
AIを企業の現場で実際に動かす「FDE(フォワード・デプロイド・エンジニア)」の求人が急増しています。FDEの仕事内容と求められる学歴・スキル、高校生・IT未経験の社会人・エンジニア経験者それぞれの進み方、そして目指せるオーストラリアの学部3コースと大学院5コースを紹介します。
AIは「作る」だけでは動きません。現場に入り、動くまで作り込む人が求められています。
生成AIを導入した企業の多くが、ある壁にぶつかっています。AIの性能は十分なのに、自社の業務やデータにうまく組み込めず、実際の成果につながらないという壁です。
その壁を越えるために生まれた職種がFDEです。顧客企業の中に入り込み、課題を聞き出し、その場でシステムを作って本番で動かすところまで責任を持ちます。この記事では、留学カウンセラーの立場から、この新しい職種を目指すための学び方を具体的に解説します。
FDE(フォワード・デプロイド・エンジニア)とは? 顧客の現場でAIを「動かす」エンジニア

FDE(Forward Deployed Engineer)は、顧客企業の環境に入り込み、本番で動くシステムを作り、統合し、運用できる状態まで仕上げるソフトウェアエンジニアです。
「Forward Deployed」は「前線に配置された」という意味で、2000年代半ばにデータ分析企業の
Palantirが使い始めた呼び名です。
普通のソフトウェアエンジニアとの違いは、誰のために作るかにあります。一般的なエンジニアが全顧客向けの製品を作るのに対し、FDEは1社の顧客のために、その会社の環境の中で作ります。評価されるのは、システムが実際に稼働し、業務の成果が出たかどうかです。
| 職種 |
主な役割 |
| FDE | 1社の顧客の環境に入り、課題を聞き出し、システムを作って本番で稼働させる。成果が出るまで責任を持つ |
| ソフトウェア開発者 | すべての顧客が使う自社製品を作る。開発の速さや安定性、規模への対応で評価される |
| 導入設計の担当者 | ソリューションアーキテクト(Solutions Architect)と呼ばれる職種。契約前に導入計画を設計し、コーディングは比較的少ない |
ただし、2026年は職種名の境界があいまいになっています。採用競争が激しいため、ソリューションアーキテクトの求人をFDEという名前で出し直す企業もあります。そのため、求人を見るときは職種名ではなく、仕事内容の説明を読むことが大切です。
なぜ今、FDEの求人が急増しているのか

求人数の伸びは、数字で見るとよく分かります。求人サイトのIndeedが米Business Insiderに提供したデータでは、FDEの求人は2025年4月の643件から、2026年4月には5,330件に増えました。1年で約729%の増加です。
インドでも同じ動きが起きています。Indeedインド法人は、2026年6月のFDE求人が前年同月の約19倍になったと発表しました。その後は落ち着いたものの、7月は約16倍、8月も6倍以上の水準が続いています。
オーストラリアも例外ではありません。デロイトはシドニー・ブリスベン・メルボルン・キャンベラでFDEを募集しており、OpenAIもシドニー勤務のFDEを募集しています。
日本では、AnthropicがApplied AIチームの創設メンバーとして、東京でFDEを募集しています(2026年10月時点)。オーストラリアで学んだあと日本で働く道も、現実の選択肢になりつつあります。
FDEに求められる学歴とスキル

まず学歴です。結論から言うと、コンピュータサイエンスの学位は「あれば有利」で、必須にしていない会社が多いです。ただし、学位を必須にしている求人もあるため、一律には言えません。
| 企業 |
FDE求人での学歴の扱い |
| Palantir | コンピュータサイエンス・数学・ソフトウェア工学・物理・データサイエンスなどの素養が望ましい(必須ではない)。卒業後1年以上の経験 |
| Anthropic | 学士号、または教育・研修・経験を組み合わせた同等の力 |
| OpenAI | 学位の要件を書いていない |
学位が必須でない代わりに見られるのは、「何を作り、本番で動かしたか」という実績です。そのため大学・大学院選びでは、顧客や企業と一緒に作る経験を在学中に積めるかどうかが、一番の判断基準になります。
次にスキルです。顧客の声を聞くツールを提供する民間企業のPerspective AIが、約1,000件のFDE求人を分析した結果を、3つに分けて紹介します。
| スキルの分類 |
求人に出てくる割合と中身 |
| エンジニアリングの基礎 | 95%以上。Python・TypeScriptなどのプログラミング、データベース操作言語のSQL、AWSなどのクラウド、Dockerなどのコンテナ技術 |
| AI関連 | 80%以上。大規模言語モデル(LLM)を使ったアプリ開発、社内文書を検索して回答させる仕組み(RAG)、AIエージェント |
| 顧客の課題を聞き出す力 | 70%以上で増加中。関係者への聞き取り、あいまいな業務課題の整理、作るものへの落とし込み |
この分析を出しているのはヒアリング用ツールの会社なので、「聞き出す力」の比重がやや高めに出ている可能性はあります。
ただ、オーストラリアのシニア求人を見ても、TypeScript・Node.js・React、外部システムとの連携、SQL、クラウド、ログや監視といった技術が並んでいます。エンジニアリングが土台であることは変わりません。
「大学・大学院を出ればすぐFDE」ではありません
FDEの求人の多くは実務経験を前提にしています。AnthropicのFDE(東京)は顧客対応のある技術職で4年以上、OpenAIのFDE(シドニー)はシニア(5年以上)の扱いです。
一方で、オーストラリアのLyraのように1〜2年程度の経験でジュニアFDEを募集する会社もあります。卒業後はエンジニアとして経験を積み、FDEへ進む順番で計画を立ててください。
エンジニアとビジネス、何対何で学ぶべきか

FDEの仕事時間のうち、顧客対応がどのくらいを占めるかは、会社によって大きく違います。Palantirでは顧客先にいる時間が約25%と報じられている一方、顧客対応が60〜80%を占めるという見方もあります。決まった数字はありません。
この差を説明しているのが、Bloomberryによる約1,000件の求人分析です。FDEという名前の求人には、中身の違う2つのタイプが混ざっています。
| タイプ |
求人に占める割合と仕事の中身 |
| 作る人型 | 約60%。仕事の70〜90%がコーディング |
| 営業・ソリューション型 | 約30%。FDEという名前だが実際は営業寄りの技術職で、コーディングは30〜40% |
ここで注意したいのは、「顧客対応の時間が長い=ビジネスのスキルを多く学ぶべき」ではないという点です。顧客と長く話せるのは、そこで出た課題をすぐ作って解決できるからです。デロイトのオーストラリアの求人も、まずエンジニアであることを求めています。
個人的には、本命の「作る人型」を目指すなら、
エンジニアリング75%、ビジネス25%の配分で学ぶのがよいと考えています。
営業や企画の経験がある社会人が「営業・ソリューション型」を目指す場合は、50%ずつでも構いません。この数字は調査データではなく、上の事実をもとにした個人的な判断です。
今の立場で変わる、FDEへの3つのルート

FDEへの道は、今どこにいるかで変わります。高校生、IT以外の学部を出た社会人、すでにエンジニアとして働いている人では、選ぶべき学校も期間も違います。
| 今の立場 |
おすすめのルート |
| 高校生 | 学部で顧客と一緒に作る科目を取り、卒業後は就職か大学院かを選ぶ |
| 大卒・IT未経験 | IT以外の学部出身者を受け入れる2年制の修士で、プログラミングから学び直す |
| エンジニア経験者 | 1〜1.5年の修士で、AIの専門科目と顧客との開発経験を足す |
大卒の方とエンジニア経験者の方は、このあとの「FDEを目指せる大学院5選」で、自分に合うコースを探してください。ここでは、高校生の方に向けて、学部で目指せるコースを先に紹介します。
高校生の方へ:学部でもFDEに近い経験は積めます

FDEの求人は、学位そのものよりも実務経験と「作って動かした実績」を見ます。この実績づくりは、大学院に行かなくても、学部の段階から始められます。
学部選びで見るべき点は、大学院と同じです。「顧客や企業と一緒に作る科目が、カリキュラムに組み込まれているか」です。当社の提携大学の中から、この基準で3つの学部を選びました。こちらも順位はありません。
| 大学・学部 |
こんな人に向いている |
| オーストラリア国立大学(ANU)Bachelor of Computing | 受け入れ組織とのチーム開発を、必修として確実に経験したい人 |
| クイーンズランド工科大学(QUT)Bachelor of Information Technology | ブリスベンで、AIかソフトウェア開発を専攻にしたい人 |
| クイーンズランド大学(UQ)Bachelor of Computer Science | ブリスベンで、数学やAIの土台をしっかり固めたい人 |
オーストラリア国立大学(ANU)Bachelor of Computing

ANUの
Bachelor of Computingは3年制の学部です。大学院のMaster of Computingで紹介するTechLauncherは、学部にもある仕組みです。
| 項目 |
内容 |
| 期間 | 3年(144単位) |
| 数学の前提科目 | 高校数学の前提科目あり |
| 学費の目安 | 年間A$57,640(日本円で約6,455,680円)(2027年度) |
| キャンパス | キャンベラ |
7つの専攻のうち、Software Development専攻を選ぶと、TechLauncherの科目(COMP3500 Software Engineering Project)が
必修になります。
この科目は2学期連続で履修します。多くの学生が、企業・政府・大学のクライアントの案件にチームで取り組みます。顧客の課題を聞き、作り、成果を見せる流れを、学部のうちに経験できます。
AIを軸にしたい方には、Intelligent Systems専攻もあります。ただFDEを目指すなら、私はSoftware Development専攻を選び、AIは選択科目で取る形をおすすめします。
クイーンズランド工科大学(QUT)Bachelor of Information Technology

QUTの
Bachelor of Information Technologyは3年制の学部です。1年目は全員が共通の科目を学び、そのあと7つの専攻から1つを選びます。
| 項目 |
内容 |
| 期間 | 3年(2月・7月入学) |
| 数学 | 高校数学の知識が前提。なくても出願はできるが、補習を受けることを強く推奨 |
| 英語の条件 | IELTS 6.5(各セクション6.0以上) |
| 学費の目安 | 年間A$46,700(日本円で約5,230,400円)(2027年度) |
| キャンパス | ブリスベン(Gardens Point) |
専攻には、Artificial Intelligence(人工知能)とSoftware Development(ソフトウェア開発)があります。FDEを目指すなら、このどちらかが候補です。
最終学年には、
業界のクライアントの実際の課題に、チームで取り組むプロジェクトがあります。成果は年末のIT and Games Showcaseで発表し、企業の人たちも見に来ます。2024年は、217人の学生が48社と56のプロジェクトに取り組みました。
もう1年学べば、Master of Data Scienceとの組み合わせの学位(Bachelor of Information Technology / Master of Data Science)で卒業する道もあります。
クイーンズランド大学(UQ)Bachelor of Computer Science

UQの
Bachelor of Computer Scienceは3年制の学部です。専攻は、Artificial Intelligence(人工知能)を含む4つから選べます。
| 項目 |
UQ Bachelor of Computer Scienceの内容 |
| 期間 | 3年。成績次第で、研究を含む1年制の優等課程(Honours)にも進める |
| 数学の前提科目 | 高校数学の前提科目あり(さらに上級の数学も推奨) |
| 英語の条件 | IELTS 6.5(各セクション6.0以上) |
| 学費の目安 | 年間A$60,952(日本円で約6,826,624円)(2027年度) |
選択科目には、
実際のクライアントとグループで医療アプリを開発する科目(COMP3820 Digital Health Software Project)があります。大学院の章でも紹介しますが、もともとは学部の科目です。FDEを目指すなら、ぜひ取っておきたい科目です。
ひとつ大事な点があります。プログラミングもAIも、数学が土台です。ANUとUQは高校数学が前提科目で、QUTも高校数学の知識を前提にしています。
日本の高校で履修した数学が各大学の条件にどう当たるかは、成績証明書を見て当社で確認します。数学の授業は、文系・理系を決める前からしっかり取っておいてください。
学部を卒業したあとは「就職」か「大学院」か
学部を卒業したあとの進み方は、大きく2つあります。どちらが上ということはなく、向いている人が違います。
| 進み方 |
向いている人 |
| すぐ就職する | 学部で顧客との開発経験を積めた人。FDEの求人の多くは実務経験を前提にしているため、早く経験を積めるのが強み |
| 大学院に進む | LLMやAIの専門科目を深めたい人。学部で顧客との開発経験を積めなかった人には、もう一度その機会を得られる場になる |
働きながら経験を積み、あとで大学院に戻る道もあります。UQなら、学部3年+修士1.5年の合計4.5年で修士まで修了できます。どの道が合うかは、学部の途中で一緒に考えましょう。
FDEを目指せる大学院5選(順位なし)
大学院選びで見るべき点は、「AIを学べるか」よりも「顧客や企業と一緒に作る経験が、科目として組み込まれているか」です。AIを学べるコースは多いですが、この点はコースによって大きく違います。
当社の提携大学の中から、この基準で5つのコースを選びました。どれが上ということはなく、向いている人が違います。IT未経験の方向けから順に並べています。
| 大学・コース |
こんな人に向いている |
| オーストラリア国立大学(ANU)Master of Computing | IT未経験で、受け入れ組織と組む開発経験を一番重視したい人 |
| RMIT大学 Master of Information Technology | IT未経験で、AIを専攻として学びたい人 |
| クイーンズランド工科大学(QUT)Master of Information Technology | IT未経験で、ブリスベンで科目選びに迷わず学びたい人 |
| メルボルン大学 Master of Software Engineering | ソフトウェア開発をとことん深め、企業との開発経験を最も多く積みたい人 |
| クイーンズランド大学(UQ)Master of Information Technology/Master of Computer Science | ブリスベンで学びたい人。IT未経験なら2年制、エンジニア経験者なら1.5年制 |
情報の最終確認:2026年10月22日(当社にて各大学の最新情報を確認)。
オーストラリア国立大学(ANU)Master of Computing

ANUの
Master of Computingは、コンピューティング以外の学部を出た人のために作られた2年制の修士課程です。オーストラリアコンピュータ協会(ACS/Australian Computer Society)の認定を受けています。
| 項目 |
内容 |
| 期間 | 2年(96単位。1科目は原則6単位) |
| 学歴の条件 | 学士号でGPA5.0/7.0以上。またはGPA4.0/7.0以上+関連分野での3年以上の専門職経験 |
| 学費の目安 | 年間A$57,640(日本円で約6,455,680円)(2027年度) |
| キャンパス | キャンベラ |
GPAなどの条件は最低ラインで、ANUは出願者を成績などで順位付けして選考します。条件を満たせば必ず合格するわけではない点に注意してください。
おすすめの理由は、総仕上げの課題科目(Capstone)で選べる
TechLauncherです。4〜7人の学生チームが、企業・政府・地域の団体などの受け入れ組織と一緒に、2学期連続でプロジェクトを進めます。
対象の科目(COMP8715)は2学期で約260時間の学習量で、クライアントとの打ち合わせも含まれます。顧客の課題を聞き、作り、成果を発表する流れは、FDEの仕事そのものです。

受け入れ組織がいるプロジェクトを選ぶことが、FDEを目指すうえでの最大のポイントです。後半で、2月入学の場合の4学期分の履修プランを紹介します。
RMIT大学 Master of Information Technology

RMITの
Master of Information Technologyは、
どの分野の学士でも出願できる2年制の修士課程です。IT未経験の方が、AIを専攻として学べる点が特徴です。
| 項目 |
内容 |
| 期間 | 2年 |
| 学歴の条件 | 分野を問わず学士号でGPA2.0/4.0以上(オーストラリアの基準) |
| 英語の条件 | IELTS 6.5(各セクション6.0以上) |
| 学費の目安 | 年間A$47,040(日本円で約5,268,480円)(2027年度) |
| キャンパス | メルボルン(City Campus) |
専攻(Specialisation)は7つあり、そのうちの1つが「システム・アプリケーションにおける人工知能」です。クラウドや、ソフトウェアシステムの設計を専攻にすることもできます。
最終学期には、業界パートナーと連携したソフトウェア開発プロジェクトに、最大6人のチームで取り組みます。研究論文を書く道も選べますが、FDEを目指すなら業界パートナーとのプロジェクトを選んでください。
クイーンズランド工科大学(QUT)Master of Information Technology

QUTの
Master of Information Technologyは、2年版であれば
どの分野の学士でもGPA4.0/7.0以上で出願できます。ブリスベンで学べる、IT未経験の方の選択肢です。
| 項目 |
内容 |
| 期間 | 2年(IT系の学士、または他分野の学士+3年以上のIT実務経験がある場合は1.5年) |
| 英語の条件 | IELTS 6.5(各セクション6.0以上) |
| 学費の目安 | 年間A$46,800(日本円で約5,241,600円)(2027年度) |
| キャンパス | ブリスベン(Gardens Point) |
全192単位のうち、自分で選べるのは「専攻」と「総仕上げの課題科目の種類」の2つだけです。その代わり、機械学習やサイバーセキュリティ、人間中心設計を全員が学ぶため、IT未経験の方でも迷わずに学べる設計になっています。
| 区分 |
単位とFDEを目指す場合の選び方 |
| 基礎コア | 48単位。全員が履修。IT以外の学部出身者はここでプログラミングの基礎を固める |
| 上級コア | 60単位。全員が履修。機械学習、サイバーセキュリティ、人間中心設計などを学ぶ |
| 専攻 | 48単位。7専攻から選ぶ。FDEを目指すならSoftware Development(モバイル・ウェブ・クラウドの開発) |
| 総仕上げ | 36単位。2学期にわたる職場での実践的な学び(WIL/Work Integrated Learning)を含む。研究寄りではなく、企業の課題に取り組む型を選ぶ |
なお、このコースにはAIという名前の専攻はありません。AIそのものを主軸にしたい場合は、別コースのMaster of Artificial Intelligenceを検討することになります。
メルボルン大学 Master of Software Engineering

メルボルン大学の
Master of Software Engineeringは、5コースの中で
企業と一緒に作る経験を最も多く積めるコースです。
| 項目 |
内容 |
| 期間 | 留学生は3年(1年目は工学系以外の出身者向けの基礎科目) |
| 英語の条件 | IELTS 6.5(各セクション6.0以上) |
| 学費の目安 | 1年目A$62,976(日本円で約7,053,312円)(2026年度。2027年度は未発表) |
| キャンパス | メルボルン(Parkville) |
企業のクライアントと組む科目が3つあります。要件を分析する科目、1学期の開発プロジェクト、そして
1年間かけて外部のクライアント向けにソフトウェアを作るプロジェクトです。経験のあるエンジニアの指導のもと、実際の開発の進め方で取り組みます。
専攻は人工知能・ビジネス・サイバーセキュリティ・分散コンピューティング・HCI(人とコンピュータの関わりの設計)の5つから選べます。FDEを目指すなら人工知能が第一候補です。
一方で、期間は3年と5コースの中で最も長く、学費も高めです。開発を深く学ぶ時間とお金をかけられるかが、選ぶときの判断材料になります。
クイーンズランド大学(UQ)Master of Information Technology/Master of Computer Science

UQには、経歴に合わせて2つのコースがあります。どちらもブリスベンのSt Luciaキャンパスで学び、2027年度の学費の目安は年間A$60,952(日本円で約6,826,624円)です。
Master of Information Technologyでは、必修の中にチームで試作を進める科目があり、総仕上げでは実務に近い期限で、チームでソフトウェアの試作品を設計・開発するスタジオ科目を選べます。
選択科目(3科目)には、機械学習(COMP7703)や自然言語処理(COMP4703)に加え、
実際のクライアントとグループで医療アプリを開発する科目(COMP3820)があります。
この科目の前提科目は、Master of Information Technologyの必修でそろいます。
エンジニア経験者向けのMaster of Computer Scienceは、自然言語処理や情報検索など、LLMやRAGに直結する科目が充実しています。後半で12科目の履修プランを紹介します。
履修プランの例:ANUとUQ
ここでは、科目の開講学期と前提科目まで当社で確認した、ANUとUQの履修プランを紹介します。
ANU Master of Computing(2月入学・IT未経験の方)
ANUでは、専攻(Specialisation)を1つ選ぶ必要があります。AI専攻もありますが、FDEを目指すなら私は「Software Development」専攻をおすすめします。
AI専攻は研究者を育てる色合いが強く、FDEの求人で最も多く求められる「本番で動くソフトを作る力」を軸にするには、ソフトウェア開発を専攻にしたほうが合っているからです。AIは選択科目で取ります。
| 科目コード |
1年目・第1学期(2月〜)の科目(24単位) |
| COMP7710 | Programming Fundamentals(プログラミングの基礎)。12単位の必修科目で、プログラミング未経験者向け |
| COMP6260 | Foundations of Computing(計算機科学の数学的な基礎)。MATH6005 Discrete Mathematics Models(離散数学)との選択 |
| ENGN8100 | Introduction to Systems Engineering(要件定義から始めるシステム設計)。専攻の必修で、グループプロジェクトあり |
1年目の前半は、プログラミングの基礎固めに集中します。ENGN8100では、顧客の要望を整理して技術者・非技術者の両方に伝える「要件定義」を学びます。
| 科目コード |
1年目・第2学期(7月〜)の科目(24単位) |
| COMP6442 | Software Construction(中規模ソフトウェアの開発実践)。必修 |
| COMP6120 | Software Engineering(ソフトウェア工学)。必修。チーム課題と発表が成績の50% |
| COMP8280 | Responsible Practice, Innovation and Leadership(技術者の職業倫理とリーダーシップ)。必修 |
| COMP6670 | Introduction to Machine Learning(機械学習入門)。専攻の中で、必修のCOMP6120の代わりに取る科目として数える |
この学期で、2年目のTechLauncherに必要な前提科目(COMP6442・COMP8280・COMP6120)がそろいます。
| 科目コード |
2年目・第1学期(2月〜)の科目(24単位) |
| COMP8715 | Advanced Computing Team Project(TechLauncher:受け入れ組織とのチーム開発)。前半 |
| COMP6242 | Deep Learning(ディープラーニング)。生成AIの土台となるトランスフォーマーなどを学ぶ |
| COMP8600 | Statistical Machine Learning(統計的機械学習)。専攻の8000番台科目として数える |
| MGMT7020 | Technology and Project Management(ITプロジェクトの管理)。アジャイル開発の管理も扱う。自由選択枠 |
この学期は、AI系の2科目がどちらも数学を多く使うため、負担が重くなります。TechLauncherと並行して進めるので、時間の使い方が問われる学期です。
| 科目コード |
2年目・第2学期(7月〜)の科目(24単位) |
| COMP8715 | Advanced Computing Team Project(TechLauncher)。後半 |
| COMP6390 | Human-Computer Interaction(使う人の視点に立った設計)。ユーザー調査と試作が成績の中心 |
| COMP6240 | Relational Databases(データベースとSQL) |
| COMP選択 | コンピューティングの選択科目を1つ。前提科目を満たすものを、入学後に大学スタッフと相談して決める |
このプランで、ビジネス寄りの科目(COMP8280・COMP6390・MGMT7020と、TechLauncherの半分)を数えると24単位になります。全96単位のうち、
エンジニアリング約75%、ビジネス約25%で、前の章で紹介した配分とちょうど一致します。
ひとつ注意があります。機械学習入門(COMP6670)は、高校で最も上級の数学を履修していることを前提にしています。文系出身の方は、入学前に線形代数や確率・統計を復習しておくと、2年目がぐっと楽になります。
UQ Master of Computer Science(エンジニア経験者の方)
UQのこのコースは、研究科目を4〜10単位取る必要があります。研究科目の中心は2学期にわたる論文型のプロジェクトですが、FDEで評価されるのは研究よりも「本番で使われるものを作った経験」です。
そのため、研究は最小の4単位に抑え、残りを実践的な科目に回すプランをおすすめします。全24単位(1科目2単位で12科目)の内訳は次のとおりです。
| 科目コード |
FDEを目指す推奨プラン(12科目・24単位) |
| REIT6811 | Research Methods(研究方法論)。研究科目 |
| REIT7820 | Research & Development Project(1学期で完結する研究開発プロジェクト)。研究科目 |
| COMP3820 | Digital Health Software Project(医療アプリの開発プロジェクト)。実際のクライアントとグループで開発する。第2学期のみ |
| COMP7703 | Machine Learning(機械学習) |
| COMP4703 | Natural Language Processing(自然言語処理)。LLMの土台 |
| INFS7410 | Information Retrieval and Web Search(情報検索)。RAGの土台 |
| CSSE6400 | Software Architecture(本番で動くシステムの設計) |
| DECO6500 | Advanced Human-Computer Interaction(使う人の視点に立った設計の応用) |
| INFS3208 | Cloud Computing(クラウドコンピューティング) |
| INFS3200 | Advanced Database Systems(データベースの応用) |
| COMP7110 | Introduction to Software Innovation(チームで試作し、判断し、伝える新規開発)。第2学期のみ |
| BISM7255 | Business Information Systems Analysis and Design(業務システムの分析と設計) |
このプランは、レベル6以上を12単位以上、レベル7を8単位以上、レベル3を最大6単位までというUQの条件をすべて満たしています。ビジネス寄りの科目を数えると、
エンジニアリング約71%、ビジネス約29%の配分です。
このプランの軸はCOMP3820です。ただし、前提科目がUQの学部の科目で指定されているため、他大学出身の方は入学後に履修できるかを学部に確認する必要があります。履修できない場合は、Web Information Systems(INFS7202)などに差し替えます。
在学中にやるべきこと

大学院の学位は、FDEへの入口の1つにすぎません。採用で見られるのは「何を作り、本番で動かしたか」なので、在学中から卒業後の準備を始めることが大切です。
1つ目は、実際に使われるものを作ることです。総仕上げの科目では、受け入れ組織や業界パートナーの課題に取り組むプロジェクトを選んでください。完成した成果物は、そのまま作品集(ポートフォリオ)になります。
2つ目は、LLMを組み込んだ開発の経験です。オーストラリアのジュニアFDE求人では、OpenAI・Anthropic・GoogleのAIを外部から呼び出して組み込んだ経験が加点要素になっています。授業とは別に、小さなアプリでも作っておくと強みになります。
3つ目は、英語で「技術を知らない人に説明する」練習です。FDEは、顧客の現場担当者や経営層に技術を説明する場面が多い仕事です。授業の発表やグループワークを、その練習の場として使ってください。
よくある質問
FDEを目指してオーストラリアへの留学を検討されている高校生・保護者・社会人の方からいただくご質問をまとめました。
高校生のルート、文系からの挑戦、そして卒業後すぐに就けるか——実際に多いのはこの3つです。
| Q. 高校生ですが、大学院まで行く必要がありますか? |
| A. 必須ではありません。ANU・QUT・UQの学部にも顧客や企業と一緒に作る科目があり、FDEで見られる「作って動かした実績」は学部から作れます。卒業後すぐ就職して経験を積む道も、大学院でAIを深める道もあります。どちらが合うかは、学部の途中で一緒に考えましょう。 |
| Q. 文系の学部出身でもFDEを目指せますか? |
| A. 目指せます。ANU・RMIT・QUT・UQには、IT以外の学部を出た人が入れる2年制の修士があります。FDEでは業界の知識が強みになるため、前の学部で学んだ分野は無駄になりません。ただし機械学習の科目は数学を多く使うので、入学前に線形代数や確率・統計を復習しておくと安心です。 |
| Q. 大学や大学院を卒業したら、すぐにFDEとして働けますか? |
| A. 多くの求人は実務経験を前提にしているため、すぐに就けるとは限りません。ジュニアFDEの募集もありますが、卒業後はまずエンジニアとして経験を積み、FDEへ進む計画を立てるのが現実的です。 |
| Q. 卒業後にオーストラリアでFDEとして働くことはできますか? |
| A. オーストラリアにもFDEの求人はあります。ただし、卒業後に働くためのビザの条件は移民制度で定められており、変更されることもあります。最新の情報はDepartment of Home Affairs(オーストラリア内務省)で確認してください。個別のビザ相談は、Registered Migration Agent(登録移民エージェント)またはAustralian legal practitioner(オーストラリアの法律専門家)へご相談ください。 |
カウンセラーから一言(ブリスベンオフィス 林 真生 / Masuyo Hayashi)
FDEという言葉を初めて聞いた方も多いと思います。AIは「入れれば動く」ものではなく、業務に合わせて作り込む人がいて、初めて成果が出ます。FDEは、まさにその役割を担う仕事です。
この記事で学部と大学院のコースに順位を付けなかったのは、どれが上ということがないからです。IT未経験の方とエンジニア経験者の方では、同じ大学でも選ぶコースが変わります。
FDEを目指したいというご相談を受けたら、私はまず3つのことを確認します。前の学部で何を学んだか、プログラミングの経験がどのくらいあるか、そして数学への抵抗感です。この3つで、合うコースがほぼ決まります。
ただ、どのコースを選んでも、大学院の数年間だけでFDEになれるわけではありません。大切なのは、在学中に「顧客と一緒に作って、本番で動かした」経験を1つでも持って卒業することです。そこは、はっきりお伝えしておきたいと思います。
高校生の方は、まず数学の授業を大切にしてください。プログラミングもAIも、最後は数学が支えています。ここは数年かけて、じっくり積み上げましょう。
FDEは、エンジニアリングとコミュニケーションの両方を武器にできる、とても面白い仕事です。新しい分野に本気で挑戦したい方を、全力でサポートしたいと考えています!
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