オーストラリア国立大学(ANU)国際関係学修士|出願条件と選び方

オーストラリア国立大学(ANU)のキャンパス入口の看板オーストラリア国立大学(ANU)のMaster of International Relations(国際関係学修士)は、国際政治の理論とアジア太平洋地域の動きを2年間で学ぶ大学院コースです。

この記事では、96ユニットの科目構成、入学条件、2027年の学費の目安に加え、「自分に向いているか」を判断するポイントをまとめました。


「ニュースの背景を、理論と議論で読み解けるようになる2年間。」

国際ニュースを見て、「なぜこの国はこう動くのか」と気になったことはありませんか。このコースは、その疑問を理論と歴史、そして教員や学生との議論を通して掘り下げていく修士課程です。

ANUが提供するのは、オーストラリアの首都キャンベラにある国立大学ならではの学びです。入学条件や科目の自由度、論文(Thesis)の選択肢まで確認したうえで、自分に合うかを考えてみてください。

グローバル政治と、アジア太平洋の両方を学ぶ。

ANUの大教室の様子このコースは、ANUのコーラル・ベル・アジア太平洋研究スクール(Coral Bell School of Asia Pacific Affairs)が提供しています。留学生は対面授業(In Person)での履修が前提です。

大学の説明では、国際関係の理論やグローバル政治の議論と、アジア太平洋地域への関心を組み合わせている点が特徴とされています。国際安全保障、グローバルガバナンス(国際社会の統治のしくみ)、国際政治経済、人権などの課題を、理論を使って考える力を養います。

学習成果として挙げられているのは、国際関係の主要な理論を使って現代の問題を分析すること、そして高度な調査・執筆に取り組むこと、研究成果を学術的にも実務的にも説明することです。つまり、情報を覚えるのではなく、自分の見解を根拠とともに文章にする訓練が中心になります。

全体で96ユニット。必修は4科目だけ。

ANUの校舎で過ごす学生コース全体は96ユニット(1科目6ユニットで16科目分)です。必修科目は4科目・24ユニットで、残りの72ユニットは自分で選ぶ余地が大きい構成になっています。

選び方には上限と下限があります。基礎科目から最低24ユニット、専門分野(Specialisation)の科目は最大48ユニット、語学科目は最大12ユニット、インターンなどの実践科目は最大6ユニット、論文(Thesis)は最大24ユニットです。

科目コード 必修科目 国際関係を学ぶ土台(4科目・24ユニット)
INTR8011International Relations Theory(国際関係理論)
INTR8022International Relations in the Asia-Pacific(アジア太平洋の国際関係)
INTR8046The Evolution of the International System(国際システムの変遷)
INTR8080Global Ethics(グローバル倫理)

必修科目で、理論・地域・歴史・倫理という4つの視点を最初に固めます。ここで身につけた考え方を使って、次の基礎科目や専門分野の科目を選んでいきます。

科目コード 基礎科目の選択肢(15科目から最低24ユニット=4科目以上を選択)
ASIA8018Coral Bell School Study Tour(コーラル・ベル・スクール スタディツアー)
INTR8013International Political Economy(国際政治経済学)
INTR8020Atrocity Prevention in the 21st Century(21世紀の大規模残虐行為の防止)
INTR8032Global Security(グローバル安全保障)
INTR8034AI and the Future of War(AIと戦争の未来)
INTR8052Key Debates in Peace and Conflict Studies(平和・紛争研究の主要な論争)
INTR8053Ethics of Peace and War(平和と戦争の倫理)
INTR8060China’s Global Engagement(中国の対外関与)
INTR8066International Relations in the Information Age(情報時代の国際関係)
INTR8068Foreign Policy Analysis(外交政策分析)
INTR8072Research Design and Methods in Global Politics(グローバル政治の研究設計と方法)
INTR8077Women, Peace and Security(女性・平和・安全保障)
INTR8082Regionalism and Southeast Asia(地域主義と東南アジア)
INTR8083Race and Global Politics(人種とグローバル政治)
INTR8084Global Crisis, Global Protest(世界的危機とグローバルな抗議)

基礎科目は、安全保障、政治経済、平和と紛争、外交政策など、自分の関心に合わせて組み合わせられます。論文(Thesis)を選ぶ予定がある方は、INTR8072(研究設計と方法)を早めに履修しておくことをお勧めします。

専門分野には、アジア研究、アジア・太平洋研究、外交、国際法、太平洋研究、戦略研究が挙がっています。2023年以降に入学する学生は、専門分野の履修は必須ではなく、あくまで選択肢のひとつです。語学科目は日本語、中国語、インドネシア語など多数の言語から選べ、実践科目には、次の章で紹介するANIP(ANIP6503)や、国際関係インターンシップ(ADIPL8015)が含まれます。

連邦議員の事務所でインターン。首都キャンベラならではの「ANIP」。

高台から見た首都キャンベラの街並みANUには、ANIP(Australian National Internships Program)というインターンシップ制度があります。学部生・大学院生ともに、専攻分野を問わず参加できます。

最大の特徴は、オーストラリアで唯一、連邦議会でのインターンシップ(Commonwealth Parliamentary Internships)を提供している大学のプログラムであることです。下院議員・上院議員の事務所に入り、国の政策づくりにつながるさまざまな業務に関わります。

議会のほかにも、ACT(首都特別地域)議会、政府機関、各国の在外公館、NGO、シンクタンクで実習する道があります。授業で学んだ理論を政策の現場で確かめられるのは、首都にある国立大学ならではの環境です。

項目内容
対象ANUの学部生・大学院生(全分野)
実習先連邦議員の事務所、ACT議会、政府機関、在外公館、NGO、シンクタンク
実習日数週1日が一般的(週2日・週4日の設定もあり)
実習の時期このコースでは2年目に行うのが一般的
授業政策研究と職業スキルのワークショップ(参加状況も成績評価の対象)
成績評価実習先と相談して決めたテーマで研究報告書を書き、ポスター発表を行う
このコースでの扱い選択科目ANIP6503(6ユニット)として履修
応募締切第1学期の実習=前年9月30日/第2学期の実習=4月30日

留学生が出願前に知っておきたいこと
ANIPはこのコースでは選択科目のため、実習の時間は学生ビザの就労時間(学期中は2週間で48時間まで)に数えられます。アルバイトをしている場合は、実習とアルバイトを合わせて上限を超えないよう注意が必要です。また、応募の機会は国内学生と同じですが、選抜制で、受け入れ先によってはオーストラリア国籍の方しか受け入れない方針のところもあります。希望の実習先に必ず入れるわけではありません。

このコースで目指せる職業

ANUキャンパスの建物大学の説明では、特定の職種や就職先の一覧は示されておらず、卒業生に政治・ビジネス・行政・学術分野のリーダーがいることが紹介されています。そのため、「この学位を取れば特定の職に就ける」と考えるのは適切ではありません。

当社では、政府関係・国際機関・シンクタンク・研究・報道・企業の国際部門といった、国際情勢の分析力が求められる分野を進路の方向性として考えています。ただし、これは学位だけで決まるものではなく、これまでの職歴、語学力、在学中のインターンや人脈も大きく影響します。

在学中から、実践科目(インターン)に取り組む、教員の研究テーマを調べる、関心分野のレポートを書き溜めるなど、卒業後を見据えた準備をしておくと良いと考えています。

こんな人におすすめ。そして、別の選択肢も見てほしい人。

ANUのラウンジで過ごす学生たち向いているのは、国際政治・安全保障・外交などに強い関心があり、長い英語の文献を読み、自分の意見を論理的に書くことに抵抗がない方です。研究や政策の仕事に進みたい方にとっても、論文の選択肢があるのは大きな魅力です。

また、「まだ自分の進路がはっきりしない」という方もいるでしょう。完璧な天職を探すより、分析して書くという汎用性の高い力を、この2年間で積み上げていくという考え方もあります。

一方で、実務スキルを短期間で身につけたい方や、ビジネス・経営の専門知識を重視したい方には、このコースは中心が違います。この場合は、他のコースも比べたほうが良いでしょう。

同じ分野の修士は他大学にもあり、当社の分野別の記事「オーストラリアで学ぶ国際関係学」で比較の考え方を紹介しています。理論重視か、特定の地域か、実務寄りかによって、選ぶ大学は変わると考えています。

クイーンズランド大学(UQ)の国際関係学修士との違い

国内でもう一つ比較の候補になるのが、クイーンズランド大学(UQ)のMaster of International Relationsです。大きな違いは期間と場所です。UQは学歴に応じて1年・1.5年・2年から期間が決まり、学費の年額もANUより低めです。

一方ANUは、首都にある国立大学として政策の現場に近く、ANIPのように連邦議会などで実習できる機会があるのが強みです。

大学特徴
ANU(このコース)キャンベラで2年・96ユニット。学費は年額A$57,640(2027年度)。アジア太平洋の国際関係に強く、ANIPで議会や政府機関での実習を選べる
UQブリスベンで1年・1.5年・2年から選べる。学費は年額A$48,080(2027年度)。フィールドワークか論文(Thesis)を組み込める

入学条件と進学ルート

ANUのキャンパスで会話する学生たちANUでは、成績を7点満点のGPAに換算して審査します。日本の成績からの換算は大学が行いますので、成績証明書をお手元にご用意のうえ、目安をご相談ください。

出願の方法(いずれか) 条件
学士のみ学士号(または海外の同等の学位)で、GPA 5.0/7.0以上
学士+職歴学士号でGPA 4.0/7.0以上、かつ関連分野でANZSCOスキルレベル1の職歴が3年以上(フルタイム換算)
学士+大学院Certificate学士号と、大学院Certificateの両方でGPA 4.0/7.0以上
大学院Diploma大学院Diplomaで、GPA 4.0/7.0以上

このほかにも、大学院で48ユニットを修了している場合や、GRE(大学院入学のための共通試験)のスコアと職歴を組み合わせる場合、10年以上の関連職歴がある場合などの方法があります。

ANUは「条件を満たしても合格が保証されない」と明記しており、まず最終学期を除いた成績(GPA1)で順位を付け、必要に応じて他の学期の成績や英語力で確認します。最低条件のGPAだけでなく、競争の中でどう見られるかを考える必要があります。

英語力は、IELTS Academicで総合6.5、リーディング・ライティング・リスニング・スピーキングは各6.0以上が基準です。ただし、基準を満たすことと、毎週大量の英語文献を読み、論文を書くことは同じではありません。余裕を持ったスコアを目指すことをお勧めします。

条件に届かない場合の進学ルートについては、大学のコーラル・ベル・スクールが個別に相談を受け付けており、当社でも成績に応じた選択肢をご案内できます。

コース概要

最終確認:2026年10月21日(当社にて大学の最新情報を確認)

項目 内容
大学名The Australian National University(オーストラリア国立大学)
コース名Master of International Relations(国際関係学修士)/プログラムコード MINTR/CRICOS 082309M
期間2年(フルタイム)/96ユニット
学費年額の目安 A$57,640(日本円で約6,513,320円)(2027年度・留学生)。2年分は年額×2年の単純計算で A$115,280(日本円で約13,026,640円)
入学時期2027年は第1学期=2月22日開始、第2学期=7月26日開始(それぞれ前週にオリエンテーション週があります)
キャンパス首都特別地域(ACT)キャンベラ(対面授業)

出願前によくいただくご質問

このコースについて、日本からの留学を検討されている方からいただくご質問をまとめました。

文系出身でなくても出願できるか、GPAが低めの場合の選択肢、そして論文を書けるかどうか——実際に多いのはこの3つです。

Q:国際関係を専攻していなくても出願できますか?
A:学部の専攻に制限は示されておらず、学士号とGPAなどの条件で審査されます。ただし、関連分野の学位がある場合は、単位の免除の対象になる可能性があります。成績証明書をもとに個別にご案内します。

Q:GPAが5.0に届かない場合はどうなりますか?
A:学士のGPAが4.0以上で、関連分野の職歴が3年以上ある場合などは、別の方法で出願できる可能性があります。日本の成績の換算は大学が行いますので、まずはご相談ください。

Q:論文(Thesis)は誰でも選べますか?
A:論文は最大24ユニットまで選べますが、INTR8072を修了し、コースワーク(講義形式の科目)の平均が70%以上であることが前提です。研究志望の方は、入学後の成績管理も大切です。

Q:英語力はどのくらい必要ですか?
A:IELTS Academicで総合6.5、各技能6.0が基準です。現在のスコアに応じた準備方法は変わりますので、お気軽にご相談ください。

Q:留学生もANIPのインターンシップに参加できますか?
A:参加できます。応募の機会は国内学生と同じで、実習は週1日が一般的です。ただし選抜制で、受け入れ先によってはオーストラリア国籍の方に限っているところもあります。また、実習の時間は学生ビザの就労時間に数えられるため、アルバイトとの兼ね合いも考えておく必要があります。

カウンセラーから一言(ブリスベンオフィス 林 真生 / Masuyo Hayashi)

私が最初に確認するのは、「国際関係を学んで、その先に何をしたいか」です。研究職や政策の仕事を目指すのか、まずは視野を広げたいのかで、必要な準備が変わります。

次に確認するのは、学部時代の成績と、英語で論文を書く経験です。ただ、ここで学部名だけを見て、可能性を判断することはありません。履修科目や卒業研究まで見て、はじめて正確な見通しが立ちます。

ANUは競争が激しく、条件を満たしても入学できるとは限りません。それでも、挑戦する価値のある選択肢だと考えています。まずは「なぜANUで国際関係学を学びたいのか」を、一度書き出してみてください。一緒に考えます!

オーストラリア国立大学への進学相談はオーストラリア留学センターへ

自分の成績で出願できるか、どの出願方法が合うか、論文を選ぶべきか——一人で悩まず、一緒に整理しましょう。お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。すべて無料でサポートしています。
豪政府認定留学カウンセラーPIER資格保持
(QEAC登録番号I008)
留学カウンセラー歴22年。ブリスベン現地オフィスで、オーストラリア留学・進学の相談を担当しています。2002年にワーキングホリデーで渡豪し、現在は豪政府認定教育エージェントカウンセラー(QEAC登録番号 I008)として、高校生の大学進学、大学生の休学・認定留学、社会人のキャリアチェンジまで幅広くサポートしています。 これまで1500名以上の学生を見てきて強く感じているのは、留学は「入学できるか」だけで決めるものではないということです。英語力、成績、費用、ビザ、現地生活、そして卒業後の進路まで含めて、その人にとって本当に続けられる選択かどうかを見極めることを大切にしています。希望だけで話を進めるのではなく、必要な場合は厳しいこともお伝えしながら、現実的で納得できる留学プランを一緒に考えています。 ブリスベンで留学している学生、これからブリスベンでの進学を目指す方に向けて、制度の説明だけではなく、現地で日々留学生をサポートしているからこそ伝えられる判断材料をお届けしています。「相談してよかった」と思っていただけるよう、一人ひとりの状況に合わせて丁寧に向き合っています。 このカウンセラーに質問する

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