小堺さんの経歴 高専卒業(日本)
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2022年2月 James Cook University(JCU)入学(Chemical Engineering専攻)
※2023年のインタビュー『よりクリーンなプロセスを実現するグリーンテクノロジーの活用』
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2025年12月 JCU卒業
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2026年 日本で就職
【議論の壁を越えて】「自分だけじゃない」という気づき。徹底した事前準備で乗り越えたグループワークの壁
前回のインタビューでは『環境経済学の議論についていけず悔しい思いをした』と仰っていましたね。卒業を迎える今、専門的な議論の場、またはグループワークにおいて、それをどのように乗り越えるために、どんな工夫や努力をしましたか?それによって、ご自身の立ち振る舞いや自信にも変化がありましたか?
あれから3年間、多くのグループワークに取り組む機会がありました。はじめのうちは議論にうまく加われないことも多くありましたが、後半になるにつれて次第に慣れていったと感じています。
私が感じたグループワークに参加するための一番の近道は、
普段の授業内容をしっかり理解しておくことでした。
最初は専門的な議論の場であることから、難しく考えてしまっていましたが、よく考えてみると議題はあらかじめ決まっており、使われる専門用語も限られています。そのため、話題が予測できない日常会話よりも、
むしろ取り組みやすいのだと気づきました。それ以降は、グループワーク前の事前準備や、日頃の授業の復習を大切にするようになりました。
そうして少しずつ議論に参加する中で、私が理解できていないことは他の学生も同様に理解できていない場合がある一方で、私が理解していても他の学生が理解できていないこともある、ということに気づきました。
当たり前のことではありますが、自分だけが留学生だから理解できないのではなく、
皆同じ学生として多くの疑問を抱えながら、互いに支え合ってグループワークを進めているのだと実感しました。そのことに気づいてからは、質問や意見を以前よりも積極的に発言できるようになりました。
【学びの集大成】化学工学の醍醐味を体感。正解のない「プラント設計」で試された、知識の統合と応用力
計算大好き!で、ほとんど全ての授業が楽しかったと仰っていましたが、その中でも特に興味深かった授業について、その具体的な学習内容と、小堺さんにとって「特にココが面白かった!」というポイントをおしえてください。
4年次に履修したChemical Engineering Designという設計科目が、特に印象に残っています。この授業は、
これまでに学んだ化学工学の知識を総合的に応用し、一つのプラントを設計する内容でした。
私たちの課題は、天然ガスから二酸化炭素を大気中に排出することなく水素を生産するプラントの設計でした。単発の課題ではなく、学期を通じてグループで取り組み、2週間ごとにその時点での成果を提出する形式でした。
設計は、まずプラントの立地選定から始まり、必要となる装置(反応器や熱交換器など)やプロセスの検討を行いました。その後、各装置で発生・消費されるエネルギー量を計算し、そのエネルギーをプラント内で効率よく利用する方法を検討しました。さらに、装置の規模や種類の決定、環境・安全評価を行い、最終的には建設費や運転コストを含めた経済性評価を行いました。
4年間で学んできた知識を組み合わせながら、明確な正解のない課題に取り組む授業でした。これまでの授業成績は比較的良好でしたが、
知識を理解することと、それを応用・統合することの難しさを強く実感しました。作業には多くの時間を要し、毎回必ずしも納得のいく形で提出できたわけではありませんでした。しかし、途中提出ごとのフィードバックから学ぶことは非常に多く、試行錯誤を重ねる中で、実際のエンジニアの仕事の大変さと同時に、
そのやりがいを体感することができました。
【最高の仲間たち】高専の基礎力を土台に「アウトプット型」の学びへ。将来に直結する実践的な知識の習得
クラスメイトについておしえてください。彼らとどのように切磋琢磨して課題やExamを乗り切ってきましたか?
Chemical Engineeringのクラスは、10人前後と少人数であることがほとんどでした。Engineeringの中では珍しく、
女子学生のほうが多かったです。留学生は非常に少なく、同じ学年では私のほかにもう一人いるだけで、他の学年や学科を見ても、ほとんどがオーストラリア出身の学生でした。Engineering分野は全体的に女子学生が少ないため、女子同士のつながりが自然と深まり、課題やテスト前には一緒に勉強することもありました。
特に協力したと感じているのは、Thesisのプレゼンテーションです。本番前にお互いの前で発表を行い、改善点を指摘し合い、それを反映させて再度プレゼンをするという過程を繰り返しました。より良い発表を目指して互いに協力し合い、
当日はそれぞれベストを尽くせたなと感じます。
ただし、常に一緒に勉強していたわけではなく基本的にはそれぞれが個別に学習し、必要なときにチャットなどを通じて質問や相談をする形で助け合っていました。留学生が少ない環境ではありましたが、疎外感を覚えることはなく、学年や国籍に関係なく、互いに情報を共有しながら大学生活を送ることができました。
【オーストラリアならではの専門性】鉱山開発からサンゴ礁保全まで。JCUだからこそ出会えた「熱帯地域×工学」の最前線
JCUの工学部は『熱帯地域の課題解決』に強いと言われますが、授業やプロジェクトの中で『これは日本では学べなかったな』と感じる、オーストラリアやタウンズビル特有のトピックはありましたか?
これはオーストラリアならではだと感じた点の一つが、
鉱山に関する授業の多さでした。環境に関する授業では、閉鎖される鉱山の後処理をいかに安全に、かつ環境への負荷を最小限に抑えて行うかについて学びました。
また、鉱業における環境的・安全的な問題を扱った論文を読み、それをもとにグループでプレゼンテーションを行う課題もありました。
さらに、鉱業プロセスの全体の流れや、使用される技術の違いについて詳しく学ぶ授業もあり、鉱業を専門的に扱う科目が一つ丸ごと設けられていることもありました。
Placementでも鉱業分野を選ぶ学生が多く、オーストラリアのエンジニアにとって鉱業がいかに重要な分野であるかを強く実感しました。
また、別のPlacementで関わったプロジェクトの一つでは、
サンゴ礁の保全にエンジニアの視点から関与する機会がありました。工学がこのような環境保全の分野でも貢献できるのだと知り、大きな驚きと同時に、工学の可能性の広さを実感した経験でした。
【プロに学ぶ研究姿勢】「失敗は大きな成果」― 研究者としての視点を授けてくれた、教授陣の温かく手厚いサポート
勉強や研究、プロジェクトが行き詰まった時、JCUの教授やチューターの方たちはどのようにサポートしてくれたり、あるいはエンジニアの先輩としてアドバイスをくれましたか?
まず、1年次にはPASSという授業外の学習サポートがあり、先輩学生が授業内容の復習を行ってくれていました。テスト対策や理解が不十分な部分の説明をしてもらえるため、大学の授業にまだ慣れていない学生にとって、非常に心強い制度でした。
また、教授陣も学生を積極的にサポートする姿勢を持っており、理解できるまで丁寧に説明してくれるだけでなく、質問しやすい雰囲気を常に作ってくださいました。学生からのフィードバックを積極的に求め、授業をより良いものにしようと努力されている点も印象的でした。
研究活動においては、毎週の研究室全体ミーティングに加え、卒業研究のテーマごとのミーティングが設けられており、疑問点や次のステップについて継続的に相談できる環境が整っていました。ミーティング以外の時間でも、電話やメールで迅速に対応してくれることが多く、研究を進める上で大きな支えとなりました。
研究の進め方や考え方について教授陣の意見を聞く中で、これが研究者としてのプロフェッショナルな視点なのだと感じる場面が多くありました。特に、実験結果が想定通りでなかった際に、
「うまくいかなかったことが分かったのは大きな成果だ」と前向きに捉え、新たなアイデアにつなげていく姿勢には大きな学びがありました。そのような研究者の姿を間近で見ることができたことが、卒業研究における最も大きな収穫だったと感じています。
学生に対するフィードバックも常に前向きで、学生が恐縮することなく不安を取り除きながら学ばせようとしてくれた姿勢にとても感謝しています。
【日々の積み重ねが武器になる】高専の基礎力を土台に「アウトプット型」の学びへ。将来に直結する実践的な知識の習得
日本の高専で学んだ『基礎力』は間違いなく小堺さんの武器だったと思います。それを踏まえた上で、JCUでの学びと日本のスタイルを比較して、どのような違いを感じましたか?
JCUでは、
アウトプットの機会が非常に多かったと感じています。毎週の小テストや授業中に教授から投げかけられる質問、グループワークなど、学んだ知識を確認・応用する場が数多くありました。いずれも授業をしっかりと聞き、復習を行っていなければ対応できない内容だったため、
自然と日常的に学習する習慣が身につきました。また、アウトプットを重ねることで、理解がより深まったと感じています。
さらに、高専では工学を広く浅く学んでいたのに対し、JCUではより踏み込んだ内容を学ぶことができ、実践的で、将来の仕事に直結する知識を身につけることができたと感じています。
【エンジニアとしての覚悟】理想から使命へ。社会の利便性と環境負荷の狭間で辿り着いた、解像度の高い「環境貢献」の形
前回のインタビューで語っていた『環境に優しいものづくり』という夢。4年間の学びを経て、その解像度はどう上がりましたか?これからプロのエンジニアとして、具体的にどのような技術やプロジェクトで地球環境に貢献していきたいですか?
以前の私は、「環境にプラスになるものをつくること」が環境にやさしいモノづくりだと考えていました。しかし工学について学ぶ中で、工学は時に環境へ負荷を与える側面も持っているのだと感じるようになりました。例えば、地球温暖化ガスの原因となる石油や石炭を採掘するのもエンジニアであり、それらを利用する工場を設計・建設・運営するのもまたエンジニアです。
一方で、便利な社会はすでに私たちの生活に深く根付いており、環境への影響があるからといって、
それらを完全に排除することは現実的ではないということにも気づきました。そのような中で、環境負荷の少ないプロセスや技術を開発することこそが、現実的かつ持続的な環境貢献であると、今は考えています。
そして、その役割を担えるのは、工場の設計・建設・運営に直接関わるエンジニアだと思います。私は、消費者の目には見えにくい部分であっても、
環境へのマイナスを少しでも減らしていけるようなエンジニアを目指しています。
【タウンズビルでの日常】家賃安、バス0.5ドル、そしてカンガルー。ゆったりとした時間が流れる街でのシェアハウス生活
小堺さんのタウンズビルでの生活についておしえてください。
キャンパスから徒歩15分ほどの場所にあるシェアハウスに住んでいました。共有バスルーム付きの部屋で、家賃は週190ドル、私を含めて6人で暮らしていました。
公共交通機関はバスのみで、特に週末は本数が少なく不便に感じることもありましたが、遊びに行くときなどは友人が車で送ってくれることが多かったです。また、バス料金が片道0.5ドルと非常に安く、時々なぜか無料で乗せてくれる運転手さんもいて助かっていました(笑)
普段の買い物は、バス一本で行けるStocklandというショッピングモール内のWoolworthsを利用していました。Stockland内にもアジア食材店はありましたが、日本の食材は少なかったため、たまに訪れるWillowsなどのアジア食材店で購入することが多かったです。家の近くにバス停があったのですが、たまにバスが来ないときがあるのでその時は15分かけて暑い中大学のバス停に行かなければいけないの大変でした、、
タウンズビルは暑い日が多く外出を控えて週末は家で過ごすことが多かったですが、時々は大学帰りに友人とイベントに参加したり食事に出かけたりもしていました。ただ、外食は日本と比べてかなり高いため基本的には自炊を心がけていました。たまのご褒美としてUber Eatsを利用する際は、ピザやマック、フィッシュ&チップスを頼んでいました。中でもPizza Rivieraというピザ屋さんがお気に入りでした。
メルボルンなどの大都市と比べるとカフェや買い物できる場所が少なく、刺激の多い街ではありませんが、
家賃が安く、ゆったりとした雰囲気で長く暮らすにはとても過ごしやすい場所だったと思います。また街中にはカンガルーが多く、毎日カンガルーを見ながら登校していたのも印象的な思い出です。
そして、留学中に一番印象に残っているのはWhitsundaysです。バスの運転手さんに教えてもらい、写真そのままの景色だよ!と言われたときは半信半疑でしたが、実際に訪れると本当にそのままの美しさでした。
【留学経験を武器に掴んだ内定】「専攻・環境・社風」を軸に貫いた就職活動。海外大生としての強みを活かし、自ら切り拓いたキャリア
内定獲得、おめでとうございます!応募から内定までのプロセスをおしえてください。また、就活においてオーストラリアの大学生であることが、プラスに働いた点、逆に苦労した点はありましたか?
大学3年次の8月から情報収集や説明会参加を始め、実際の面接などは12月から2月にかけて行いました。冬の帰国中に就活を終わらせたかったので、オンライン説明会やオンラインインターンに参加することで参加できる早期選考に応募しました。どの会社も2-3回の面接を経て、内定に至りました。日本にいたので対面での面接に行きましたが、ほとんどの会社は日本にいない場合はオンラインで調整すると言ってくださいました。
就活を始めるにあたって、就活の軸というものを3つ決めました。私の場合は
「専攻を活かせる職種」「環境に貢献できる職種」「自分と合う雰囲気の会社」を軸としました。その軸に沿ってまず業界を決定し、その中で手当たり次第いろんな会社の説明会に参加しました。
はじめの2つは業界を決定した時点でどの会社も当てはまっていたため、説明会や面接では3つ目の軸が当てはまる会社かどうかを重点的にみました。社員座談会や面接でわかることも多く、最終的には社員の方や面接官の方の雰囲気が自分とあっていると感じた会社に決めました。
面接では、基本的なことを聞かれることが多かったです。例えば、「自分の強み」「なぜこの業種なのか」「最終的にはどのように1社に決めるか」などです。その他にも業界的にグループワークが多いので「グループワークでの立ち位置」「今までのリーダー経験」「人と意見がぶつかったときはどうするか」や、高専卒なので「なぜ高専に入ったのか」「なぜ高専から留学という道を選んだのか」などを聞かれました。
留学のプラスの面で言うと、話すエピソードが豊富でESなどで回答に困らないことです。日本の学生と同じことをしていても海外でしているというだけで一つのエピソードになりました。苦労した面で言えば、就活生の友達がいなかったので自分が現在順調に就活を進められているのかわからなかったり、なにから始めればいいのかわからなかったのは不便でした。また、説明会参加や企業探しなどは常に自分主体で行っていかなければならなかったのも大変でした。
【未来の留学生へのメッセージ】「勉強」という武器が言葉の壁を越え、自信をくれる。理系こそ、安心して世界へ飛び込んでほしい
最後に、『理系科目(数学)は好きだけど、海外でやっていけるか不安』と感じている日本の高校生へのアドバイス、メッセージをお願いします。
私は、理系のほうが留学生活は送りやすいと感じました。
特に工学系は計算問題が中心のため、英語に不安があっても比較的良い成績を取りやすいと思います。また、留学初期はプレゼンや議論中心の課題が少なく、現地の生活に慣れてからそうした課題に取り組めたことも、留学生にとっては安心材料でした。
「芸は身を助く」と言いますが、私にとってはそれが勉強でした。成績が取れていたからこそ、教授に声をかけてもらったり、クラスメイトに覚えてもらったりして、環境に自然と馴染むことができました。
日本で理系科目を楽しめている人であれば、
海外でもきっと楽しめると思います。しっかり勉強すれば成績を取ることは難しくなく、成績が取れれば自信にもつながり、環境にも馴染みやすくなります。人見知りで英語も得意ではなかった私でも、4年間楽しく留学生活を送ることができました。ぜひ安心して、一歩踏み出してみてください。
スタッフからのコメント
小堺さんから初めて留学のご相談をいただいたのは、彼女がまだ日本の高専に在学していた頃でした。
あれから4年。今回のインタビューを通じて最も胸を打たれたのは、彼女が抱く「環境貢献」への解像度の変化です。
かつての「プラスを作る」という純粋な理想から、現実と責任を見据えた「マイナスを減らす」というエンジニアの視点へ。小堺さんの”環境にやさしいものづくり”に対する考え方の進化には、JCUでの深い思索と確かな成長の跡が刻まれています。
「芸は身を助く、私にとってはそれが勉強(理系科目)だった」という彼女の言葉は、これから世界へ飛び出そうとする多くの理系学生にとって、何よりの勇気となるでしょう。
JCUのご卒業、そして納得のいく内定獲得、本当におめでとうございます。オーストラリアで培った「社会と環境に配慮したものづくり」の精神を胸に、日本、そして世界の現場で活躍されることを心より応援しています。