オーストラリアの大学・大学院進学を目指している方の中には、コースを選ぶ際に、将来どんな仕事につけるのかを重視する人も多いと思います。今回は、会計学を学んだ方がに主に目指す職業についてご紹介します。会計学を学んだ人が就く職業といえば、アカウンタント(Accountant)ですが、大きく分けて2つの職業を含みます。
公認会計士
働く国の法律に沿った資格を保有している必要があります。例えば、オーストラリアでメジャーな資格にCPAが挙げられますが、認定の大学や大学院で所定の科目を学ぶと準会員になることができます。準会員にはCPAプログラムを受ける資格が与えられ、このプログラムの修了と3年間の実務経験を経て正会員になることができます。法律に沿った資格はこの正会員のみであり(準会員は資格保持者ではない)、正会員になるまでは会計事務所で公認会計士のアシスタントをしたり、一般企業で会計担当者として働いて経験を積みます。
公認会計士になると、会計法の専門家として、法人・個人を含む様々な人を顧客に簿記や税務関係のアドバイス、タックスリターン、法理、企業監査、決算手続き、ビジネスコンサルティング、M&Aなどのサービスを提供できるようになります。大きな会計事務所に所属して活躍する公認会計士もいれば、独立開業して地域密着のサービスを提供している公認会計士もいます。
オーストラリアで取得したCAやCPAなどの資格は、原則オーストラリア国内で有効となります。USCPAなど相互承認協定を結んでいる国もありますので、その国の会計士団体が指定する条件を満たすことで公認会計士として働けるチャンスもあります。ただし、これは資格を書き換えるのではなく、あくまでCAやCPAの資格を維持する必要があること、オーストラリアの法律で認められた居住者であることなどが条件になっている国もあることなどから日本人にとってはハードルが高くなります。また、現在のところ日本の公認会計士との互換性はありません。
つまり、オーストラリア以外で公認会計士として働きたい方は、それぞれの国の資格取得に向けて学ばれることをお薦めします。
なお、公認会計士になることと就労ビザ取得は別問題です。オーストラリアで公認会計士になりたい方は、CPAプログラムの受講などと同時に就労ビザ取得に向けても努力する必要があります。
ビザについては弊社でアドバイスすることができかねます。必要な方はビザエージェントにご相談ください。
企業内の会計担当
企業内の会計担当とは、従業員として一つの会社の会計専門部署で働くことです。財務部や経理課などをイメージしていただければいいと思います。資格職ではないため、大学卒業後すぐに就ける仕事です。また、各国の法律の影響を受けないため、世界中に雇用のチャンスはあります。適正な会計処理を行うことも大事な仕事のひとつですが、仕事はそれだけではありません。アカウンタントとしての分析力などを活かして営業や経営企画など会計以外の部署で活躍している人もいますし、財務などのスペシャリストとして社内プロジェクトに携わることもあります。
日本で働く
日本では総合職の中から財務部や経理課などに配属されるイメージですが、最近では中途採用を中心に専門職として採用されることも多いようです。
ビジネスのグローバル化により大企業・中小企業を問わず、海外に子会社を持っている企業や海外に取引先がある企業はたくさんあります。グループ企業内での売買、連結決算などで子会社とやり取りをしたり、海外取引先へ支払い条件を確認したり、駐在員のために海外の銀行とやり取りしたり、日本にいながら世界と繋がっている仕事がたくさんあり、英語ができる会計担当者の必要性は年々増加しています。あまりイメージにはありませんが、中には子会社の業績把握や決算のため海外を飛び回っている方もいます。
近年はグローバル化により海外子会社との連結決算などにおいて不便が生じることなどから、日本でも国際財務報告基準による処理ができるようになりましたが、この国際財務報告基準を理解している人は日本にはまだ少なく、オーストラリアのように国際会計基準を採用している国で会計学を学ぶことは日本で働く上でもアドバンテージになります。
日本企業の会計部門で働くAさんの話
私が勤務している会社は海外にたくさんの子会社を保有しているため、駐在員の給与計算などのやり取りや決算書の内容確認など、海外子会社の会計担当者と英語で対応することも多いです。また、社内の大きなプロジェクトのため会計担当者にも声がかかることもあります。英語ができる人が優先されるため、いつもバイリンガルの同僚に負けて悔しい思いをしていますが、いつかは任せてもらえるよう日々英語のブラッシュアップに努力しています。
オーストラリアで働く
オーストラリアの大学(2年以上のコース)を卒業すると2年間、大学院(2年以上のコース)を卒業すると3年間の卒業生ビザを申請することができます。また、指定地方都市の学校を卒業し、そのエリアに卒業生ビザの期間中居住するなどの条件を満たせば、更にセカンド卒業生ビザ(1~2年)を申請することができ、この期間はフルタイムの仕事をすることが可能です。(2011年以前に学生ビザを取得したことがある方は条件が異なります。また、2023年7月1日より特定職種については卒業生ビザの期間が+2年となりますが、現時点でAccountantは特定職種に該当しません。申請の可否など詳細は
移民局ウェブサイト ※外部リンクをご確認ください。)。就職活動では、職務経験があり即戦力として働けることがポイントになるため、学生時代にいい成績を取ることはもちろん、積極的にインターンシップに参加する、人脈作りに努める、関連のあるポジションでアルバイトをする、英語力を高めるなど、しっかり準備をしておく必要があります。
卒業生ビザの後もオーストラリアで働きたい場合は、就労可能なビザを取得する必要があります。Accountantは現時点で独立技術永住権申請のための
Skilled Occupation List ※外部リンクに載っていますが、2022年12月8日のInvitation RoundでAccountants (General) 85ポイントでした(
移民局ウェブサイトInvitation Round ※外部リンク)。
卒業生ビザ後、日本で就職活動したBさんの話
日本や他の国での充実したステップに進むためにも、卒業生ビザの間にどのように働くかはとても重要です。私は大学院卒業後に日本での就職活動(中途採用)をしましたが、英語ができる会計担当者の需要はそれなりにあると感じました。国内にしか店舗がない飲食チェーンでも、食材などの仕入れを海外から行っていたりするためです。ただし、よく話を聞いてみると「ひとりで月次締めができる・その経験がある」というのが最低条件になっていた会社がほとんどでした。つまり、会計担当者としてスムーズに次のステップへ進むためには、そういったことができるポジションで経験を積む必要があります。
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日本・オーストラリア以外の国で働く
企業内の会計担当は資格職ではないため、オーストラリアや日本以外の海外企業で働くチャンスもあります。ただし、ご自身の努力次第というのは言うまでもありませんが、就業ビザが必要になるため、就職活動ではそこも含めて話を進める必要があります。
オーストラリアが採用している国際会計基準はヨーロッパやアジアをはじめ世界中のほとんどの国で会計法の基準となっています。逆に、日本は国際財務報告基準による会計処理が認められるようになったとは言え、長年の米国経済との関係から米国基準を会計法や会計規則のベースとしています。つまり、オーストラリアで学ぶ会計学を学ぶということは国際的な会計法を学ぶことであり、海外で働くチャンスを広げることに繋がります。
大学や大学院で学ぶということは、その知識やスキルを武器にキャリアを形成していくということです。コース選びの際には、それを学ぶとどんな仕事につけるのか、それは自分が本当にやりたいことなのか、将来の自分をイメージしてみたり、長期的なプランを立ててみたりすることも大切だと思います。
*本記事は2023年2月現在の情報に基づいており、ビザ情報や資格情報などは変更されることもございますのでご留意ください。
*会計学について詳しく知りたい方は「
オーストラリアで会計士を目指す」をご覧ください。
*会計学ではどんなことが学べるのか知りたい方は「
卒業生がご紹介【会計学では何を学ぶの?】」をご覧ください。