
TAFE Queenslandの
Diploma of Music (Performance)は、演奏の技術と音楽で食べていくための仕事の仕組みを1年で学ぶ、国家資格CUA50825 Diploma of Musicの演奏ストリームです。学費・入学条件・オーディション・大学への編入ルートまで整理しました。
「音楽が好き」だけでは、音楽を仕事にできない。
オーストラリアの音楽コースを調べていると、どこも「ステージに立てる」「スタジオが使える」と書いてあります。ただ、それは入口の話です。
TAFE QueenslandのDiploma of Music (Performance)が面白いのは、必修科目4つのうち2つが「演奏」ではなく「仕事の仕組み」に充てられている点です。
フリーランスとしての請け負い方と、著作権の扱い方。この2つが必修に入っている音楽コースは、それほど多くありません。

この記事では、1年16科目の中身、South BankとCoomeraでカリキュラムがどう変わるか、オーディションで何を求められるか、そして修了後に大学の2年次へ進むルートまで整理します。
演奏技術と「仕事の仕組み」を同時に学ぶ1年

修了して取得する資格は、CUA50825 Diploma of Musicというオーストラリアの国家資格です。「Performance(演奏)」は資格名の一部ではなく、TAFE Queenslandがこのディプロマの中で設けている専門分野(ストリーム)の名前です。
同じ国家資格の中に、音響を専門にする
Sound Productionのストリームもあります。どちらを修了しても、資格そのものは全国で通用するCUA50825 Diploma of Musicです。
学習の中心は、演奏の技術そのものと、人前で聴かせるための構成力です。リハーサルルームと演奏スペースにはギターアンプ、キーボード、ドラムキットが備えられ、スタジオには業界で実際に使われている録音用のソフトウェア・機材・マイクが揃っています。
教室の外で演奏する場もあります。年度末には、ブリスベンの劇場
Princess Theatre(プリンセス・シアター)で学生の成果発表公演(ショーケース)が開かれます。

この公演は、同じTAFE Queenslandの音響制作のディプロマ(
Diploma of Music (Sound Production))の学生と一緒につくります。
ただ、このコースの本当の特徴は設備ではありません。
音楽で収入を得るための実務が、必修科目として組み込まれていることです。
フリーランスとして自分を売り込み、条件を交渉し、お金の管理をする。自分の作品の著作権をどう扱い、共作の場合にどう取り決めるか。演奏の上手さとは別の能力ですが、これがないと音楽は趣味のまま終わります。
期間は1年、履修形態はフルタイムです。South Bankキャンパスは週4日、Coomeraキャンパスは週3日の通学になります。
必修は4科目だけ。その4科目が何を意味するか

このコースは全16科目で構成されています。内訳は
必修4科目と、13科目のリストから選ぶ選択科目12科目です。
まず必修から見ていきます。
| 科目コード |
必修科目 全4科目(全員が履修) |
| CUAIND512 | Enhance professional practice using creative arts industry knowledge(音楽業界の知識を使って自分の専門実務を高める) |
| CUAIND412 | Provide freelance services(フリーランスとして仕事を請け負う) |
| CUACMP511 | Manage copyright arrangements(著作権の取り決めを管理する) |
| CUAMWB401 | Develop and implement own self-care plan in the creative industries(クリエイティブ業界で働くための心身のセルフケア計画を立てて実行する) |
4科目のうち、演奏技術そのものを扱う科目は1つもありません。業界知識、フリーランスの実務、著作権、そしてセルフケアです。
最後のCUAMWB401について補足します。これは、収入が不安定で評価にさらされ続ける仕事の中で、自分のメンタルと働き方をどう保つかを扱う科目です。
音楽業界を目指す人の離脱理由は、技術不足よりも心身の消耗であることが少なくありません。それを必修に据えているのは、この学校が業界の現実を知っているからだと当社では考えています。
選択科目12科目 ― キャンパスで中身が変わる点に注意

選択科目は、次の13科目のリストから12科目を選んで履修します。
| 科目コード |
選択科目 13科目のリストから12科目を履修 |
| CUAMPF412 | Develop and apply stagecraft skills(ステージ上での見せ方の技術を身につける) |
| CUAMPF511 | Develop programs for performances(公演のプログラムを組み立てる) |
| CUAMPF515 | Develop instrumental techniques and expand repertoire(楽器の技術を磨き、演奏できる曲の幅を広げる) |
| CUAMPF517 | Provide musical leadership in performances(アンサンブルで演奏をリードする) |
| CUAMPF512 | Use interactive technology in performances(演奏に音楽テクノロジーを取り入れる) |
| CUAMPF415 | Develop and apply instrumental techniques(楽器の基礎技術を身につけて演奏に応用する)※South Bankのみ |
| CUAMCP412 | Compose musical pieces(楽曲を作る) |
| CUAMCP411 | Develop techniques for arranging music(既存曲を別の編成に編曲する技術を学ぶ) |
| CUAMCP511 | Compose music using music technology(音楽テクノロジーを使って作曲する) |
| CUAMLT411 | Notate music for performance(演奏用に楽譜を書き起こし、編集する) |
| CUAMLT413 | Analyse basic harmony functions(基礎的な和声の働きを分析する) |
| CUASOU419 | Mix recorded music(録音した音源をミックスする) |
| CUASOU421 | Mix audio for live productions(ライブ公演の音響をミックスする)※Coomeraのみ |
リストを見て分かる通り、内容は演奏だけに偏っていません。作曲・編曲・採譜・和声分析、そしてミキシングまで含まれます。
ここで注意していただきたいのが、キャンパスによる違いです。13科目のうちCUAMPF415はSouth Bank限定、CUASOU421はCoomera限定と指定されています。
つまりどちらのキャンパスでも、履修できる科目は実質12科目。
「13から12を選ぶ」という表現ほどの選択の自由は、実際には生じにくい構造だと当社では読んでいます。
違いとして表れるのは、South Bankでは楽器の基礎技術の科目が、Coomeraではライブ音響のミキシング科目が入るという点です。ライブの現場仕事にも関心があるならCoomera、演奏技術を固めたいならSouth Bankという見方ができます。
ただし各キャンパスで実際にどの科目が開講されるかは学期ごとに変わる可能性があります。出願前に当社から確認しますので、気になる科目があればお知らせください。
修了後に目指せる仕事

このコースの修了者が目指す進路として想定されているのは、次の3つです。
| 職種 |
主な活動の場 |
| ミュージシャン | ライブ、ツアー、セッション演奏、レコーディング参加 |
| ヴォーカリスト | バンド、ソロ活動、コーラス、スタジオワーク |
| 音楽業界の専門職 | 楽曲制作、編曲、音楽制作のサポート、イベント・公演の運営側 |
ただし、修了すればこれらの職に就けると保証するものではありません。音楽の仕事は、資格の有無よりも作品・演奏実績・人とのつながりで決まる世界です。
そのうえで、このコースを取る意味は2つあると考えています。1つは、独学では抜けやすい理論・編曲・録音の基礎を体系的に埋められること。
もう1つは、在学中の1年間でオーストラリアの音楽シーンに接点を作れることです。共演する相手、講師の持つ業界のつながり、学内の演奏機会。これは日本にいては手に入りません。
なお、このコースには職場実習(Placement)の科目は組み込まれていません。評価はキャンパス内で行われます。現場経験は、在学中に自分で動いて作るものだと理解しておいてください。
修了後、大学の2年次へ ― University of Canberraとの接続

TAFE Queenslandのディプロマには、提携大学の学位課程へ単位を持ち込めるルートがあります。
音楽の場合の接続先は、University of Canberraとの提携で提供されるBachelor of Creative Industries (Contemporary Music Practice)です。
| 項目 |
Bachelor of Creative Industries (Contemporary Music Practice) |
| 提供体制 | TAFE QueenslandとUniversity of Canberra(CRICOS Provider Code 00212K)の提携により提供 |
| コースコード | ARB403(CRICOS 102457G) |
| 期間 | 3年(フルタイム) |
| 単位認定 | 本ディプロマ修了者は24クレジットポイント=フルタイム1年分(8科目分)の振替 |
| 2027年の開講 | 2027年2月15日 |
| 開講キャンパス | Greater Brisbane、Gold Coast |
1年分の単位が振り替えられるので、ディプロマ1年+学士2年の合計3年で学士号にたどり着ける計算になります。いきなり大学へ出願するより英語条件の入口が低く、費用も抑えられるルートです。
ただし、この学士課程について1点お伝えしておくことがあります。2026年9月時点で、この学位の履修形態には留学生向けの区分が表示されておらず、表示されている費用も国内学生向けの目安額です。
留学生としてこの学位へ進めるかどうかは、大学側の受け入れ状況によります。進学を前提にディプロマを選ぶ場合は、出願の段階で当社から大学へ照会しますので、必ずご相談ください。
進学先はこの1校に限られるわけではありません。
TAFE Queenslandは他にもGriffith University、Queensland University of Technology、University of Southern Queensland、Southern Cross University、James Cook Universityと提携しています。
音楽・クリエイティブ分野でどこまで単位が認められるかは大学ごとに異なるため、個別に確認します。
こんな人におすすめ/別の選択肢も見たほうがいい人
向いていると考えるのは、次のような方です。
すでに楽器や歌をある程度続けていて、独学で伸び悩んでいる人。作曲や編曲まで自分でやりたい人。そして、音楽を趣味ではなく収入につなげる方法を具体的に知りたい人。
もう1つ挙げるなら、
「自分が音楽で食べていけるかまだ分からない」という人にも、このコースは向いていると考えています。
向いているかどうかを先に見極めようとすると、たいていの人は動けなくなります。実際には、腰を据えて1年打ち込んだ結果として「これでいける」という手応えが後から生まれることのほうが多いものです。1年という長さは、その判断を下すのにちょうどよい区切りだと思っています。
一方で、別の選択肢を比べたほうがよい場合もあります。
クラシック、ミュージカル、ジャズのスタンダードを専門に学びたい方。このコースが扱うのはコンテンポラリー/ポピュラー音楽で、これらのジャンルは対象外です。大学の音楽学部を含めて検討し直したほうが確実です。
録音・ライブ音響・スタジオワークを本業にしたい方。同じTAFE QueenslandにDiploma of Music (Sound Production)という別コースがあり、そちらのほうが目的に合います。詳しくは
音響制作コースの記事で紹介しています。
楽器も歌もこれから始めるという方。本コースは入学時にオーディションがあるため、まずはCertificate III in Musicから積み上げるルートを検討します。
入学条件 ― 学歴・英語・そしてオーディション

留学生の入学条件は次の通りです。大学の学位課程と比べると入口は広めですが、
オーディションがある点が他のディプロマと大きく違います。
| 項目 |
留学生に求められる条件 |
| 学歴 | 高校卒業(Year 12相当)。高校を卒業していない場合は、関連する職務経験または資格により修了の見込みが示せること |
| 英語力 | Academic IELTS 総合6.0(各バンド5.5以上)または同等のスコア |
| オーディション | コンテンポラリー/ポピュラー音楽から2曲を演奏または歌唱した動画を提出。オリジナル曲・カバー曲どちらでも可。自作のバックトラックの使用も可 |
| 書類 | これまでの音楽経験をまとめた申請書を提出 |
| 年齢 | 17歳以上で、TAFE Queenslandでの1年目の在学中に18歳になること |
オーディションについて補足します。
クラシック、ミュージカル、ジャズのスタンダードはこのコースの対象外なので、選曲として推奨されていません。選曲の段階で評価が下がる可能性があるため、ここは必ず守ってください。
日本の高校を卒業していれば学歴条件は満たします。ただし英語のIELTS 6.0は、日本で対策なしに到達できるスコアではありません。
足りない場合は、留学生向けの英語集中コース(ELICOS)を経由してから本コースへ進むルートがあります。TAFE Queenslandはゴールドコーストのサウスポート(Southport)キャンパスで英語コースを開講しています。

必要な期間は現在のスコアによって変わります。目安として、IELTS 5.5の方はおよそ3か月です。お手元のスコアをお知らせいただければ、学校にも確認のうえご案内します。
なお、入学時には1TB以上の外付けハードディスクと、6.5mmのアダプター付きヘッドホン(Bluetooth製品は不可)が必要です。文具を含めて
約A$200(日本円で約22,400円)程度の追加費用を見ておいてください。
ギターやドラムスティックは、使う場合は自分で持参します。
コース概要
| 項目 |
内容 |
| 教育機関 | TAFE Queensland(CRICOS Provider Code 03020E/RTO Code 0275) |
| コース名 | Diploma of Music (Performance)(Performanceは専門分野〈ストリーム〉の名称) |
| 取得資格 | CUA50825 Diploma of Music(国家資格) |
| CRICOSコード | 120661J |
| 期間 | 1年(フルタイム) |
| 学費 | コース総額 A$23,000(日本円で約2,576,000円)/2027年1月開講の留学生向け総額 |
| 入学時期 | 2027年1月27日 |
| キャンパス | South Bank(ブリスベン/週4日・通学のみ)、Coomera(ゴールドコースト/週3日・通学に一部オンラインを併用) |
| 科目構成 | 必修4科目+選択12科目=全16科目 |
| 実習 | 職場実習科目の設定なし。評価はキャンパス内で実施 |
| 英語条件 | Academic IELTS 総合6.0(各バンド5.5以上) |
情報の最終確認:2026年9月11日(当社にて最新情報を確認)。学費・入学日・入学条件は予告なく変更される場合があります。
学生ビザや就労に関する制度は変更されることがあります。最新の内容はDepartment of Home Affairsでご確認ください。
個別のビザ相談については、Registered Migration AgentまたはAustralian legal practitionerへご相談ください。
カウンセラーから一言(オーストラリア留学センター ブリスベンオフィス 林 真生)
音楽のコースについてご相談をいただいたとき、私が最初に伺うのは「今、どのくらい弾けますか」ではありません。
「1年後、何をしている自分を想像していますか」です。
ステージに立っていたいのか、曲を作って誰かに渡していたいのか、あるいは音響卓の後ろにいたいのか。この3つは、同じ音楽でも必要な科目がまったく違います。
そのうえで、ジャンルを確認します。クラシックやジャズを続けてきた方にこのコースを勧めることはありません。扱っていないからです。ここは正直にお伝えします。
もちろん、進路が完全に固まっていなくても構いません。むしろ、自分に合う道を先に探し当てようとするより、1年腰を据えて力をつけたほうが答えは早く見つかると思っています。
ただ、オーディションの準備だけは早めに動いてください。動画の提出が必要なので、曲を決めて録るまでに思ったより時間がかかります。選曲の相談からお手伝いできますので、まずは声をかけてください。
よくある質問
このコースについて、日本から留学を検討されている方からいただくご質問をまとめました。
オーディションの準備、英語力が足りない場合のルート、そして修了後に大学へ進めるかどうか——実際に多いのはこの3つです。
| Q. オーディションはどのくらいのレベルが求められますか? |
| A. コンテンポラリー/ポピュラー音楽の曲を2曲、動画で提出します。1曲の長さなど細かな指示は、出願時に学校へ確認します。楽器でも歌でも構いません。オリジナル曲でもカバー曲でもよく、自作のバックトラックを流しながらの演奏も認められています。求められているのは完成された演奏というより、1年間の学習についていける土台があるかどうかだと当社では受け止めています。ただし合否はTAFE Queensland側が判断するため、当社から「このレベルなら通ります」と断定することはできません。動画を拝見したうえで、選曲や録り方のご相談には乗れます。 |
| Q. 楽譜が読めないのですが、大丈夫でしょうか? |
| A. 選択科目にNotate music for performance(演奏用の採譜)とAnalyse basic harmony functions(基礎的な和声の分析)が含まれており、譜面と理論はコースの中で扱われます。入学時点で完璧に読める必要はありません。ただ、授業は英語で進み、理論用語も英語です。入学前に基本的な音楽用語の英語だけでも押さえておくと、最初の数週間がかなり楽になります。 |
| Q. IELTS 6.0に届いていません。どうすればよいですか? |
| A. TAFE Queenslandの英語コース(ゴールドコーストのサウスポートキャンパス)を先に受講し、修了後に本コースへ進むルートがあります。IELTS 5.5の方なら、およそ3か月が目安です。ただし必要な期間は各バンドのスコアによっても変わります。お手元のスコア(総合と各バンド)をお知らせいただければ、これまでの出願を踏まえた目安と、2027年1月の開講に間に合わせるための逆算スケジュールをご案内します。 |
| Q. South BankとCoomera、どちらを選ぶべきですか? |
| A. 学費と期間は同じで、違いは通学日数と履修科目です。South Bankは週4日の通学で、楽器の基礎技術の科目が組まれます。Coomeraは週3日で一部がオンライン、ライブ音響のミキシング科目が入ります。演奏技術を固めたいならSouth Bank、ライブの現場仕事にも触れたいならCoomeraという整理ができます。生活環境も、都市部のブリスベンとビーチが近いゴールドコーストで大きく異なります。 |
| Q. 修了後、そのまま大学の2年次に進めますか? |
| A. 本ディプロマの修了者には、University of Canberraとの提携で提供されるBachelor of Creative Industries (Contemporary Music Practice)へ、フルタイム1年分(8科目分)の単位が振り替えられる仕組みがあります。ただし2026年9月時点で、この学位の履修形態には留学生向けの区分が表示されていません。留学生として進学できるかどうかは出願時に大学へ照会が必要です。進学を前提に考えている方は、ディプロマの出願前にご相談ください。 |
TAFE Queenslandへの進学相談はオーストラリア留学センターへ
オーディションの選曲、英語コースを挟む場合のスケジュール、South BankとCoomeraの選び方、そして修了後の進学ルート。音楽のコースは、確認すべきことが他の分野より少し多めです。
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