パースのある西オーストラリア州はオーストラリアの約3分の1を占める広大な州。この広大な土地を活かした西オーストラリア州の農業は私たちの生活を支えるだけでなく、輸出も盛んで、州内で生産される農作物の80%は海外に輸出されています。
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輸出内容は主に、小麦、大麦、キャノーラ、羊毛、羊肉、ワインですが、その他、牛肉や、主に東南アジア・中東に輸出されている人参などがあります。
もちろん、私が日頃行くスーパーでも地元で生産される野菜や果物、肉類が多く販売されており、オーストラリア人の食と健康を支えています。
そんな西オーストラリア州、パースにある
西オーストラリア大学の農業科学分野は
上海世界大学ランキング(2024)の「農業科学」では全豪1位、世界9位、QS世界大学ランキング(2025)の「Agriculture & Forestry:農業・林業」で全豪3位、世界37位となっています。
急激な人口増加、気候変動、限られた土地と水。これらの問題をいかに解決し、農業のシステムを確率させるか。土壌、遺伝子、作付け、家畜、農業経済、マーケティングなどを学び、フィールドトリップで実践的な農業科学について経験する
トップレベルの農業科学コースを学べる西オーストラリア大学のコースについてご紹介いたしましょう。
学士号レベルでは
2つの学部の開講があります。
Bachelor of Science(理学部)
コース名 |
Bachelor of Science |
期間 |
3年 |
授業料 |
A$49,200(日本円で約4,674,000円)(2025年度)
こちらの奨学金あり |
英語入学条件 |
IELTS6.5(各セクション6.0以上) |
学歴入学条件 |
ファンデーションコース卒業もしくは、IB24以上、大学1年修了資格
高校・ファンデーションコースで数学・化学要
|
Bachelor of Scienceの29のメジャーのうち、以下の3つが農業関連の専攻です。
Agribusiness(アグリビジネス)
ビジネスと経済の原則を応用し、食糧安全保障、農業システム、進化する消費者市場といった世界的な課題に取り組むコース。マネジメント、チームワーク、クリティカルシンキング、コミュニケーションなどの実践的なスキルを得て農業業界に影響を与える要因や環境条件について深い理解と対応力を養い、農業の計画、流通といった現実の課題に対応できる学生を育てます。
Science Work Placementという実習の機会も必修科目として用意されています。
Science Work Placementとは?
実習を通して、求人の探し方から、実際の職場体験、学期末にはレポート提出とプレゼンテーションを提出する科目です。
職場で求められる能力や態度
就職活動の流れやその中で必要となるスキルの習得
自己分析(自分の強みや弱みの理解)
求人の探し方
履歴書や志望動機書の作成
面接対策
学生から社会人になる際に必要な意識の変化(文化の違い)や、職場への適応についての理解
Agricultural Science(農業科学)
急速な人口増加や気候変動、限られた土地と水資源といったグローバルな問題解決に向け、持続可能な産業と地域社会を育むために科学的な視点に基づいた持続可能で収益性が高く、倫理的な食料生産を可能にする技術と知識を学びます。
この専攻を通じて、土壌科学、遺伝学、作物生産システム、土壌と植物の相互作用、畜産生産、農業経済学、穀物マーケティングなどを学び、1〜2回のフィールドトリップ(最大4泊)で実践的な学びを得られるよう科目構成がなされています。(食費や宿泊費などの費用は別途学生負担)
Agricultural Technology(アグリテック)
この専攻では、農業の基礎的な知識に加え、データ管理・分析、地理情報システム(GIS)、リモートセンシングなどのスキルを習得し、食料生産をより効果的・効率的かつ持続可能になることを目指します。この専攻を通じて、農業・農場システムの情報を統合し、目的をかなえるための的確な意思決定ができる力を身につけることができます。
Bachelor of Agricultural Science(農業科学部)
このコースには学士のみのコースと修士までつながるコースの2つの選択肢がありますが、学士レベルのコースは
Agricultural Science and Technology (Extended Major)です。
このコースでは、伝統的な農業科学(作物、家畜、土壌、農業経済)に加えて、最新の農業技術やデータ分析スキルを体系的に学べます。単なる農業の知識ではなく、データを活用して意思決定し、農業経営を改善する力を育てることを目指します。
コース名 |
Bachelor of Agricultural Science
Agricultural Science and Technology (Extended Major) |
期間 |
3年 |
授業料 |
A$49,200(日本円で約4,674,000円)(2025年度)
こちらの奨学金あり |
英語入学条件 |
IELTS6.5(各セクション6.0以上) |
学歴入学条件 |
ファンデーションコース卒業もしくは、IB26以上、大学1年修了資格
高校・ファンデーションコースで数学・化学要
|
上記学部の必修科目の違い
Bachelor of Science、Agricultural Technologyメジャーと
Bachelor of Agricultural Science、Agricultural Science and Technology (Extended Major)メジャーは、ほぼ同じ必修科目が開講されていますが、具体的にどの科目が違うのかを見てみましょう。
※太字はBachelor of Science、Agricultural Technologyにはないが、Bachelor of Agricultural Science、Agricultural Science and Technology (Extended Major)メジャーにはある科目
【1年次の必修科目詳細】
Agricultural Technology |
必修科目3つ
AGRI1001 Feeding the World
SCIE1104 Science, Society and Data Analysis
SCOM1101 Communicating Science
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Agricultural Science and Technology |
AGRI1001 Feeding the World
BIOL1131 Plant and Animal Biology
SCIE1104 Science, Society and Data Analysis
SCOM1101 Communicating Science
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【2年次の必修科目詳細】
Agricultural Technology |
必修科目3つ
AGRI2201 Pasture and Livestock Systems
GEOG2201 Geographic Information Systems
SCIE2205 Science Work Placement
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Agricultural Science and Technology |
必修科目6つ
AGRI2201 Pasture and Livestock Systems
ENVT2236 Soil Science
GENE2250 Principles of Inheritance
GEOG2201 Geographic Information Systems
PLNT2201 Plants in Action
SCIE2205 Science Work Placement
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【3年次の必修科目詳細】
Agricultural Technology |
必修科目4つ
AGRI3003 Decisions from Data in Agriculture
ECON3300 Agricultural Economics and Marketing
GEOG3301 Advanced GIS and Remote Sensing
SCIE3314 Crops and Cropping Systems
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Agricultural Science and Technology |
必修科目6つ
AGRI3003 Decisions from Data in Agriculture
ANIM3306 Clean, Green and Ethical Animal Production
ECON3300 Agricultural Economics and Marketing
ENVT3060 Soil–Plant Interactions
GEOG3301 Advanced GIS and Remote Sensing
SCIE3314 Crops and Cropping Systems
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2つのコースを比較すると、Agricultural Science and Technology Extended Majorでは、下記の5科目も必修科目となっています。
BIOL1131 Plant and Animal Biology
ENVT2236 Soil Science
PLNT2201 Plants in Action
ANIM3306 Clean, Green and Ethical Animal Production
ENVT3060 Soil–Plant Interactions
特に土壌と動物生物学の科目となりますが、動物、植物、菌類の形態と機能の多様性や、これらの特性と環境管理との関連性を学ぶことにより、自然現象または人為的影響による環境条件の変化の学びが農業科学に活かせるというわけです。
UWA(西オーストラリア大学)の「Agricultural Technology(農業技術)」と「Agricultural Science and Technology Extended Major(農業科学と技術)」は、いずれも農業の効率化と持続可能性向上を目指しますが、Agricultural Science and Technology Extended Majorは科学的基盤と技術的応用の両面を取り入れたコースです。
農業科学コースで学ぶ科目例
Feeding the World
(1年次) |
世界の地域や文化により異なる様々な農業形態、持続可能な方法での食の安全について学ぶ科目。世界中で生産されている食品類について、農業、文化、調理方法や栄養などの側面から学ぶだけでなく、オーストラリアの主な農業システムについても学びます。 |
どんなことに役立つ科目? |
干ばつのひどい発展途上国にも生きる技術。農業を通した国際援助にも役立ちます |
Soil Science
(2年次) |
土壌科学の基礎を学ぶ科目。土壌中の水と栄養素の循環、酸性化と塩分を分析し、土壌と気候、地形、地質の影響に対する理解を深めます |
どんなことに役立つ科目? |
土壌と地形の分析に活かし、農業における環境の問題解決にも役立ちます |
Crops and Cropping Systems
(3年次) |
この科目では、より環境に配慮した生産方法と気候変動のニーズにあわせ、西オーストラリア州の農業システムが急速に変化していることに焦点を当てています。作物の栽培、保全作物、不耕起、雑草、病気の防除について深く学び、さらに作物と牧草地、家畜、雑草、植物の病気、環境との関連性について理解を深めます |
どんなことに役立つ科目? |
より持続可能な生産を目指す農業システムを学ぶことにより、農業コンサルティング業などにも役立つ科目です |
学士・修士課程まで4年間で取得できる
Bachelor of Agricultural Science and Master of Agricultural Science
このコースを修了すると、
「Bachelor of Agricultural Science」と「Master of Agricultural Science」の両方の学位を4年間で取得できます。
最初の3年間は、学士課程といくつかの修士課程の科目を学び、その後、最後の1年で農学修士課程を修了します。
修士課程では、様々な分野を組み合わせた内容を学び、指導を受けながら、プロジェクトを通してデータの分析や研究を行います。
このコースでは、農業システムについて深く理解し、持続可能な方法で生産を維持・向上させる方法も学べます。
急速に進化する農業科学技術の分野で将来活躍するために必要な知識とスキルが身につく学位を最短で得られるコースです。
コース名 |
Bachelor of Agricultural Science and Master of Agricultural Science |
期間 |
4年 |
授業料 |
A$49,900(日本円で約4,740,500円)(2025年度)
こちらの奨学金あり |
英語入学条件 |
IELTS6.5(各セクション6.0以上) |
学歴入学条件 |
ファンデーションコース卒業もしくは、IB30以上、大学1年修了資格
高校・ファンデーションコースで数学・化学要
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ベストプラクティス農業システム(BPFS)プロジェクト
UWAの持続可能で効率的な農業モデル構築プロジェクト、BPFSは、「環境にやさしく」「経済的にも成り立ち」「地域社会に役立つ」新しい農業のしくみをつくるために、さまざまな分野の研究者が協力して行っているプロジェクトです。
パースから車で約90分のところにあるピンゲリー地区の広さ1600ヘクタールの大きな農場、UWAファーム・リッジフィールドがこのプロジェクトの活動拠点。この農場は、西オーストラリア大学(UWA)の農業研究所が管理しており、「持続可能な農業」を学び、試し、広めるための重要な場所となっています。
農場では、UWAや外部の研究者、学生たちが共同で、例えば、土壌の炭素隔離や生態系サービスの提供に関する実験と研究など、実際の農場環境でのデータ収集と分析が進められています。
このプロジェクトでは、次のような目標を大切にしています。
気候変動に対応できる農業
自然や生態系を守る取り組み
農家や地域の人たちにとって利益のある農業の仕組み作り
農場は地域社会との密接な連携を重視しており、地域住民や農業従事者との交流を通じて、研究成果の普及や実用化を目指しています。定期的にオープンデーなどのイベントも開催され、一般の人々も参加することができます。
この農場は、農業と環境、地域社会の持続可能な発展を目指す実践的な研究拠点として、幅広く利用されています。
学びを支える農業施設
西オーストラリア大学の日々の研究を支える充実の農業科学施設をご紹介しましょう!
Plant Growth Facility(PGF)
PGFは、西オーストラリア大学にある環境条件を厳密に管理しながら実験を行うことができる、実践的な栽培施設です。光の質、温度、水分、栄養分、土壌の組成などを自在に調整でき、自然環境における変動要因を排除した精密な研究が行えます。
19の温室
8つのファイトトロン(植物生育制御室)
29の植物育成室
8つの植物育成キャビネット
そのほか、高圧蒸気滅菌装置(オートクレーブ)、土壌保管エリアと滅菌装置、補助機器の保管スペース、純水(脱イオン水)製造設備なども完備されています。
アグリテックを実践的に学べるRemotely Piloted Aerial Sensing Platform
リモート・パイロット航空センシング・プラットフォームは、UWAの学生や研究者をサポートするために最新のドローンやセンシング機器を提供しています。
UWAのリモート航空センシング・プラットフォームは、ドローンや環境センシングに関する機材・運用体制・専門知識・技術サポートを提供する施設です。UWA内の研究グループだけでなく、外部プロジェクトにもドローンやセンサーなどの機器を提供し、研究協力を支援しています。
この施設は、民間航空安全局(CASA)から認可を受けた、オーストラリアで数少ないドローンリモートセンシング研究機関の一つであり、最大25kgのマルチロータードローンの運用も可能です。
また、分散温度センシング(DTS)や光ファイバーによる接続機能など、高度なセンシング設備も備えており、これらの機能を活用できる大学研究グループはオーストラリアでも非常に限られています。

UWA、農業科学コース進学方法
最終学歴 |
進学方法 |
日本の普通高校卒業資格をお持ちの方 | UWAカレッジのファウンデーションコース経由 |
IB校を卒業された方 | 規定のIBスコアを取得し、直接入学 |
日本の大学で1年以上修了された方 | 日本の大学の科目を全てパスしていることを条件に直接入学(ただし科目条件をクリアしていること) |
※英語力が足りない場合は、西オーストラリア大学付属語学学校CELTの成績証明で入学可能です。
UWAの奨学金情報
西オーストラリア大学では、留学生対象の奨学金が充実。
授業料の一部が免除となる返済不要の奨学金をもらいながら、現在UWAで学んでいる日本人留学生も。この奨学金の受給資格の査定を無料で受けることもできます。
UWA出願に向けての準備

1. まずは英語試験を受けましょう
事前に英語力基準を満たしているのか、それとも付属語学学校で何週間の英語コース受講が必要なのかをはかるため、IELTS(アイエルツ)試験やTOEFL、PTEなどのを英語試験を受験しましょう。日本では下記3つの機関がIELTS試験を開催しています。
2. 出願に必要な書類を準備しましょう
出願には下記4点の書類が必要となります。
英語力証明が無くても、学歴証明で仮査定を行うことが可能です。その場合は英語力証明は後日ご提出下さい。
- 最終学歴の卒業証明書(英語版)
- 最終学歴の成績証明書(英語版)
- IELTS(Academic)または他の英語スコア結果
- パスポートカラーPDF
3. 出願手続きスタート
オンライン申込みフォームを送信してください。その後、正式に西オーストラリア大学への出願手続きをスタートします。
仮査定をご希望の方もこちらからお申し込み下さい。
留学相談&お問い合わせ先
オーストラリア留学センターは西オーストラリア大学を含む全豪29大学の公式出願窓口となっており、ご相談から出願手続き、更に現地サポートまで全て無料で提供しております。
●上記情報は2025年6月3日時点での情報となり、予告無く変更されることがあります。ご了承下さい。
●上記費用にはOSHC、教材費、学生ビザ申請費用、渡航費、現地生活費などは一切含まれておりません。
●ファームの写真はイメージ写真となっております。
●学校の授業料は毎年変更となります。また、どの科目を受講するかにより授業料は若干異なります。ご了承下さい。
●奨学金は査定の結果、受給の可否が決定します。