オーストラリアにて進学や移住をするのに必要不可欠となる”英語力証明”。最もメジャーなものとしてIELTS(アイエルツ)が知られていますが、最近知名度をあげてきているのが
PTE/Pearson Test of English(ピーティーイー、ピアソン等と呼ばれます)です。
PTEも英語力を測るテストでオーストラリアの多くの大学・大学院進学やビザ申請にも利用ができますが、いったい他のテストと何が違うのでしょう?
今回私が実際にPTEテストをオーストラリアで受験してきましたので、プロセスを通して気がついたこと、感想などをお伝えしたいと思います。
PTEが他のテストと違うところ
PTEは、Pearsonというイギリスの教育会社(英語教材や英語研修などを行う)が運営する英語検定です。
最新技術を駆使したテスト&採点方法
最大の特徴は
テストの受験・採点が全てComputer based(パソコン)で行われるということです!近年オンライン形式のテストは増えてきていますが、スピーキングやライティングなどを含む
全ての採点もAIを用いて行うというのは、非常に斬新ですよね。
完全にComputer basedで受検、そして採点もAIで行われるため、設けられているテストの日程も多く、テスト結果も物凄く早くわかります。
実践英語で必要な”瞬発力”が求められる
パソコンの画面に問題が表示されて回答をしたら次に進むのですが、一旦回答を終えると後戻りして修正することはできません。これも従来の筆記テストにはない特徴とも言えます。
PTEテストは実社会を意識して作られたもので、大学のチュートリアルで発言したりビジネスの場で会話したりする際には「準備する時間」は十分にはなく、その場ですぐに会話を返さなければなりません。大学やビジネスの場で提供される資料を読む場合も同様に、時間をかけてじっくり読む時間がある場合もありますが、その場で提示されて意見を言わなければならないことも少なくありません。このような状況が反映されているテストです。
英語への自信(Confidence)が試される!
AIで採点をする時に最も重要視されている1つが
“Fluency(流暢であるか)”です。文法やスペルの間違いはもちろん減点対象になるのですが、前提として「質問に対して迷わず答える」ことが点数アップにつながります。そのためPTE対策でよく言われるのは「英語を使うことに対して自信をつけること」なんだそうです。
テスト構成
IELTSやTOEFLなどと同様、Speaking, Writing, Listening and Readingの4つで構成されています。全部で3パートに分かれており、SpeakingとWritingはひとつのパートになっています。
Part 1: Speaking & Writing (54-67 minutes)
<Speaking>
- 自己紹介(Personal Introduction):25秒で準備して30秒以内で回答(テストには関係ない)
- 朗読(Read Aloud):30-40秒で準備して60ワード程度の文章を朗読
- リピート(Repeat Sentence):音声で流れた文章を聞き取り、そのまま繰り返す
- 図表の説明(Describe Image):図表などを見て25秒で準備して40秒以内に説明
- 要約(Re-tell lecture):約90秒の説明を聞いて10秒で準備し40秒で内容を自分の言葉で要約
- ショートレスポンス(Answer Short Question):短い質問を聞いてすぐに回答(準備時間なし)
<Writing>
- 要約(Summarize Written text):300ワード程度の文章を読んで75ワード以内の1文に要約(10分)
- エッセイ(Essay):与えられたテーマについて200~300ワードのエッセイを書く(20分)
Part2: Reading (29-30 minutes)
- 穴埋め(Reading&Writing: Fill in the blanks):各空欄に4つの選択肢があり、それぞれから選択
- 答えを選択(Multiple choice, multiple answer):文章を読んで正しい内容を選択、答えは1つとは限らない
- 段落の並び替え(Re-order paragraphs)
- 穴埋め(Fill in the blanks):与えられた単語群から適切なものを各空欄に当てはめていく)
- 答えを選択(Multiple choice, single answer):文章を読んで正しい内容を選択、答えは1つ
Part3: Listening (30-43 minutes)
- 要約(Summarize Spoken Text):60~90秒の文章を聞いて50~70ワードで要約(10分)
- 答えを選択(Multiple Choice, Multiple answers):40~90秒の文章を聞いて適切なものを選択(答えは1つとは限らない)
- 穴埋め(Fill in the blanks):読まれる文章が画面に表示されるが空欄あり。聞こえたとおりに空欄をタイピングで埋める
- 要約(Highlight Correct Summary):30-90秒の文章を聞いて、一番正確に要約された文章を選択(答えは1つ)
- 答えを選択(Multiple Choice, Single answer):30~60秒の文章を聞いて正しいものを選択(答えは1つ)
- 正しい単語探し(Select Missing word):20~70秒の文章の一部がブザー音で隠されており、その部分に最も適当な語群を選択(答えは1つ)
- 間違い探し(Highlight Incorrect words):読まれる15~50秒の文章が画面に表示されるが、一部音声と異なっているので、異なっている語群を選択
- 聞き取り(Write from Dictation):3~5秒の文章を聞いてそのとおりにタイピング
テストの比較
PTEテストと他のテストのスコア比較です。
受験する環境
テストは複数人同時に受けます。パーテーションで区切られた席には1人1台パソコンとマイク付きのヘッドセットが与えられ、スクリーン上に映し出される問題に回答していきます。
また教室に持ち込めるのは
パスポートとロッカーの鍵のみ。私物は全て指定のロッカーに入れます。
私はネックレスも外すように指示され、かなり厳しいと感じました。そのため筆記用具の持ち込みもできませんが、各デスクにペンとノートが用意されており、それを使ってメモを取ることができます。
テストは準備ができた人から各自スタートしますが、特にスピーキングの部分はそれぞれがパソコンに向かって話し始めるので、中には周りの声が気になって集中できないという声もあるようです。
テストを受験してみて
先日私が実際にPTEを受けてきましたので、その感想をお伝えしたいと思います。
私はゴールドコースト在住ですが、同市内で唯一の認定会場がグリフィス大学附属語学学校でしたので、そちらで受けてきました。
なお、なるべく生のリアクションをお届けするように、敢えてテスト対策などはせず手元に情報がほとんどない状態で受けてみました。(皆さんは真似しないでください)
Computer basedはメリット・デメリットあり
社会人になって久しく「文字を書く」ということをしていないため、私にとって全てタイピングで回答できるというのは非常にメリットでした!筆記よりも断然にテスト時間を有効に使うことができたと思います。
(強いて言えば、マックユーザーの私にとってWindowsはちょっと打ち慣れなかった、くらいです)
ただ一方で、スピーキングセクションで回答の録音が開始される前に喋ってしまっていることに途中で気がついたり、回答後すぐに次の問題へ進んで良いかわからず意味もなく止まっていたりと慣れない形式に戸惑った部分もありました。
エッセイはとにかく時間が足りない!!
200〜300wordsのエッセイを書くタスク。「Travelをするのは良いことですか?」というとても身近なトピックで書きやすい質問。文章の構成をサクッと決めて書き始め、ふと時間を見ると、最初のパラグラフを書き終えた時点で残り時間あと3分になっていた・・・(汗)
焦ってConclusionを書いたのですが、もう1つパラグラフを書く予定だったので、文字数が全然足りない・・・
正確には覚えていないのですが、とりあえず100words以上は書いて提出しました。うまく時間配分ができなかったこのタスクがとても心残りとなり、テストが終わったあとにライティングの採点方式を調べてみてびっくり。
120words以下の場合はスコアがゼロ・・・
あれ、私のエッセイ120も書いたっけ・・・え、スコアゼロ・・・?
と結構絶望的なライティングタスクとなりました。
Speakingで個人的に難しかったタスク
スピーキングのタスクで私が1番難しいと感じたのは、Describe Image(図表の説明)。
様々なグラフが表示されそれについて英語で説明するのですが、数字にめっぽう弱い私はグラフの理解に時間がかかってしまいつまづきました・・・。唯一回答時に空白の時間ができてしまったタスクです。
ただ出題されたグラフ自体はシンプルだったので、棒グラフ、円グラフなど種類ごとにいくつか事前にテンプレートを作っておけば、十分に対策ができる項目だと思います。
ペンのフタ、使わない時は閉めておこう
これは完全に私の凡ミスですが、テスト開始時にペンをすぐ使ってメモできるように事前にフタを開けておいたのですが、いざ使おうとした時に、ペンが乾いてしまい書くことができませんでした(涙)
試験官にリクエストをすれば新しいものを持ってきてくれますが、特にタスクを開始してからだと時間が勿体無いので、ペンのフタを使わない時は閉めておきましょう。
テスト結果
テスト結果は受験後5営業日以内となっています。テストが終わったのが午後1時30分頃で、その後オフィスに戻って仕事をしていたところ、午後3時30分ごろに携帯にメッセージが。
Your PTE Result is available! Please check the email we have sent you, which contains more information about your result.
なんと約2時間で、テストの結果が届きました!あまりにも早くて目を疑うくらいです。さすがAIの仕事は早い・・・
PTEのスコア表には各項目のスコアとオーバーオール(平均)の他に、「どのような点を勉強したらもっと英語が伸びるか」のアドバイスも書かれています。
向いている方
このユニークなテストの性質から、下記のような方はPTEテストでスコアが出やすいのではないかと思います。
●毎日パソコンを使ってタイピングをしている方(社会人の方、学生でもパソコンを使う機会が多い方)
●オンライン英会話などで、パソコンで英語を聴くことに慣れている方
●すでに海外の教育機関で学んでいて、さらに進学や卒業生ビザ・移住のためのビザでスコアが必要な方
実際にすでに現地にいる学生は、IELTSよりもPTEのスコアの方が傾向があるように思います。
というのも、オーストラリアの大学で一般的に行われているオンラインレクチャーやパソコンでのノートテイキング、パソコンのカメラに向かってプレゼンを録画して提出課題などは、PTEの問題とほぼ一致しているんですね。なので海外の大学で学ぶことが自然にPTE対策になっているのではないかと思います。
一方でIELTSのテスト対策をガッツリやっている方はあまりの違いに戸惑ってスコアが伸びにくいようなので、PTEを受検する場合は専用の対策が必要そうですね。
体験からおすすめする対策方法
上記のことを踏まえた上で、私がおすすめしたい対策方法です。
テストの形式、採点方法の知識は事前に身につけておこう
テスト対策の基本は、「自分がどんなテストを受けるか」を徹底的に知ることです。PTEの公式ウェブサイトにはテスト形式の解説やスピーキング/ライティングの採点方式が細かく書かれた資料も掲載されているので、まずはこちらから読んでみましょう。
テストの形式&サンプル問題
スコアガイド
そして、テストの形式に慣れるために練習問題(モックテスト)は受けましょう。こちらもPTE公式ウェブサイトからアクセスできます。
PTE公式モックテスト
モックテストは有料ですが本番と同じAIシステムで採点されるため、外部のものより公式から入手することをお薦めします。また同ページのFree Resourcesという箇所から無料の教材も入手可能です。
パソコンでのタイピング
とにかく英語でタイピングする量を増やしてください。英語を迅速&正確にタイプできることは大きなアドバンテージになります。
例えば単語を覚えるのも最初は紙に書いてもいいですが、それを必ずパソコンでタイピングするようにしましょう。
文法は基本をとにかく抑える
テストを受検してみて、文法の部分で複雑な質問はあまり見受けられませんでした。そのため、とにかく基本をしっかりやっておけば大丈夫だと思います。
日常生活から英語を!
PTEのリスニングは意図的に雑音が入ったり音声のクオリティがわざと下げられていたり、話し手がつまづいて言い直すことが多々見受けられました。一般的な教材の英語は綺麗すぎて参考にできないので、なるべく生の英語に触れる環境を作りましょう。
テッドトークやYoutube、ポットキャスト、ラジオなどがお薦めです。
SNSを活用
SNS上にも、PTE対策コンテンツがたくさんあります。Youtube Shortsやtiktokにもスコアの上げ方など解説している方もたくさんいます。
ただいくつか見てみると解説者によってコツが違ったり、ターゲットとしている国籍なんかでも変わってきます。なので色々なものを参考にして、最終的には自分で”このスタイルでいく”というのを決めると良いでしょう。
最後に
PTE・IELTS・TOEFL・ケンブリッジなど各テストによって英語の能力の測り方は異なるので、進学準備をするときにどのテストが自分に一番合っているか?を調べてみるのは悪いことではないと思います!
PTEで求められるスキルはオーストラリアの大学入学後にも役立つものも多いので、興味のある方はぜひ挑戦をされてみてくださいね!