オーストラリアの医療機関
オーストラリアの医療水準は非常に高く、先進国の中でもトップレベルと評価されています。また、衛生状況も良好ですし、主要都市には日本語が通じる医療機関もあるので、留学中に体調を崩したり、ケガをしたりした場合は、安心して受診してください。
オーストラリアの医療システム
オーストラリアの医療は、一般開業医(General Practitioner-GP)、専門医(Specialist)、病院(Hospital)、薬局(Chemist)、検査機関の5つの機関に分けられます。
一般開業医(General Practitioner-GP)
一般開業医はGeneral Practitionerの略称で、GP(ジーピー)と呼ばれています。
GPは健康管理をまかせるホームドクターの役割を果たしています。内科、外科、小児科、婦人科、皮膚科など、歯科を除くすべての分野をカバーしているので、具合が悪くなったときはまず、GPに電話をして予約を取りましょう。主要な都市には日本人、または日本語を話せるGPがいます。詳しくは後述の『日本語が通じる医療機関』を参照してください。
専門医(Specialist)・検査機関
GPが診察の結果、専門的な診断や検査が必要と判断されると、専門医や検査機関に連絡をとって紹介状を書いてくれます。レントゲン、血液検査などいくつかの検査を受ける際には、何ヶ所もの検査機関に行かなければならないこともあります。専門医の診断結果や検査結果はGPに報告されますので、患者はGPのところへ結果を聞きに行きます。
専門医は予約が1週間以上先になってしまうことも多いので、緊急の場合は、GPから優先的に予約を取ってもらいましょう。また、複数の専門医に診断してもらいたいときや、診断に不満がある場合には、GPに相談して他の専門医を紹介してもらうことをオススメします。
病院(Hospital)
オーストラリアの病院は総合病院と専門病院に分けられ、それぞれ公立と私立があります。日本では医療機関全般を「病院」と呼ぶことが多いですが、オーストラリアでは通常診察を受けるのは「GP」、「病院」は緊急の場合や、入院、手術が必要な場合のみ使われます。
通常、総合病院にはCasualty Departmentと呼ばれる救急病棟があり、24時間態勢で緊急に備えています。緊急の場合の除いて、直接病院に行くということはなく、まずはGPで診察を受けて紹介状を書いてもらいます。
薬局(Chemist)
オーストラリアでは抗生物質などの薬はGPに処方箋を書いてもらい、ケミスト(Chemist)と呼ばれる薬局で購入します。GPや病院に併設されている薬局もありますし、日本でいうところのドラッグストアにも薬剤師が常駐しているブースがあります。風邪薬、咳止め、鎮痛剤などの薬は直接薬局に行って購入することができ、薬剤師に病状を説明すれば、症状にあった薬を教えてもらえます。
また、薬局ではシャンプー、歯ブラシ、目薬、日焼け止め、リップクリーム、化粧品、サプリメントなど様々な生活用品が販売されています。
医療機関の利用方法
日本では、最初から専門医や大きな病院に行くこともありますが、オーストラリアでは緊急の場合を除いてまずはGP(一般開業医)へ行きます。
GP (一般開業医)
日常的な体調不良、軽い怪我の場合
病気やケガをした場合は、まず
GP (General Practitioner:一般開業医) を受診しましょう。専門的な治療が必要と判断された場合はGPから専門医 (Specialist) を紹介してもらえます。
- 受診は予約制です (電話またはオンラインで予約)。当日予約や予約なし (walk-in) で診察可能なクリニックもあります。
- 受診時には、OSHCカード/加入証明とパスポートを必ずご持参ください。
- GP (一般開業医) を受診する際は、症状を詳しく伝えられるようにメモを準備しておくと安心です。
- 専門医の受診には、GPからの紹介状が必要です。
病院
緊急性の高い症状、専門的な治療が必要な場合
- 緊急性の高い症状 (意識不明、呼吸困難、激しい痛み、大量出血など) の場合は、000 (緊急電話番号) に電話して救急車を呼ぶか、最寄りの病院の救急外来 (Emergency Department) へ直接向かってください。
- 緊急時以外で病院を受診する場合は、GP (一般開業医) の紹介状が必要となる場合があります。事前にご確認ください。
- オーストラリアには公立病院と私立病院があり、加入しているOSHCのプランによって利用できる病院が異なります。事前に保険内容をご確認ください。
薬局
薬の購入や薬剤師への相談
- 処方箋医薬品は、GP (一般開業医) や病院で発行された処方箋を薬局に持参して購入してください。
- 一般用医薬品 (OTC医薬品) は、処方箋なしで購入できます。風邪薬、鎮痛剤、解熱剤、胃腸薬、絆創膏など、様々な種類の薬が販売されています。薬剤師や薬局スタッフに相談して、症状に合った薬を選びましょう。
- 薬局の薬剤師は薬の専門家です。薬の服用方法、副作用、飲み合わせ、健康相談など、気軽に相談することができます。英語での相談に不安がある場合は、TIS (日本語通訳・翻訳サービス) の利用をご検討ください。
- 薬の用量は、オーストラリア人向けに設計されている場合があります。体格が小さい方や高齢の方、持病のある方は、医師や薬剤師に相談して適切な用量を確認するようにしてください。
- オーストラリアには、大型チェーン薬局 (Chemist Warehouse、Priceline Pharmacy など) や地域密着型薬局など、様々な薬局があります。
Health Direct
Health Direct (ヘルスダイレクト) は、オーストラリア政府が運営する
24時間年中無休の健康相談窓口です。緊急性が高い症状ではないものの、健康に関する相談をしたい場合や、医療機関を受診するべきか迷う場合に利用できます。Health Direct では、看護師や医師などの専門家が健康相談やアドバイスを提供しています。
日本語が通じる医療機関
主要都市には日本語医療センターや日本語が通じる医療機関があります。
英語での生活に慣れてきても、普段使わない医療用語を使って英語で症状を説明したり、医師の診断を聞いたりすることは難しいです。医療機関を利用する時は、具合が悪くて頭が回らなかったり、ケガをして冷静ではないことも多いと思います。
そんな時に安心なのが日本語が通じる医療機関。日本国総領事館のウェブサイトに一覧が記載されていますので、自分の滞在する都市の医療機関は、事前に把握しておきましょう。
なお、日本人医師がいる、日本人看護師がいる、日本語通訳者が常駐している、電話予約も日本語対応可能、OSHCや海外旅行損害保険の保険の利用方法など、医療機関によって状況が異なります。また、メールやSMSでの問い合わせや電話・オンラインでの診察(州外含む)に対応可能な医療機関もあります。詳しくは各医療機関のウェブサイトなどでご確認ください。
シドニー
在シドニー日本国総領事館『お困りの方へ』
メルボルン
在メルボルン日本国総領事館『領事・生活情報リンク』
ブリスベン・ゴールドコースト・サンシャインコースト・ケアンズ
在ブリスベン日本国総領事館『日本語対応可能な医療機関』
パース
在パース日本国総領事館『各種情報(緊急時の連絡先等)』
アデレード・ホバート
現在、日本国総領事館のウェブサイトに記載のある医療機関はありません。Sakura Family Clinic(ブリスベン)やParamount Clinic(メルボルン)など州を超えてのオンライン診療を提供しているGPの利用を検討してください。
オーストラリアの医療保険
オーストラリアの医療保険はメディケア(Medicare)という公的国民健康保険と、民間の健康保険とに分けられます。メディケアに加入できるのはオーストラリア国民か永住権保持者のみとなりますので、それ以外の人は自分で民間の保険に加入します。メディケアもすべての医療費に適応されるわけではなく、歯や眼などの治療費はカバーされません。その為、実際には永住権保持者でも、メディケアと民間保険のそれぞれに加入している人も多いようです。
留学生やワーキングホリデーの人はメディケアには加入できませんので、自分で民間の保険に入ることになります。
治療後は加入している保険会社に、治療費を請求するために診断書や領収書が必要になります。各書類については、完治後も無くさずに保管しておいてください。
学生ビザの場合
学生ビザを申請する留学生は、必ず、
OSHC (Overseas Student Health Cover) と呼ばれる、海外留学生保険に加入しなければなりません。OSHCは日本の「健康保険」に相当するものですから、「健康面の医療費」しかカバーされず、携行品の盗難や破損、誰かをケガさせた・物を壊してしまった場合の個人賠償責任、航空機遅延などは含まれていません。それらを含めた保険を希望する場合は、併せて海外旅行傷害保険へ加入します。
ワーキングホリデー・観光ビザ・ETASの場合
基本的には海外旅行傷害保険に加入することが一般的です。最近ではクレジットカード付帯の海外旅行傷害保険の利用を考える方も多くなってきましたが、利用条件や利用方法、提携医療機関などは必ず事前に確認しておきましょう。
オーストラリア入国に際しては、海外旅行傷害保険への加入は必須ではないので、加入せずに渡豪される方もいますが、海外生活中は何が起こるかわかりません。無保険状態で万が一何かが起こり、救急車で運ばれたり、入院したりしたらびっくりする金額の費用がかかります。安心して海外生活を送れるよう、海外旅行傷害保険はしっかり入っておくことをおすすめします。
医療機関を受診する際の注意点
英語での生活に慣れてきても、普段使わない医療用語を使って英語で症状を説明したり、医師の診断を聞いたりすることは難しいです。医療機関を利用する時は、具合が悪くて頭が回らなかったり、ケガをして冷静ではないことも多いと思います。日本語が通じる医療機関を受診できればいいですが、近くにない場合もあります。特に救急外来や救急車では日本語が通じないことも多いですが、症状や病歴を翻訳ツールを介してゆっくり説明している時間はありません。
そこで、日頃から、下記の内容をメモしておくといざというときに安心です。また、住所や電話番号もすぐ言えるようにしておきましょう。
- 過去の(重大な)病歴、手術歴
- 過去にかかったことのある病気、手術を受けたことがあるか、家族の中に特有な病気にかかった人がいないか、などを英文で用意しておくと安心です。
- アレルギー
- アレルギーの有無についても英文で用意しておくと安心です。
- よく起こりそうな症状の単語
- 症状を伝える際には、いつからその症状がはじまったか、熱はあるか、どんな薬を飲んだか、食事や睡眠はとっているか、などを具体的に知らせる必要があります。例えば体調不良の場合、嘔吐、下痢、意識の有無、発熱温度。痛みがあるなら、その部位やどのように痛いか、などを聞かれることが多いです。
また、診察を受ける場合は下記のようなことにも気をつけましょう。
- 診断を受ける
- ドクターからの指示や説明でわからないことがあれば、きちんと分かるまで聞きなおし、その場でどうしても分からない言葉や、単語は書きとめておきましょう。
- 薬の処方
- 処方される薬の内容について、くわしく教えてもらいましょう。薬を飲む時間、期間、副作用や注意する点などメモをとっておくとよいでしょう。特に日本人はオーストラリア人と比べ、骨格や基本体重が大きく変わります。薬を処方してもらう際は、ご自身の身長と体重を伝え、量に問題がないか、確認してください。
オーストラリアには安心して受診できる医療機関がありますが、行かずにすむのが一番です。まずは食生活や運動、十分な睡眠時間など日頃から体調管理には気をつけて充実した留学生生活を送ってください。
※備考※
・このページは2025年5月現在の情報に基づいています。