オーストラリアで学ぶソフトウェア開発
Software Developmentのコースでは、「ソフトウェア開発」に必要な知識を学ぶことができます。
例えば、Photoshopのようなデスクトップアプリケーション、Instagramのようなモバイルアプリ、FacebookやTwitterのようなウェブアプリなどすべて、ソフトウェアに該当します。これらを含め、ソフトウェア開発者の主な目的は「それぞれの環境で動作するようソフトウェアプログラムを書く」ことになります。
また、コースでは、ソフトウェア開発をすすめる上で必要な、IT、ネットワーク、データベース、プログラミングの基礎、システム分析など分野も学ぶことができ、将来的にスタートアップ企業や、IT関連企業、政府機関、通信部門、医療分野など、さまざまな環境で活躍出来る職業といえます。
基礎から学びたい方は専門コースからの進学がお勧め
Software Developmentはコースレベルによって、学べる範囲も大きく変わるため、このページでは各コースレベルの特徴をお伝えしたいと思います。
まず、Software Developmentの分野は、大きく分け、Diploma(専門学校)、Bachelor(学士課程)、Master(修士課程)の分野で学ぶことができますが、2020年現在、オーストラリアで最も多く開講しているSoftware Developmentのコースは、このDiplomaレベルとなります。
カリキュラムとしては、Bachelor(学士課程)で学ぶ1年目相当の内容となりますが、Software developmentの「基礎」を学ぶコースと考えてもらうほうがわかりやすいです。例えば、プログラム言語であれば、HTML、php、androidやJavaの基本など、比較的習得しやすい言語を元に、プログラミングからスタートし、システム分析の基礎、ウェブデザインの基礎などを主に学びます。
専門学校 1年コース
学校名 | TAFE Queensland |
コース | Diploma of Software Development |
期間 | 1年 |
入学日 | 3月、7月、11月 |
費用 | 1年間16,000ドル(1ドル68円計算で約108万円) |
認定機関 | ACSの認可を受けていません |
英語 | IELTS5.5(各セクション5.0以上)
または、付属英語学校からのPathway進学も可能 |
学歴 | 日本の高校卒業資格 |
主な科目は下記となります。
必須科目 |
- ICT環境における著作権、倫理、プライバシーへの貢献
- プログラミングの基礎(HTML、CSS、Javasctipt等)
- ソフトウェア管理ツールを使用した、プロジェクト管理
- アプリケーションのデバッグと監視
- アプリケーションのデプロイ(テスト環境から本番環境への移行方法)
- アプリケーション設計と、仕様に照らし合わせた検証方法
- 中級向けのオブジェクト指向プログラミング
- ソフトウェア開発のためのテスト技術
|
選択科目 |
データベースの基礎設計
基本的なモバイルデバイス用のゲーム作成
ビジネス要件を特定するための基礎的なデータ収集方法
ICTのニーズを組織の戦略的方向性と一致させる方法
クラウドコンピューティングサービスの基礎
基礎的なウェブベースのプログラム作成
|
DiplomaはSoftware Developmentの基礎を学べると書きましたが、言い換えればあくまで基礎レベルです。基礎知識ですから、おろそかにはできないものの、Diplomaコース終了後に即戦力として企業で採用されるかと言われれば、難しいでしょう。
「留学期間が1年のみ」という場合は検討してほしいコースではありますが、将来的にソフトウェア開発者としてキャリアを考えているのであれば、下記のBachelor以上の学位を目指していただきたいです。
本格的な分野は大学から
現在、多くの企業で求められている技術、知識はBachelor以上のレベルで学ぶことができます。
Diplomaコースで学ぶ知識と比較した場合、Bachelorコースでは「より大規模なソフトウェアシステムや、それらがどのように設計され、作成されるかを学べる」と考えるほうがわかりやすいかもしれません。
下記の University of South Australia では、インターフェイスデザイン、データ構造、C++ によるソフトウェア開発、ソフトウェア開発とクラウドプログラミングに必要な各種ツールの使い方、.NET を使ったアジャイル開発、システム分析手法、などなど、Software Developer として働くために、重要な分野を踏み込んでを身につけることができます。
さらに200社以上の業界パートナーと提携しており、例えば、富士通オーストラリア、SA Water(サウスオーストラリア州政府が所有する政府系水道企業)、Uniting Care Wesley Adelaide(コミュニティサービス関連政府機関-NPO)ほか、IT業界においても、インターンシップという形で、実社会での経験を積む機会があります。
また、南オーストラリア大学内には下記の研究センターが運営されています。
上記は世界レベルの施設を有する研究機関でもありますが、在学中は、上記で運営されているシステム開発施設を利用することができるため、これは、大学ならではの大きな利点です。
大学 3年コース
大学名 | 南オーストラリア大学 |
コース | Bachelor of Information Technology (Software Development) |
期間 | 3年 |
入学日 | 2月、7月 |
費用 | 1年間35,300ドル(2021年度)X3年間=105,900ドル(1ドル68円計算で約720万円) |
認定機関 | ACSの認可を受けています |
英語 | IELTS6.0(リーディングとセクション6.0以上)
または、付属英語学校からのPathway進学も可能 |
学歴 | 日本の高校卒業資格 |
Year1 | Year2 | Year3 |
- 情報技術の基礎
- 問題解決とプログラミング
- ネットワークの基礎
- デザイン思考の原則と方法論
- オブジェクト指向プログラミング
- データ分析とWEB技術
- システム要件とユーザー体験
- システム要件の原則
|
- インターフェースの設計、相互作用について
- WEB開発
- データ構造について
- 企業向けデータベースの基礎
- システム設計について
- ソフトウェア開発のためのツール
- C++によるソフトウェア開発
- コンピュータサイエンスの基礎
|
- .NETを使ったAgile(アジャイル)開発
- 並行プログラミングについて
- 人工知能(AI)の基礎
- クラウドプログラミング
- モバイルアプリケーションのエンタープライズ開発
- ICTプロジェクト
|
また、多くの大学では上記のように3年のコース・カリキュラムを組んでいますが、TAFEやカレッジ経由で進学する場合、Diplomaコースを1年終了後、大学の2年時に編入→合計で3年間で卒業することも可能です。
専門学校1年+大学 2年コース
カレッジ名 | SAIBT |
コース | Diploma of Information Technology |
期間 | 8ヶ月 |
入学日 | 2月、7月 |
費用 | 1年間32,000ドル(2021年度)(1ドル68円計算で約217万円) |
認定機関 | ACSの認可を受けていません |
英語 | IELTS5.5(リーディングとセクション5.0以上)
または、付属英語学校からのPathway進学も可能 |
学歴 | 日本の高校卒業資格 |
大学名 | 南オーストラリア大学 |
コース | Bachelor of Information Technology (Software Development)
|
期間 | 2年 |
入学日 | 2月、7月 |
費用 | 1年間35,300ドル(2021年度)X2年間=70,600ドル(1ドル68円計算で約480万円) |
認定機関 | ACSの認可を受けています |
英語 | Diplomaで規定の成績を収めた場合免除 |
学歴 | Diplomaで規定の成績を収めた場合免除 |
大学院では新興技術の分野も
Masterコース(修士課程)では、Bachelorコースよりも更に高度な分析的、概念的、論理的思考を学ぶことができ、一部のコースでは新興技術の設計や、モバイル、ウェブ、クラウドコンピューティングの開発に関する専門知識を学ぶことができる点が、特徴です。
ちなみに、新興技術は現在であれば、5G通信、サイバーセキュリティ、ブロックチェーン、AI、IoT、次世代電池、量子コンピューティング、ナノセンサー、ドローン、3D プリンティング、自動運転などがあげられます。
この中には、ドローンや3Dプリンタのような明確なカテゴリもあれば、AIやブロックチェーンのような数えきれない製品・サービスのプラットフォームに組み入れられたりするものもあります。2020年現在であれば、AIが最も注目されている分野になり、サイバーセキュリティ関連も、多くの企業が開発に力を入れている分野ですが、これらの技術にもソフトウェア開発が必要です。
上記の新興技術に関する知識を身につけることが出来る点に加え、コース内でプロトタイプを作成し、インタラクションデザインの概念を学ぶこともできますから、これから高い需要が見込まれる分野の、ソフトウェア開発を学べるという点で、クイーンズランド工科大学のMasterコースはオススメです。
大学院 2年コース
大学名 | クイーンズランド工科大学
|
コース | Master of Information Technology(Software Development) |
期間 | 2年(IT関連の学士号を保持している場合は1.5年) |
入学日 | 2月、7月 |
費用 | 1年間36,200ドル(2021年度)X2年間=72,400ドル(1ドル68円計算で約492万円) |
認定機関 | ACSの認可を受けています |
英語 | IELTS6.5(サブスコアはすべて6.0以上)
または、付属英語学校からのPathway進学も可能 |
学歴 | 学士号を保持しており、学士課程のGPAが7段階中4以上 |
Year1 | Year2 | 選択科目 |
- コンピューターシステムの基礎
- システム分析と設計
- データベース
- プログラミングの基礎とアルゴリズムの理解(C#)
- セキュリティとネットワークの基礎
- オブジェクト指向のプログラミング
- WEB開発の基礎
- 管理情報システムについて
|
- オブジェクト指向について
- データ構造とアルゴリズム
- IT産業について
- WEBアプリケーション及び、モバイルアプリケーション開発
- 高度なアルゴリズムのと、計算複雑性理論
- IT分野の研究実践
- クラウドコンピューティング
- 新興技術の相互作用設計
|
- ネットワークエンジニアリングに関する知識
- モバイルネットワーク
- 情報システムコンサルティング
- ネットワークシステム
- データマイニング
- データベースの応用
|
コース名には惑わされないように
Software Developmentに限ったことではありませんが、特にIT系のコースはコース名が様々です。また、2020年現在Software developmentの分野は、下記のコース名で開講していますが、実際に学びたい内容が含まれているかは、各大学のWEBサイト等で確認しましょう
- Bachelor of Software Development
- Bachelor of Information Technology(Software Development)
- Bachelor of computer Science(Software Development)
- Bachelor of Advanced Computing(Software Development)
プログラミングの知識について
ソフトウェア開発分野で活躍する上で、プログラミングの知識は必須です。ですが、Diploma,Bachelor、Master含め、手取り足取りコーディングについて教えてくれるようなことはありませんし、コード自体を書く機会は授業内で設けられているものの、それだけで十分とは考えないほうが良いです。
ITの分野では、いかに自分の価値を高めるかが重要となりますが、企業で求められているプログラミング(コーディング)技術や知識は、別途コース以外の時間で学ぶ必要があります。
その為、プログラミングについては、留学前にオンラインのコース等で基礎を身につける他、オーストラリアの
プログラミング専門コースに参加いただくのも一つの方法です。
また、卒業までの年数の違いも一つの理由になりますが、BachelorよりMasterコースのほうが座学重視の授業となります。
コース終了後の主なキャリア
オーストラリア政府の
Joboutlook Serviceによると、ソフトウェアやアプリケーションプログラマーとして働く人の数は非常に強く成長しています。
また2020年現在、新型コロナウイルスの影響で求人数が減ってはいますが、職種で見た場合、ヘルスケア、医療部門について、2番めに多いのが、IT関連の職業です。
特にテレワークへの移行がしやすい職業ということもあり、これからも需要が続く分野にはなりますが、今後5年間で約80,000〜90000人の求人があると予想されており、Software Developmentのコース終了後は下記のIT関連職を目指すことができます。
- Database administrator
- IT manager
- IT team leader
- Programmer
- Project manager
- Software architect
- Software developer
- Software engineer
- Software designer
- iOS developer
- Web developer
- Business Analyst
- Computer Salesperson/Marketer
- Computer Scientist
- Tester
ちなみに、「Software engineer」の分野は、厳密にはSystem Engineering(システム工学部)の分野を学んだ方が就くポジションとなりますが、実際、System DevelopmerとSystem Engineerは業務内容で重複していることも多く、求人募集の際もSystem Engineerという名前でして募集するため、年々垣根が無くなっています
ただ、System Engineerの場合、システム工学を学ぶことになり、より広い範囲でのシステム開発に従事ることができるため、System Developmentと同じく、System Engineerを目指す方も年々増えている状況です。
この違いについては、また別記事で書いていこうと思います。
ソフトウェア開発者を目指すなら
ソフトウェア業界は、今後も将来性が高い業界だと言われていますが、人材不足が深刻化している分野でもあります。これは、求められるプログラミング言語の多様化、トレンドの移り変わりの速さ、育成に時間がかかる点などが理由に挙げられますが、企業が優秀な人材を奪い合う傾向が高い分野になるためです。
「優秀な人はどの企業も欲しい」という点は、どの分野でも同じだと思いますが、プログラミングの知識だけでなく人工知能やクラウドといった最新トレンドの知識も求められる可能性があるため、そうした最新技術に対しても常に情報を収集出来る方、そして何より、「
ソフトウェア開発を通じて世界を変えてみたい!」という方には、是非オススメしたいコースです。