【体験談】AI時代に翻訳・通訳を学ぶ意味とは?マッコーリー大学院で実感した「機械には踏み込めない人間の価値」

Sayaさん | シドニー | Macquarie University | Languages | 3年1か月
学生時代からの「英語を使う仕事に就きたい」という夢をさらに高めるため、オーストラリア・マッコーリー大学院で翻訳・通訳を学んだSayaさん。入学直後の厳しい言葉に奮起し、より深い実践を求めてAdvancedコースへ進学。在学中には翻訳支援ツール(CATツール)の習得だけでなく、オペラハウスでの同時通訳デビューやフリーランス案件の獲得など、驚くべき行動力でプロへの階段を駆け上がりました。「AI時代に人間が翻訳する意味」を現場目線で真っ向から見つめ直した、Sayaさんの留学体験談をご紹介します。
Sayaさんの留学プラン

2023年3月 マッコーリーカレッジ進学準備英語コース(15週間)

2023年7月 マッコーリー大学Master of Translation and Interpreting Studies(1.5年間)

2025年2月 Master of Translation and Interpreting Studies (Advance)へ

2025年12月 大学院卒業

英語を使う仕事から「翻訳・通訳のプロ」を目指した理由

大学院で「翻訳・通訳」を学ぼうと思ったきっかけを教えてください。

学生時代から私が最も好きだった科目は英語で、何かを選択する際には常に英語が判断軸となってきました。大学の専攻はもちろん、卒業後の就職活動においても「英語を使う仕事に就きたい」という思いを中心に進めていました。その後、都内のホテルに就職し、日々お客様と英語で会話する中で、さらに英語力を高め、自分の確固たる強みとなる専門スキルを身につけたいと何をしたいのか考えた結果、英語を極め、自分の強みとなるスキルを身につけたいと考えるようになりました。その思いの先にたどり着いたのが、大学院で翻訳・通訳を学ぶという選択でした。

留学先に「マッコーリー大学」を選んだ決め手


数ある大学の中から、マッコーリー大学を選んだ決め手は何でしたか?

大学時代に約1ヶ月、メルボルンへ留学した経験があり、その頃から「いつかもう一度オーストラリアに行き、長期滞在をしてみたい」という思いを抱いていました。そのため、留学先の国は迷うことなくオーストラリア一択でした。その後、オーストラリア留学センターに相談し、いくつかの大学院候補を紹介していただきました。大学院ごとにコース内容、期間、費用をノートにまとめて比較検討したところ、マッコーリー大学は費用が比較的抑えられている上に、1年半という程よい期間で学べる点が魅力でした。また、言語学分野で高く評価されていることも決め手となり、あまり悩むことなくマッコーリー大学を選びました。

大学院の課題に直結した「英語コース」での学び

英語コースの卒業式

大学院の入学前に受講した付属語学学校での英語コースは、その後の授業で活きましたか?

はい、受講して本当に良かったと感じています。特に、大学院の授業の課題でそのまま活用できる実践的なスキルを身につけることができました。中でも最も役立ったのは、ライティングで学んだ文献の引用方法です。引用ルールや文献の記述方法といった細かな決まり事を事前に理解していたおかげで、大学院での課題にスムーズに取り組むことができました。また、英語コースで行ったプレゼンテーション課題を通して、プレゼンで使える定型表現を学べたことも大きな収穫でした。さらに、英語コースで使用した教材には役立つ表現やスキルが多く掲載されているため、必要なときに見返して大学院の授業に活かすことができました。

入学直後の衝撃。「英語を学びたいなら出ていきなさい」の真意

最初の学期のスケジュールは紙に書いて壁に貼っていました。

入学直後の授業で、教授から非常に厳しい言葉をかけられたそうですね。

不安を抱えながら受けた翻訳理論の最初の授業で、教授から「英語力を上げたいからここに来たのなら、ここはそういう場所ではないので出て行った方がいい」と言われたときは、強い衝撃を受けました。内心では英語力をさらに向上させたいという思いもあったため、心の内を見透かされたような気持ちになり、不安が一気に込み上げてきました。当時の私は、「きっかけはどうであれ、本気で学びたいという気持ちは確かにある」と自分を奮い立たせながら授業に臨んでいました。

今振り返ると、教授がなぜあのような言葉をかけたのかがよく理解できます。翻訳・通訳とは、第二言語の人たちをサポートする側であり、言語の壁によって意思疎通ができない人々の間に立ち、言葉の架け橋となる仕事です。そのためには、母語と英語のどちらも高いレベルで扱えることが大前提であり、最低限必要な英語力は「持っていて当然」という世界です。英語力がある前提で入学しているというのが教授の真意であり、それほど責任の重い役割だからこそ、覚悟を持って臨みなさいというメッセージだったのだと、今では納得しています。

さらに深い実践と研究を求めて「Advancedコース」へ

ビジネス交渉の模擬練習の授業にて、ブースに入り同時通訳

当初は1.5年のコースでしたが、途中で研究科目を含むAdvancedコースへ延長された理由を教えてください。

当初は深く考えず、「1年半学べれば十分だろう」と思い、1.5年のコースを選択していました。しかし学びを進めるうちに、このままでは少し齧っただけの中途半端な状態で卒業することになり、何も身についていないのではないかという不安が大きくなっていきました。同時に、「もっと深く学びたい」という気持ちも強く芽生え、研究科目も含まれる Advanced コースへの変更を真剣に考えるようになりました。

翻訳・通訳の授業は、まずレベル1の基礎科目から始まり、その後医療や法律といった専門領域に特化した科目、そしてさらに高度な内容へと段階的に進んでいきます。1.5年のコースの状態で、翻訳については3科目を履修しようやく手応えを感じ始めたところでしたが、通訳は2科目しか履修できておらず、得た知識や経験を実践で活かすことは難しいと感じるほど未熟でした。通訳スキルを習得したと言える段階には、まったく届いていなかったのです。

さらに、卒業後は日本人の講師から細かなフィードバックを受けられる機会もなく、「間違ってもいいから挑戦する」ような学習環境もありません。だからこそ、ここで学びを終わらせたくない、もっと実践の場を積み重ねて成長したいという思いが強くなり、コースの延長を決断しました。

(左)Audiovisual と呼ばれる授業の課題で映像翻訳の編集(右)セメスター終盤の課題が山積みの時

1万字の英語論文に挑戦!ジブリ作品の「敬語」翻訳研究

Advancedコースでの研究(リサーチ)テーマについて教えてください。

私が行った研究は “Translation Strategies of Japanese Honorifics in Ghibli Films: A Comparison of Japanese to English Subtitling” という題名で、日本語の敬語が英語字幕ではどのように訳されるのか、その翻訳戦略をスタジオジブリの3作品を対象に比較・分析したものです。

テーマを決める際、「自分が本当に興味を持てること、研究していて楽しいと思える内容を選びなさい」とアドバイスを受けました。何を研究テーマにすべきか考えていたある日、Netflixで日本のドラマを英語字幕付きで視聴していたところ、年上の男性に対して女性が敬語からタメ口に切り替えるシーンがあり、その瞬間に2人の距離が縮まったことを感じました。しかし英語字幕ではその変化が明確に反映されておらず、視聴者はその微妙なニュアンスに気づきにくいと感じたのです。この気づきがきっかけとなり、日本語の敬語が英語ではどのように表現されているのかに注目し、研究テーマとして選ぶことにしました。

研究では、作品内から敬語表現を抽出し、種類ごとに分類した上で、それぞれが英語字幕でどのように翻訳されているかを分析しました。この作業には相当な時間を要しましたが、翻訳戦略や傾向を明らかにする上で重要な工程でした。分析結果や比較内容、得られた知見を英語で詳細に記述する作業は非常に大変でしたが、既存の研究論文を参考にしながら段落構成を考え、論理的にまとめ上げました。最終的に約7,000字から1万字の研究論文を書き終えたときには、大きな達成感があり、納得のいく研究に仕上げることができたと実感しています。

スーパーバイザーの教授は、こちらから相談しなければ積極的に助けてくれることはありませんが、質問すればいつでも丁寧にサポートしてくださり、Excelでまとめたデータをグラフや円グラフにする方法を教えていただくなど、多くの場面で助けていただきました。

AIは翻訳者の仕事を奪うのか?AIと人間の「決定的な違い」

翻訳や通訳はAIに代替されると言われる中、AIと人間の「決定的な違い」は何でしょうか?

AIの技術は急速に進化しており、翻訳の精度もこれからますます高まっていくと思いますが、AIの翻訳に100%頼ることは現時点では不可能です。

例えば通訳の場面では、話者が昨日の出来事のような最新情報に触れることがありますが、人間の通訳者なら状況を即座に理解して対応できます。一方でAIは、その情報がデータとして更新されていない限り、内容を正確に把握して訳すことは難しく、咄嗟の判断力には欠けています。

また、AI翻訳は前後の文脈や話の流れを十分に考慮する点でもまだ不十分です。機械翻訳は一語一句を正確に訳す点では優れていますが、直訳になりやすく、日本語としての自然さや読みやすさに欠けることがあります。さらに、日本語特有のあいまいな表現を適切に残すことも苦手です。

効率化が進む中で、人間が介在する価値や責任とは具体的にどのようなものでしょうか?

AIを利用する際は、提示された情報をそのまま鵜呑みにせず、自分で調べて正しいか裏付けを取り、最終的な品質に責任を持つことが人間の役割です。

翻訳の授業では、入学当初はAIの使用が禁止されていました。まずは自分自身の力で一から翻訳するスキルを身につけるためです。AIが生成した訳文は一見正しく見えても、日本語として不自然だったり、同じ語彙が繰り返されたりすることがあり、こうした不自然さに気づくには、自分の翻訳力を養っておくことが欠かせません。AIは翻訳の「第一工程」である原文の全訳を一瞬で行ってくれますが、それを自然で読みやすい最終形に仕上げる、つまり機械翻訳の内容を修正するのは人間の役割です。人間が責任を持って仕上げる力を持ってこそ、AIを効果的に活用できるのだと思います。

AI時代において、翻訳者が最も磨くべき資質は何でしょうか?

今後AIが進化していくのは確実ですが、AIは脅威ではなく、翻訳・通訳の効率をどう高め、どう活用するかが重要です。AIはシンプルな文章ならほぼ完璧に翻訳できますが、複雑な文や専門性の高い内容はまだ不十分です。だからこそ、人間にはAIでは対応できない領域の深い専門知識が求められます。それに注目し、自分がどの分野で強みを築くかが今後の鍵になると感じています。

8. プロの現場で必須となる「翻訳支援ツール(CATツール)」

授業の中で、特に今後の実務に役立つと感じた科目はありましたか?

今後のキャリアに最も役立つと感じた科目は、「TRAN8071 Technology for Translating and Interpreting」です。この科目では、主に翻訳作業を行う際に使用する翻訳支援ツール(CATツール)について学ぶことができます。

これらのツールは翻訳の効率化に大きく貢献するもので、特に特徴的なのが「翻訳メモリー(Translation Memory)」です。自分が翻訳した文がデータベースに保存され、次に似た文を翻訳する際に自動的に提示される機能で、これにより過去の訳と整合性を保ちながら効率よく翻訳を進めることができます。

実際に翻訳の仕事に応募すると、CATツールが使用できるかどうかを質問されることは非常に多いです。この授業では2種類のツールを実際に使用したため、履歴書や職務経歴書に“使用経験あり”と明記できる点は大きな強みになると感じています。プロの翻訳者として働くうえでCATツールの活用は欠かせないため、この科目でしっかりと使い方を習得しておくことを強くおすすめします。

オペラハウスでの同時通訳と、フリーランスとしての第一歩

同時通訳のイベント時の本番中

在学中の大きな挑戦である「同時通訳」の経験や、フリーランスとしての活動についてお聞かせください。

在学中に最も大きな経験となったのは、オペラハウスで行われた日本人講演者の方の講演で、同時通訳を担当したことです。この貴重な機会は、大学院で最もお世話になった日本人講師の先生から紹介していただいたものでした。最初は自信が持てずかなり迷いましたが、いつも切磋琢磨し合っていたクラスメイトと一緒なら挑戦してみようと思い、思い切って引き受けることにしました。

プロの通訳2名と、私と同じコースを受けている学生2名の計4名での担当で、同時通訳はとても高度なスキルが必要なため通常10分間交代のところを、経験のため5分間交代という条件でチャレンジさせてもらいました。事前に講演の内容や資料はシェアされミーティングもしていましたが、当日の講演ではスピーカーの方の熱量も上がり本番はかなり大変でした。

実際のパフォーマンスは十分とは言えず自分の未熟さを痛感しましたが、現場でプロとして活躍されているお二人の通訳者の方が見事に内容を落とすことなく驚くほどスムーズに通訳されていて、その技術の高さに深く感銘を受けました。悔しさを感じた一方で、「もっと上手に通訳できるようになったら、絶対にこの仕事は楽しい」と強く感じました。又とない状況で通訳者デビューができたことは、今後の学びと成長に大きな影響を与えた、二度と得られない大きな財産となりました。

また、「1つでも案件をスタートすればそこからキャリアが始まるので、できる限り早めのスタートが良い」という教授からのアドバイスに背中を押され、在学中のわずかな隙間時間を見つけては、LinkedInなどでフリーランスの翻訳案件にも応募をしていました。経験2年以上を採用条件にしているところが多いのですが、大学院で2年学んでいることをそれ相当と見なしてくれるケースもあります。大学院卒業前、11月にトライアルを受けていたところに合格することができ、1月上旬からは、サステイナブルや森林破壊をテーマにした翻訳の仕事をスタートさせています。

JAPAN EXPOにて武道和良久という武道団体の通訳も経験

大学院の課題とアルバイトの両立・時間管理術

アルバイト先のお友達と。経験ゼロでスタートしたバリスタも今では簡単なラテアートもできるように

課題とアルバイトの両立など、日々の時間管理はどのように工夫されていましたか?

大学院の授業は週に3日ほどで、授業がない日はアルバイトを入れていました。課題の締め切りが迫っていない限り、週3〜4日は働いていたと思います。

私は自宅ではまったく勉強ができないタイプで、図書館のような環境に身を置くことで集中力とモチベーションが高まるため、常に大学の図書館を利用していました。授業が午後からの日は朝10時には図書館に向かい、授業後もそのまま図書館へ。アルバイトはほとんどが17時に終わるため、仕事が終わった後も大学に直行して課題に取り組んでいました。幸い、家とアルバイト先がどちらも大学の近くだったので、毎日大学へ行く生活は全く苦ではなく、むしろ自然と習慣になっていました。

しかし、ほとんど休みを作らずに過ごしていたため、疲れが溜まりきって何もできない日も少なくありませんでした。先ほどお話ししたように、フリーランスの仕事になんとか挑戦し1件獲得できたものの、全体として見れば時間に全く余裕がなく、在学中にもっと積極的に案件を探す時間を確保できなかったことは、少し反省点だと感じています。
図書館で。常にMacBookとiPadの両方を持ち歩いていました。基本の作業は全てMacBookを使用。授業のパワーポイントはiPadのGoodnotesを使用し、メモも全てGoodnotesにとっていました。

語学力と教養で文化を繋ぐ。人生の財産になった最高の留学生活

最後に、翻訳・通訳分野を目指す方へメッセージをお願いします。

このコースでの学びを通して強く感じたのは、翻訳・通訳とは単に言語を橋渡しするだけの仕事ではないということです。英語力が高いからといって、あるいは日本語のネイティブスピーカーだからといって、翻訳や通訳を完璧にこなせるわけではありません。

通訳者として人と人の間に入るということは、異なる文化同士の交流を支えることを意味しており、それは言語スキルだけで成立するものではありません。日本語だけでなく日本の文化について深く理解すること、そして相手国を含めさまざまな国・地域の文化を理解することが求められます。医療、法律、教育、ビジネスなど、自分の専門分野があったとしても、その枠に留まらず多様な内容に対応できる幅広い知識が必要です。

そのためには、言語への興味だけでなく、文化への好奇心や教養を身につける姿勢、さらに世界情勢に耳を傾け積極的に知識を吸収していく姿勢が欠かせないと感じました。そして何より、「言語の橋渡しをしたい」という思いがあれば、このコースを通して多くのスキルを確実に習得できるはずです。

毎日図書館に通い、遅くまで勉強した時間は、今では大切な思い出であり、人生の財産になりました。大変ではありましたが、恐らく最後であろう学生生活を最高に充実させることができました。

スタッフからのコメント

留学前から「英語のプロになる」という強い意志をお持ちでしたが、マッコーリー大学院での厳しい洗礼や1万字の論文執筆を乗り越えての大学院ご卒業、本当におめでとうございます!
先日、無事に卒業生ビザも発給されたとのことで、オーストラリアでの生活はまだまだ続きますね。在学中からスタートさせたフリーランス翻訳のお仕事も含め、これからオーストラリアの地で「人間にしかできない翻訳・通訳」のプロとして道を切り拓いていくSayaさんを、これからもずっと応援しています!
Sayaさん、貴重なお話をシェアしていただき本当にありがとうございました。
豪政府認定留学カウンセラーPIER資格保持
(QEAC登録番号G175)
シドニー滞在歴15年を経て、現在東京オフィスで留学コンサルタントとして 皆さんのオーストラリア留学実現へ向けてサポートしています! 現地での滞在・進学経験を踏まえて、皆さんのご留学へむけての不安を解消して安心して出発の日を迎えられるよう、アドバイスしています。 まずはお気軽にご相談下さい! このカウンセラーに質問する

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