 情報をもとに過去に何が起こったのか、現在に至るまでにどのように起こったのかを扱う。理由を深く掘り下げたり、未来を予測したりすることなく、大きな傾向やパターンを特定します。
ビジネス・アナリティクス(BA) – 情報をもとに過去に何が起こったかの理由を扱います。要因と因果関係を分解します。また、これらの理由を使用して、将来何が起こるかを予測します。
オーストラリアで学べるビジネスアナリティクスのコース
まず、ビジネスアナリティクスの分野は、TAFEなど専門学校では開講しておらず、大学以上の教育機関で学ぶ分野となります。
その上で、大学では現在ビジネス・アナリティクスの知識として以下の分野を学ぶことを目的とし、これらの技術を身につけるためのカリキュラムを組んでいます。
- 統計分析ソフトウェアの理解
- プログラミングスキル
- 統計分析ツールの使用方法
- ビジネスインテリジェンスとレポートの作成方法
- データマイニングと視覚化の方法
- AIの基礎
- 分析的な問題解決方法
- 効果的なコミュニケーション
- 創造的思考/li>
ですが、分析スキルやデータ解析に必要な思考方法を学ぶ一方で、あくまで「IT職としての基準をクリアしているか」というのもコース選びで重要なポイントです。その為、ITの査定団体であるACSに認可を受けている点とBusiness Analyticsに特化したカリキュラムを組んでいるという点で、以下の2大学をオススメしたいと思います。
大学 3年コース
たとえば、ディーキン大学は以前までBachelor of Information Systemsの1サブジェクトとして、ビジネスアナリティクスを学んでいましたが、現在は実践的なビジネススキルを学ぶことを目的とし、メルボルンで唯一、ACS認可の学士課程を開講する大学となりました。
データ分析のツールは実際の企業で利用されるPythonや
Tableau(タブロー)を利用し、IBM、Microsoft、Deloitte、Ernst & Young、PwCなど、データ分析の業界の最大手とされる企業と提携していることもあり、インターン中には、実際のプロジェクトに参加します(上記以外の企業の場合もあります)。
大学名 | ディーキン大学 |
キャンパス | メルボルン |
コース | Bachelor of Business analytics |
期間 | 3年 |
入学日 | 2月、7月 |
費用 | 1年間35,000ドル(2021年度)X3年間=105,000ドル(1ドル70円計算で約735万円) |
英語 | IELTS6.0(リーディングとセクション6.0以上)
または、付属英語学校からのPathway進学も可能 |
学歴 | 日本の高校卒業資格 |
もう1大学は、シドニーのマッコーリー大学です。ディーキン大学とほぼカリキュラムは変わりませんが、シドニーで唯一Business analyticsの学士課程をを学べる大学になり、分析ツールを使った授業時間が若干多くなります。
大学名 | マッコーリー大学 |
キャンパス | シドニー |
コース | Bachelor of Business analytics |
期間 | 3年 |
入学日 | 2月、7月 |
費用 | 1年間37,500ドル(2021年度)X3年間=125,000ドル(1ドル70円計算で約787万円) |
英語 | IELTS6.5(各セクションは6.0以上)
または、付属英語学校からのPathway進学も可能 |
学歴 | 日本の高校卒業資格 |
主な科目は下記となります。
必須科目 |
- 会計の基礎
- コンピュータプログラミング入門
- コンピュータサイエンスの基礎
- データベース設計および管理方法
- 情報システムとビジネスプロセス
- ビジネスアナリティクスの基礎
- データサイエンス
- データベースシステム
- 応用統計学
- 経営のために必要な情報システム
- ビジネスの予算割当
- 上級レベルとされる統計技術
- グラフィックス、多変量法、データマイニング
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選択科目 |
企業統計、経営統計について
統計データの解析方法
人口動態の基礎
経営の原則
グループワーク
マーケティングの基礎等
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上記の他、ラ・トローブ大学もBachelor of Business Analyticsを開講していますが、現時点でACSの認可を受けていないため、おすすめのコースとしては掲載していません。
また、上記のディーキン大学、及びマッコーリー大学のいずれも、上記のように3年のコース・カリキュラムを組んでいますが、TAFEやカレッジ経由で進学する場合、Diplomaコースを1年終了後、大学の2年時に編入→合計で3年間で卒業することも可能です。
ただ、ディーキン大学とマッコーリー大学ではPathwayルートが若干違い、ディーキン大学の場合はDiploma of Commerce経由、マッコーリー大学ではDiploma of Information Technology経由の進学を求められますので、注意してください。
大学院 2年コース
修士課程のおすすめコースは以下となります。クイーンズランド工科大学のMasterコースは多くのメジャーの中から、Business Analysisを選択することができ、このメジャーは2020年からスタートしたということもあり、同大学が力を入れている分野です。
大学名 | クイーンズランド工科大学 |
キャンパス | ブリスベン |
コース | Master of Information Technology(Business Analysis) |
期間 | 2年 |
入学日 | 2月、7月 |
費用 | 1年間36,200ドル(2021年度)X2年間=72,400ドル(1ドル72円計算で約520万円) |
英語 | IELTS6.5(各セクションは6.0以上)
または、付属英語学校からのPathway進学も可能 |
学歴 | 学士号を保持し、GPAが4.0以上/7段階評価であること。また、いずれの修士課程のいずれも、IT系の学士号保持者は、1.5年で卒業が可能です |
グリフィス大学は、IIBA(International Institute of Business Analysis)の
認定学術機関として指定を受けています。
ディーキン大学では、通常、8、12または16単位でカリキュラムが組まれており、基本的には16単位(2年間)のカリキュラムが必要ですが、職歴等によって単位数が免除になった場合は、8や12単位で卒業が可能となりコース期間も短くなります。
また、16単位を取得する学生は、12単位点のコアユニットに加えて、必修の0単位点ユニットであるMAI010 Academic Integrityを修了し、4単位点の選択ユニットを履修します。また、他の大学と同じくコース期間中にはインターンシップが含まれています。
大学名 | ディーキン大学 |
キャンパス | メルボルン |
コース | Master of Business Analytics |
期間 | 1.5〜2年 |
入学日 | 2月、7月、10月 |
費用 | 1年間35,000ドル(2021年度)X2年間=70,000ドル(1ドル72円計算で約498万円) |
英語 | IELTS6.5(各セクションは6.0以上)
または、付属英語学校からのPathway進学も可能 |
学歴 | コース期間が1年間(8単位)の場合
– 関連分野での学士でHonoursを保持していること、または
– 関連分野での学士号及び、2年以上の実務経験
コース期間が1.5年間(12単位)の場合
– 関連分野の学士号、または
– 任意の分野の学士号、プラス2年間の関連する実務経験
コース期間が2年間(16単位)の場合
– 学士号を保持していること(分野は問わず)
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また、ボンド大学では
Business Data Analyticsの分野を学ぶことができます。
コース終了後の主なキャリア
コース終了後のキャリアは様々ですが、主なキャリアは、以下となります。
- Applications modeller and developer
- Behavioural forecasting
- Business analyst
- Business process improvement specialist
- Business process modelling consultant
- Customer insights manager
- Data analyst
- Management consultant
- IT planning manager
今後も必要とされる分野
ビジネス・アナリティクスに限ったことではありませんが、「データ分析」の分野を学ぶ場合、勉強しなければいけない領域の範囲が、他のIT系の分野よりも広くなります。その中で、「データが好きだ!」「データで未来を予想していきたい!」と考える方は、オススメしたいコースです。