
クイーンズランド大学のMaster of Conservation Scienceは、生物多様性の保全を専門的に学ぶ大学院コースです。研究施設だけでなく、フィールドワークを通して実践的に学べる点も大きな特徴で、自然環境・野生動物・海洋環境などの保全分野で働きたい方に適しています。
UQ Master of Conservation Scienceとは?

クイーンズランド大学(UQ)の
Master of Conservation Scienceは、生物多様性の保全から国立公園の管理、環境政策、保全に関する意思決定まで、保全科学(コンサベーション・サイエンス)を幅広く学ぶ大学院コースです。
大きな特徴は、キャンパスで理論やデータ分析を学ぶだけでなく、実際の自然環境をフィールドとして実践的に学べることです。
UQには、グレートバリアリーフに浮かぶ
Heron Island Research Station、Minjerribah(ノース・ストラドブローク島)の
Moreton Bay Research Station、内陸部の
Hidden Vale Wildlife Research Stationなどの研究施設があり、屋外での個体数調査や植生の計測など、実際の保全活動につながるフィールドワークを経験できます。上の写真のようなサンゴ礁の島も、実習フィールドの一例です。
さらに、UQには
Centre for Biodiversity and Conservation Science(生物多様性・保全科学センター/CBCS)や
Centre for Marine Science(海洋科学センター/CMS)といった研究拠点があります。
CBCSでは各国の政府・研究機関・NGOなどと連携しながら生物多様性の保全課題について研究しており、CMSには海洋科学分野の研究者が集まっています。こうした研究環境の中で、第一線の研究者から学べる点もUQならではの特徴です。
また、このコースは全32ユニットで構成され、通常は1.5年間で修了できます。必修科目22ユニットを基礎に、研究プロジェクトを選択するか、選択科目を組み合わせるかを自分の進路に応じて決められるため、研究者を目指す場合にも、政府機関・NGO・環境コンサルティングなどの実務分野を目指す場合にも対応しやすいカリキュラムになっています。
自然や野生動物が好きというだけでなく、「科学的な知識とデータを使って、実際に自然環境を守る仕事をしたい」という方には、特に検討する価値のあるコースです。
卒業後、自然を守る仕事はこんなに広がっている

卒業後は、野生動物や自然環境の保全に関わるさまざまな仕事の選択肢が広がります。UQで得られる専門知識は、政府機関からNPO、コンサルティング業界まで幅広く求められています。
| 職種 |
主な業界・就職先 |
| 絶滅危惧種エコロジスト | 政府機関・研究機関 |
| 害虫管理リサーチャー | 農業・環境コンサルティング |
| 自然資源マネージャー | 国立公園・自治体 |
| 政策立案担当(ポリシーデベロッパー) | 政府機関・NGO |
| 環境サステナビリティマネージャー | 民間企業・コンサルティング |
| 国立公園・野生生物オフィサー | 国立公園局 |
| アグリビジネスコンサルタント | 農業関連企業 |
| 動物学者(Zoologist) | 研究機関・動物園 |
| ブッシュ再生コンサルタント | 環境コンサルティング |
| エコツーリズムマネージャー | 観光業 |
seek.com.auのデータでは、エコロジスト(生態学者)の年収目安は
AUD 8.5万〜10.5万ドル、
動物学者の年収目安は
AUD 10万〜11万ドルとされています(2026年8月確認。給与相場は変動するため最新情報の確認をおすすめします)。
オーストラリア国内はもちろん、保全科学の知見は日本や世界各国でも高いニーズがあります。政府の環境部局、国際NGO、コンサルティングファームなど進路の幅が広いのもこのコースの強みで、「研究職に進むか、政策や実務の現場に出るか」を在学中に見極めやすいカリキュラム構成になっています。
ただし、上記の職種はあくまで「このDegreeを取得した先に考えられる進路の一例」であり、卒業した時点で自動的に就ける仕事ではありません。政府機関やNGOでのボランティア・インターン経験、GISやRなどのデータ分析スキル、学会・業界団体とのネットワーキングなど、Degree(学位)に経験とスキルを積み重ねていくことが採用の判断材料になるのが実情です。CBCSやCMSの研究者に在学中からコンタクトを取ってみる、Research Assistantの募集を確認する、フィールドワークやボランティアに積極的に参加するなど、卒業を待たずに動き始めることをおすすめします。
「自然が好き」を仕事にしたいあなたへ

将来、絶滅危惧種の保護や国立公園の管理、環境政策づくりに関わる仕事がしたい人におすすめのコースです。
生態学・環境学・海洋科学・動物学などを大学で学んだ人はもちろん、数学や統計学のバックグラウンドを保全の現場で活かしたいという人にも向いています。教室での座学だけでなく、グレートバリアリーフや離島でのフィールドワークを通して本物の自然の中で学びたい人、日本ではなかなか体験できない研究環境に飛び込んでみたい人にぴったりの環境が整っています。
「自然が好き」という気持ちを、科学的な分析力や政策提言力に変えていきたい人にとって、UQのキャンパスライフは刺激的な1.5年になるはずです。写真のように、同じ志を持つ仲間と学べる環境も、モチベーションを保つ大きな支えになります。
ただし、「とにかく短期間で修了したい」「海洋生物や野生動物など特定分野だけを深く学びたい」という場合は、次のセクションで紹介するMaster of Conservation Biologyなど、別の選択肢のほうが合っていることもあります。
1.5年に凝縮された、”現場で使える”カリキュラム

このコースは全32ユニットで構成され、
必修科目22ユニット、
研究プロジェクト0〜8ユニット、
選択科目2〜10ユニットという内訳になっています。通常2年分の学びを1.5年という集中スケジュールで修了できる設計です(UQ公式コース要件ページ、2027年度情報より)。UQ公式サイトでも「通常の学期に加え、短期集中型のTeaching Period(凝縮された授業期間)を組み合わせて1.5年に凝縮している」と説明されており、2年制のMasterと比べて学ぶ内容量そのものが少ないわけではありません。学期の合間に集中授業が入ることもあるため、長期休暇にまとまった旅行やアルバイトを予定している方は、あらかじめ余裕を持ったスケジュールを組んでおくと安心です。
写真のような講義室での授業では、実際の環境問題のケーススタディをスクリーンで示しながら、データに基づいた議論が展開されます。理論を学ぶだけでなく、”現場で使える分析力”を養うことを重視した授業スタイルが特徴です。
研究職を目指す人は、
CONS7004(Major Research Project & Seminars、8ユニット)を選択して本格的な研究プロジェクトに取り組むことも可能です。ただしCONS7004は自動的に組み込まれるわけではなく、必修科目にあたる12科目(24ユニット)を修了した段階で改めて履修を申請する仕組みです。申請が認められると4ヶ月間の研究プロジェクトに取り組み、それ以外の場合(または研究より実務系科目を増やしたい場合)は代わりに4科目を追加履修して修了します。研究者としての道と、実務家としての道、どちらも視野に入れられる柔軟なカリキュラムですが、「研究プロジェクトをやりたい」という希望だけで確約されるものではない点は事前に押さえておきましょう。
必修科目の例
必修科目では、保全科学の土台となる知識を体系的に学びます。Conservation in Context(保全科学概論)から始まり、Conservation & Wildlife Biology(保全・野生生物学)、Conservation Policy(保全政策)、Environmental Philosophy(環境哲学)などで理論を固めたうえで、Space Invaders: Invasive Species, Field skills & GIS Mapping(外来種問題とフィールド調査・GIS技術)、Marine Conservation(海洋保全)、Rainforest Conservation(熱帯雨林保全)など、フィールドワークと直結する実践科目にも取り組みます。
| 科目コード |
科目名 |
| CONS7029 | Conservation in Context |
| CONS6009 | Conservation & Wildlife Biology |
| CONS7008 | Sampling Design & Analysis in Conservation Science |
| ENVM7505 | Conservation Policy |
| TIMS7328 | Strategies for Sustainable Systems Transition |
| PHIL7221 | Environmental Philosophy |
| CONS7022 | Space Invaders: Invasive Species, Field Skills & GIS Mapping |
| CONS7024 | Marine Conservation |
| CONS7025 | Rainforest Conservation |
| CONS7030 | Conservation & Agriculture |
| ENVM7512 | Environmental Problem Solving |
| GEOM7005 | Geographical Information Systems |
選択科目の例
必修科目に加えて、2〜10ユニット分を選択科目から履修します。環境政策の国際的な枠組みから、GIS・リモートセンシングなどの技術系科目、環境影響評価まで幅が広く、自分の興味やキャリアの方向性に合わせて組み合わせられるのが魅力です。
| 科目コード |
科目名 |
| ENVM6017 | Landscape Ecology |
| ENVM7001 | Foundations in Environmental Studies |
| ENVM7003 | Applied Research Methods |
| ENVM7123 | Regulatory Frameworks for Environmental Management & Planning |
| ENVM7124 | International Regulatory Frameworks for Climate Change & Environmental Management |
| ENVM7200 | Coastal Processes & Management |
| ENVM7201 | Catchment Processes & Management |
| ENVM7206 | Environmental Impact Assessment |
| ENVM7524 | Carbon & Energy Management |
| ENVM7530 | People, Fire & Environment |
| ENVM7536 | Sustainable Business Practice |
| GEOM7000 | Introduction to Earth Observation Sciences (EOS) |
| GEOM7002 | Spatial Analysis & Modelling |
| GEOM7004 | Geospatial Processing & Web Mapping |
| GEOM7200 | Fundamentals of Geographic Information & Technologies |
| PLAN7615 | The Global Metropolis |
| QBIO7002 | Multivariate Data Analysis & Machine Learning in Biology |
このほか、准学部長(アカデミック)が個別に承認した科目を選択できる場合もあります。最新の科目一覧は
UQ公式コース要件ページでご確認いただけます。
自分に合った進学ルートを見つけよう

出願には、植物学・保全学・生態学・環境学・進化学・数学/統計学・海洋科学・動物学のいずれかの分野での学士号(またはそれに相当する資格)が必要で、直近の学位でGPA5.0(7点満点中)以上が目安とされています。
「対象学部にちょうど当てはまる名前の学部を出ていないから対象外」と自己判断しないようにしましょう。実際の可否は成績証明書に記載された履修科目の内容まで見て判断されるため、学部名が近い場合はもちろん、一見遠く見える学部でも、履修した科目次第で対象になることがあります。
該当する学士号を持っていない場合でも、
Graduate Certificate in Conservation Biologyを修了することで進学ルートを確保できます。この場合のみ、1月開始のSummer Semesterからの入学も可能です。
また、同じUQの関連プログラムとして
Master of Conservation Biologyもあります。必修科目の多くはMaster of Conservation Scienceと共通していますが、24ユニット・12ヶ月というより短い期間で修了できる代わりに、Master of Conservation Scienceのような正式な研究プロジェクト(CONS7004)の選択枠はUQ公式サイト上では案内されていません。
「できるだけ早く現場に出たい」方にはMaster of Conservation Biology、「研究職やPhDも視野に入れて、コースワークと研究プロジェクトの両方から選べる余地を残したい」方にはMaster of Conservation Scienceが向いていると考えられます。
UQ以外の選択肢として、
ジェームズクック大学(JCU)のMaster of Scienceにも、Tropical Biology and Conservationを専攻できる保全系プログラムがあります。期間は1年+1トライメスター(フルタイム)とMCSよりやや短く、TownsvilleまたはCairnsキャンパスを拠点に、Orpheus Island Research StationやDaintree Rainforest Observatoryといった独自のフィールド施設で学べるのが特徴です。JCUは2024年Global Ranking of Academic Subjectsで生態学(Ecology)分野世界5位にランクインしており、熱帯・海洋生態系でのフィールドワークに強みを持つ大学として知られています。入学条件はAQF Level 7の科学系学士号・GPA5.0以上とUQに近い水準ですが、学費は2026年度で年間AUD $36,491〜(24ユニット基準)とUQよりやや抑えられています。
研究プロジェクトの選択肢やCBCS・CMSといった学際的な研究センターとのつながりを重視するならUQ、熱帯フィールドワーク専用の独自施設や学費を重視するならJCU、というように、どちらが上ということではなく、何を優先するかで選ぶべき大学は変わります。いずれも公式サイトの情報をもとにした概要のため、最新の学費・入学条件は出願前に必ず確認してください。
| 希望 |
向いているプログラム |
| 研究職やPhDも視野に入れ、コースワークと研究の両方から選びたい | UQ Master of Conservation Science(1.5年・32ユニット) |
| できるだけ短期間で、コースワーク中心に学びたい | UQ Master of Conservation Biology(12ヶ月・24ユニット) |
| 熱帯・海洋のフィールドワークを軸に、学費も抑えたい | JCU Master of Science/Tropical Biology and Conservation専攻(1年+1トライメスター・学費目安AUD $36,491〜/年) |
| ルート |
必要な成績 |
英語力(目安) |
| 学士号から直接出願 | GPA 5.0(7点満点) | IELTS総合6.5(各6.0以上) |
| Graduate Certificate経由 | Graduate Certificate in Conservation Biology修了 | IELTS総合6.5(各6.0以上) |
IELTS以外にも、TOEFL iBT(総合87)、PTE Academic(総合64、各60以上)、Cambridge English(C1 Advanced等、総合176)でも出願可能です。ただしOETは対象外なので注意しましょう。英語力に不安がある場合は、UQ提携の英語コースを経由するルートもあります。「今のスコアで足りるか分からない」という段階でも大丈夫なので、まずは個別にご相談ください。
迷ったらここだけチェック!コース早見表

学費や入学時期など、まず押さえておきたい基本情報をまとめました。じっくり読む時間がない人は、このテーブルだけでも十分に全体像がつかめます。
| 項目 |
内容 |
| 大学名 | The University of Queensland(クイーンズランド大学) |
| コース名 | Master of Conservation Science(プログラムコード:5597) |
| 期間 | 1.5年(全32ユニット、集中プログラム) |
| 学費 | 年間目安 AUD $91,428(24ユニット・フルタイム換算、2027年度)。総額は履修ユニット数により変動するため要確認 |
| 入学時期 | Semester 2(2027年6月24日)、Summer Semester(2028年1月3日、Graduate Certificate in Conservation Biology修了者のみ) |
| キャンパス | St Lucia(ブリスベン、クイーンズランド州) |
| CRICOSコード | 082609K |
| AQFレベル | レベル9 |
また、UQ公式サイトでは、このプログラムには必修のフィールドトリップ科目が含まれており、上記の学費とは別に追加費用が発生する場合があると案内されています。具体的な金額は履修する科目によって異なるため、出願前に個別にご確認ください。
クイーンズランド大学(UQ)の他の学部・大学院コースの学費・CRICOS・入学日は、
クイーンズランド大学(UQ)学費・入学日一覧【2027年版】でまとめて確認できます。
先輩たちも気になった、よくあるギモンにお答えします

これまで多くの方からいただいたご質問の中から、特に多いものをまとめました。ここに載っていない疑問も、遠慮なくお問い合わせください。
| Q. | 英語力に自信がなくても出願できますか。 |
| A. | IELTS総合6.5(各6.0以上)が基準です。届かない場合はUQ提携の英語コース経由のルートもあるので、個別にご相談ください。 |
| Q. | 保全・生態学系以外の学士号でも出願できますか。 |
| A. | 植物学・保全学・生態学・環境学・進化学・数学/統計学・海洋科学・動物学のいずれかが対象です。それ以外の分野は個別審査となるため、大学への事前確認をおすすめします。 |
| Q. | 関連分野の学士号を持っていない場合はどうすればよいですか。 |
| A. | Graduate Certificate in Conservation Biology(5550)を修了することで、このコースへの進学ルートを確保できます。 |
| Q. | 現地でのフィールドワークはありますか。 |
| A. | Heron Island Research Station、Moreton Bay Research Station、Hidden Vale Wildlife Research Stationなど、実際の自然環境の中で学ぶ機会が用意されています。 |
| Q. | 研究とコースワーク、どちらを選べばよいですか。 |
| A. | 必修科目22ユニットを終えたあと、CONS7004(Major Research Project & Seminars、8ユニット)を選ぶか、選択科目を積み増すかを選べます。将来のキャリアに合わせて個別にご相談ください。 |
| Q. | UQの環境科学分野の評価はどれくらいですか。 |
| A. | QS世界大学ランキング2026で、環境科学分野はオーストラリア国内1位、世界18位にランクインしています。 |
カウンセラー 林 真生から一言
保全科学は、「自然や生き物が好き」という気持ちを、データと科学の力で社会に活かせる分野だと考えています。UQのMaster of Conservation Scienceは、Heron IslandやMoreton Bayでの実地調査など、教室の外で学べる機会が多いのが大きな魅力です。研究者を目指す方はもちろん、政府機関・NGO・環境コンサルティングなどで実務家として働きたい方にとっても、確かな土台になります。
一方で、より短期間で修了したい方や、海洋・野生生物など特定の分野に絞って学びたい方は、Master of Conservation Biologyや他の環境系プログラムのほうが合うこともあります。関連分野の学修歴による期間短縮(1.5年)の可否や、日本の成績からのGPAの見方も含めて、一人ひとりに合った進め方をご提案しますので、迷ったらお気軽にご相談ください。
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