
クイーンズランド大学(The University of Queensland/UQ)の
Bachelor of Medical Science / Doctor of Medicineは、高校卒業後に出願し、6年間で医学の学位(Doctor of Medicine)まで進める新しいコースです。
この記事では、2027年に始まるこのコースの仕組み、留学生の入学条件、2028年入学に向けた準備スケジュール、6年間の費用を、留学エージェントの視点で整理します。
オーストラリアで医師を目指すなら、まず「どの入口から入るか」を決める必要があります。オーストラリアの医学部は、学士を取ってから大学院レベルのDoctor of Medicine(MD)に進む形が多く、その分、時間も費用もかかります。
UQが2027年から始めるこのコースは、その2段階を1つにまとめ、高校卒業から6年間でMDまで進めるようにしたものです。ただし、入学には高い学力や英語力、適性試験などが求められます。日本の高校生の場合は、高校の成績だけでは直接入学の対象にならない点に特に注意が必要です。
高校卒業から6年でMD修了へ ― 新しい「直接入学」の仕組み

このコースは、2年間の医学準備課程(Bachelor of Medical Science)と、4年間のDoctor of Medicine(MD)を縦につないだ二重学位です。出願は1回で、所定の進級・修了条件を満たすことで2つの学位が授与されます。
これまでUQでは、高校卒業後に学士課程を選び、条件を満たしてMDへ進む「暫定入学(provisional entry)」がありました。新しいコースは、それより最低1年早くMDを修了できる設計です。
| 年次 |
学ぶ内容 |
| 1年次 |
Bachelor of Medical Science。必修8科目で、医学に必要な基礎を固める |
| 2年次 |
Bachelor of Medical Science。必修5科目と選択3科目。理学・生物医学に加え、公衆衛生、人文学、コンピューター・情報技術も学ぶ |
| 3年次(MD1年目) |
Doctor of Medicine。医学の基本概念を学ぶ |
| 4〜6年次(MD2〜4年目) |
MD2年目から臨床現場での学びが始まり、MD3・4年目は臨床での責任を担う。最後にインターン(研修医)に向けた準備の学期がある |
MDは、Australian Medical Council(AMC/オーストラリア医学評議会)の認定を受けています。準備課程の2年間は全部で32単位を4学期で履修する構成で、MDのカリキュラムに直結するように組まれています。
入学条件 ― 日本の高校生にとっての最大のハードル

留学生向けに示されている入学条件は、次のとおりです。最低条件を満たしても合格が保証されるわけではなく、適性試験や面接などを通じて選考されます。
| 項目 |
条件 |
| 学力 |
オーストラリアの高校卒業時の順位(ATAR)で調整後95相当以上 |
| 必須科目 |
英語(General English)と数学(Mathematical Methods)。いずれもQueensland Year 12(または同等)のUnits 3 & 4でC以上。化学・生物は推奨(必須ではない) |
| 適性試験 |
UCAT ANZ(オーストラリア・ニュージーランドの医学部適性試験)で競争力のあるスコア。出願する年に受験したものが必要 |
| 面接 |
複数の面接官と短時間の面接を繰り返す形式(MMI:Multiple Mini-Interview)。UCAT ANZのスコアに基づいて面接対象者が選ばれる |
| 英語力 |
IELTS overall 7.0(全セクション7.0)、TOEFL iBT overall 100(listening 25・reading 25・writing 27・speaking 23)、PTE Academic overall 72(各72)、OETは各スキルB以上 |
日本の高校の成績(GPA)だけでは、このコースに直接入学できません。直接入学を目指す場合は、日本の高校の成績に加えて、SATまたはAPのスコアが必要です。SAT・APがない場合はファウンデーション(大学進学準備課程)を経由することになりますが、ファウンデーションとこのコースをパッケージで出願することはできません。日本の高校から目指す方は、SAT・APの準備を早めに始める必要があるため、まず当社へご相談ください。
日本の高校に通っている方は、高校の成績に加えてSATまたはAPのスコアをそろえることが前提になります。ほかに検討しやすいのは、国際バカロレア(IB)を取得する方や、オーストラリアの高校でYear 12を修了する方です。いずれも、このコースの入学条件を満たすかは個別に確認が必要です。
もうひとつの壁が英語です。IELTSは全セクション7.0が必要で、UQの学部課程の中でも高い水準です。UCAT ANZも英語で受ける試験なので、英語力は出願の土台そのものになります。
日本の高校からこのコースの条件に届かない場合でも、学士課程を経てMDへ進むルートは残っています。オーストラリアの医学部進学の全体像は
オーストラリアの医学部進学への道〜基礎情報編、留学生向けの適性試験については
ISATについての記事にまとめています。
2028年入学を目指す人の準備スケジュール

入学はセメスター1(2月)のみです。UQへの直接出願では、入学前年の9月30日が出願締切で、
2027年2月入学の直接出願は2026年9月30日で締め切られました。これから準備する方は、2028年2月入学が目標になります。
UCAT ANZは出願する年に受験したスコアが必要なため、2028年2月入学なら2027年の受験が必須です。2027年の試験日程はまだ発表されていないので、下の表では2026年の日程を目安として載せています。
| 時期 |
やること |
| 今すぐ〜2027年2月 |
今の学校の資格で出願できるかを当社で確認。日本の高校に通っている方は、SATまたはAPの受験計画を立てる。IELTS全セクション7.0に向けた英語対策と、UCAT ANZの対策を始める |
| 2027年3月上旬 |
UCAT ANZの予約受付が始まる(2026年は3月3日)。早めに予約しないと、希望の会場・日程が埋まる |
| 2027年5月中旬 |
UCAT ANZの予約締切(2026年は5月15日)。これを過ぎると追加料金がかかり、6月上旬で受付が完全に終わる |
| 2027年7月〜8月上旬 |
UCAT ANZを受験(2026年は7月1日〜8月5日)。オーストラリア国外の会場でも受験できる |
| 2027年9月上旬 |
UCAT ANZのスコアが大学に届く。出願書類(成績証明書・英語スコアなど)を当社と一緒に最終確認する |
| 2027年9月30日 |
UQへの直接出願の締切(現在の規定が続く場合)。当社(UQの正規エージェント)を通じて出願する |
| 2027年11月中旬〜下旬 |
MMI面接(2026年の実施時期)。案内はメールで届くため、迷惑メールフォルダも含めて確認する |
| 2027年12月ごろ |
面接のおよそ1か月後に、条件を満たした人にオファーが出る |
| オファー後〜2028年1月 |
入学承諾、学費の支払い、学生ビザ申請へ進む |
| 2028年2月 |
入学(セメスター1)。2028年の開始日はまだ発表されていない |
UCAT ANZの受験料は、オーストラリア・ニュージーランド国外の会場でA$405(日本円で約44,955円)(2026年)です。IBの最終試験を5月に受ける方は、最終試験とUCAT ANZの準備の時期が重なるため、英語とUCAT ANZの対策は早めに始めておくことをお勧めします。
オーストラリア国内でYear 12を修了する方、またはオーストラリア国内でIBを受ける方は、クイーンズランド州の大学出願センター(QTAC)を通じて出願します。QTAC経由の出願は別の日程が適用されるため、該当する方はQTACの最新の募集案内を確認してください。
6年間の費用 ― MDに入ってから学費が大きく上がる

このコースの学費は、前半2年と後半4年で大きく違います。前半の準備課程の年額で予算を組むと、MDに入った時点で計画が崩れる可能性があります。
| 期間 |
学費(留学生) |
| 1〜2年次 |
年間A$60,952(日本円で約6,765,672円)(2027年度) |
| 3〜6年次(MD) |
年間約A$110,000(日本円で約12,210,000円)の見込み |
| 6年間の目安 |
約A$561,900(日本円で約62,370,900円)。2027年度のBachelor of Medical Scienceの学費と、UQが公表しているDoctor of Medicineの見込み学費を基に当社が計算した概算。学費は毎年見直される |
学費とは別に、Student Services and Amenities Fee(SSAF/学生サービス・施設利用料)、心肺蘇生法(CPR)の講習費(年間約A$65(日本円で約7,215円))、犯罪歴の証明(A$45(日本円で約4,995円))、予防接種や抗体検査の費用なども必要です。
臨床実習はブリスベン都市圏の外で行われる場合もあり、その際の交通費や滞在費は学生の自己負担です。予算は、学費だけでなく生活費、学生ビザ関連費用、海外留学生健康保険(OSHC)、実習に伴う費用まで含めて立てることが大切です。
MDを卒業しても、オーストラリアでの医師登録や就職が保証されるわけではない

オーストラリアでは、MDを修了した後、通常はMedical Board of Australiaの暫定登録(Provisional Registration)を取得し、インターン研修(PGY1)に進みます。
所定のインターン研修を修了し、必要な条件を満たすことで、一般登録(General Registration)を申請できるようになります。
ただし、インターンの採用は大学への入学とは別の手続きです。特に留学生の場合は、インターンの採用条件に加え、卒業後もオーストラリアに滞在し、就労できるビザを取得できるかどうかが重要になります。MDを修了しても、インターン採用や就労資格が保証されるわけではありません。
卒業後のビザ制度は変更される可能性があるため、最新情報はDepartment of Home Affairsで確認し、個別のビザ相談についてはRegistered Migration AgentまたはAustralian legal practitionerへご相談ください。
また、
日本で医師として働けるかどうかは、日本の制度で決まる別の問題です。海外の医学部を卒業した方が日本の医師国家試験を受験するには、厚生労働省による受験資格の認定が必要になる場合があります。将来日本で働くことを考えている方は、出願前に日本側の制度も確認しておきましょう。
向いている人と、UQで医学を目指す3つのルート

このコースが向いているのは、高校の段階で医師になると決めていて、日本の高校の成績にSAT・APを組み合わせるか、IBなどで高い成績を取れる見込みがあり、英語で全セクション7.0を出せる方です。入学後に改めてMDへの出願選考を受ける必要がないため、計画を立てやすくなります(各課程の進級・修了条件は満たす必要があります)。
一方、医師以外の医療職や研究職も含めて迷っている方は、学士課程から進むほうが進路を変えやすくなります。医学部の学費は6年間で非常に大きな額になるため、予算に不安がある場合は、先に費用の全体像を確認してから出願を決めることをお勧めします。
| ルート |
向いている人 |
| Bachelor of Medical Science / Doctor of Medicine(直接入学・6年) |
高校卒業時点で医師になると決めていて、ATAR 95相当とUCAT ANZ・面接の条件を満たせる人 |
| 暫定入学(provisional entry) |
高校卒業後に学士課程を自分で選び、条件を満たしてMDへ進みたい人 |
| 大学卒業後の出願(graduate entry) |
すでに学士を持っている人、または学士課程の途中で医師を目指すと決めた人 |
暫定入学と大学卒業後の出願の条件は、ルートごとに細かく異なります。ご自身の学歴で出願できるかどうかは、成績証明書を拝見したうえでご案内します。
コース概要
| 項目 |
内容 |
| 大学名 |
The University of Queensland(クイーンズランド大学) |
| コース名 |
Bachelor of Medical Science / Doctor of Medicine |
| 期間 |
6年(準備課程2年+MD4年) |
| 入学時期 |
セメスター1(2月)のみ。2027年は2月22日開始 |
| 出願締切 |
入学前年の9月30日(UQへの直接出願の場合。QTAC経由は別途確認) |
| 学費(留学生) |
1〜2年次 年間A$60,952(日本円で約6,765,672円)(2027年度)。3〜6年次 年間約A$110,000(日本円で約12,210,000円)の見込み |
| キャンパス |
セントルシア(St Lucia)ほか、臨床ユニット・教育病院(ブリスベン周辺など) |
| コード |
プログラムコード 2578/CRICOSコード 121168C(Bachelor of Medical Science)・080921G(Doctor of Medicine)/MDはAQF Level 9 |
| 認定 |
Doctor of MedicineはAustralian Medical Council認定 |
情報の最終確認:2026年10月16日
出願前によくいただく質問
UQの医学部について、日本の高校生とその保護者の方からいただくご質問をまとめました。日本の高校からの出願、必要な試験、そして6年間の費用——実際に多いのはこの3つです。
| Q:日本の高校の成績で出願できますか? |
| A:日本の高校の成績(GPA)だけでは、直接入学の対象になりません。SATまたはAPのスコアと組み合わせる必要があります。SAT・APがない場合はファウンデーションを経由することになりますが、ファウンデーションとこのコースをパッケージで出願することはできません。どの試験をいつ受けるかも含めて、まずは当社へご相談ください。 |
| Q:UCAT ANZとISATのどちらを受ければよいですか? |
| A:このコースで求められているのはUCAT ANZで、出願する年に受験したスコアが必要です。例えば、2028年2月入学を目指して2027年に出願する場合は、2027年のUCAT ANZを受験します。ISATを求める大学・ルートもあるため、出願先ごとに必要な試験を確認してから受験計画を立ててください。 |
| Q:化学や生物を履修していなくても出願できますか? |
| A:必須科目は英語と数学で、化学と生物は推奨科目です。ただし、入学後の学習を考えると、化学や生物を履修しておくことで学習内容を理解しやすくなると考えられます。 |
| Q:6年間でいくらかかりますか? |
| A:学費だけで約A$561,900(日本円で約62,370,900円)が目安です。1〜2年次は年間A$60,952(日本円で約6,765,672円)(2027年度)ですが、MDに入る3年次からは年間約A$110,000(日本円で約12,210,000円)の見込みに上がります。これは公表されている学費と見込み額を基にした概算で、実際の学費は毎年変動する可能性があります。ここに生活費、SSAF、OSHC、学生ビザ関連費用、実習に伴う交通費や滞在費などが加わります。 |
| Q:7月入学はできますか? |
| A:このコースはセメスター1(2月)入学のみです。7月入学を希望する場合は、学士課程から進む別のルートを検討することになります。 |
| Q:卒業すれば、オーストラリアで医師として働けますか? |
| A:MDを修了した後は、通常、暫定登録(Provisional Registration)を取得してインターン研修(PGY1)に進みます。その後、所定の条件を満たすことで一般登録(General Registration)を申請できます。ただし、インターンの採用や卒業後の就労資格が保証されるわけではありません。特に留学生の場合は、インターンの採用条件とビザ制度の両方を確認する必要があります。最新のビザ情報はDepartment of Home Affairsでご確認ください。 |
カウンセラーから一言(ブリスベンオフィス 林 真生 / Masuyo Hayashi)
医学部のご相談をいただいたとき、私が最初に伺うのは「今、どの資格で高校を卒業する予定ですか」ということです。このコースの場合、ここで道が大きく分かれます。
日本の高校で学んでいる方には、高校の成績だけでは直接入学できず、SATまたはAPのスコアが必要になることを最初にお伝えします。ファウンデーション経由ではこのコースにパッケージで進めないため、どの試験をいつ受けるかを早めに決めることが大切です。今の学歴でどのような進学方法が考えられるのか、一緒に整理していきます。
医学部進学は準備に時間がかかるからこそ、最初の段階で出願資格を確認しておくことが大切だと考えています。
次に伺うのは、英語と適性試験の準備状況、そして6年間の予算です。MDに入ってからの学費は、準備課程の倍近くになります。ご家族で数字を一度並べてみると、どのルートが現実的かが見えてきます。
ただ、条件が厳しいからといって、医師への道が閉じるわけではありません。学士を経てMDに進む道もありますし、他大学の医学部も含めて比べることもできます。「医師になりたい」という気持ちがはっきりしているなら、その気持ちに合う入口を一緒に探しましょう!
下記に要点をまとめたPDFを作成していますので、目を通してみてください。
クイーンズランド大学(UQ)医学部への進学相談はオーストラリア留学センターへ
今の学校の資格で出願できるか、いつから何を準備すればよいか、6年間の予算はいくらになるか。成績証明書を拝見し、必要に応じて大学にも確認しながら、具体的な進学方法をご案内します。
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