Takumaさんの留学プラン 2023年3月 高専(高等専門学校)卒業
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2023年7月 UTSカレッジ進学準備英語コース(20週間)
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2024年2月 UTSカレッジDiploma of IT入学(1年間)
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2025年2月 シドニー工科大学(UTS)Bachelor of IT 2年次へ編入
日本の「高専」から、海外大学進学にチャレンジした理由を教えてください。
一言で言えば、日本での「高専卒」という学歴に対する評価が、実際に持っているスキルに対して低すぎると感じたからです。 高専では非常に高度な技術を習得しますが、日本の就職市場では「短大卒相当」として扱われ、給与面でも将来のキャリアパスでも、大卒者に比べて最初から選択肢が狭められてしまうのが現実です。
僕の父も同じ高専から大学に編入したエンジニアなので、この「もったいない状況」をよく理解していました。父は自身の経験から、「学部レベルであれば高専での知識は問題なく通じる。海外大学に挑戦してはどうか」と提案してくれました。 父という業界の先輩からその言葉をもらったことが、僕が海外へ目を向ける大きなきっかけになりました。
数ある海外大学の中で、なぜシドニー工科大学(UTS)を選んだのですか?

大学選びにおいて、父と一緒に世界中の大学を徹底的にリサーチし、特に関心のあったAI(人工知能)分野でどの大学が高い評価を得ているかを調べました。
その際、客観的な指標として
U.S. Newsのランキング(Best Global Universities for Artificial Intelligence)などを参考にしました。そこで
シドニー工科大学(UTS)がAI分野で世界トップクラスの評価を得ていることを知り、「ここなら、自分が極めたい最先端のITスキルを、世界レベルの環境で身につけられる」と思い、UTS進学の決定打になりました。
お父様とは、進学について具体的にどのような話し合いをされたのですか?
父は留学において基本的な立場は僕の「応援団、サポーター」です。国内での進学、就職、海外留学それぞれの選択肢における「将来の予想図」を二人で考え、最終的には僕が自分の意志で選択をしました。
議論のほとんどは、僕の「覚悟」を確かめるものでした。 父からは「海外大に行くと、日本の通常のルート(高専から大学本科に三年次編入や高校から大学入学)より年齢的に2年のビハインド(遅れ)があるが、それでも行くのか」と問われました。年功序列の風土が残る日本では、この2年の差が自分の思っているより大きく、働く場所によってはつらい環境になる可能性もあります。こうしたリスクもすべて想定した上で、準備を進めました。
また、父は家計状況をすべて開示し、援助費用について家族としての「契約」のような約束をしました。学費などの大きな基盤はサポートしてもらい、現地での生活費は学業と両立して賄うという条件です。 父が僕の可能性を信じて、これだけの大きなチャンスを託してくれている。その想いに応えなければならないという「責任感」は、途中で投げ出したり諦めたりするといった選択肢を、僕の中から完全に消してくれました。とはいっても、緊急で問題あった際の金銭的援助はしてくれていますが、この責任感が、「現地に行ったらやるしかない」という今の強い覚悟に繋がっています。
周りの同級生の多くが国内での進路を選ぶ中、不安はありましたか?

不安は確かにありました。同級生の多くが国内での就職や編入を選ぶ中で、自分だけが全く違う道へ進むわけですから。
僕の場合、その不安への対処法はシンプルで、「納得がいくまでひたすら情報収集をすること」でした。今の時代、インターネットを使えばかなりのことが調べられます。まずは徹底的にリサーチして、明確な不安要素を一つずつ潰していきました。
それでも、ネットの情報だけでは感じ取れない部分があります。そこは実際に渡航前に現地を訪れて「下見」をしました。「現地の物価はどうなのか」「街の雰囲気は自分に合うか」を自分の肌で確認してイメージを固めたんです。
もちろん、どれだけ入念に準備をしても、最後まで「漠然とした不安」はゼロにはなりません。でも、「ここまで調べて、自分の目で見て準備した。あとは現地でベストを出すだけだ」と思えたことで、最後は良い意味で開き直ることができました。現地に行ったら、もうやるしかないので(笑)。
渡航準備で、特に伝えたい具体的なアドバイスは?
大きく分けて、「英語」「経験」「持ち物」の3つがあります。
英語:
自分の伝えたいニュアンスが少しズレるだけで、相手から返ってくる回答の精度が劇的に落ちます。ありきたりですが、日本で基礎的な英語力を固めておくに越したことはありません。
アルバイト経験:
オーストラリアの仕事探しは想像以上に激戦です。雇う側からすれば、制限のある学生よりフルタイムで働けるワーキングホリデーの人を優先するのは当然。僕自身、何十枚もレジュメ(履歴書)を配り歩いても連絡が来ず、精神的にかなり削られました(笑)。少しでも採用率を高めるために、日本で接客業などの経験を積み、「即戦力」であることをアピールできる準備をしておくと良いと思います。
持ち物:
プラグ変換器(タイプO)は「大きくて頑丈なもの」を用意してください。理系学生はノートPCを多用するため、コンセントへの抜き差しが頻繁です。移動先で紛失しやすい小さなものより、存在感があって壊れにくいしっかりしたプラグの方が、最終的にストレスなく学業に集中できます。
英語コースがスタートした最初の1ヶ月はどのような感じでしたか?
英語コースでの授業の一コマ
本当にしんどかったですね……笑。 実生活の英語コミュニケーションは想像を絶するレベルで、常に焦りを抱えて生活していました。授業に食らいつき、家に帰って勉強。ホームステイのオーナーとはコミュニケーションも難しく、友達もなかなかできず「自分は何をしてるんだろう」と考える日々でした。
自信を失い、危機感に襲われている中で担任の先生に相談したこともあります。そして英語コースの小テストで予想よりも低い点数だったものの、クラス全体の点数分布も公開され、自分が成績上位4名に入っていることを知りました。英語力を客観的に知ったことで焦りが消え、ようやく自信を持って更に勉学に励めるようになりました。
Diplomaコースで直面した「価値観の違う学生」との向き合い方は?
一番の壁は、発表形式のグループ課題でした。 海外の学生は非常に多様で、中には「及第点さえ取れればいい」という、モチベーションの低いパートナーと組むこともあります。授業に来ない、割り振ったタスクをこなさない……そんな状況でいかにクオリティを担保するか、本当に苦労しました。
そのような時、チューター(科目の責任者)に状況を冷静に説明し、自分への評価に悪影響が出ないよう線引きをしてもらう。また、グループ課題以外で点数を稼ぎ、他人の行動という「不確定要素」が自分の成績を左右しないよう注力して乗り越えました。
大学のコースBachelor of ITでは、専攻をどのように選んだのですか?
主専攻を「データアナリティクス」、副専攻を「サイバーセキュリティ」に設定しました。
主専攻は、高専時代に深層学習(AI)の研究をしていた延長線上で、膨大なデータを可視化・分析し、AIを実務で使いこなすための本質的なスキルを深めるためです。 一方で、副専攻にサイバーセキュリティを選んだのは非常に現実的な判断です。AI分野の研究職には修士(マスター)がほぼ必須ですが、学士(バチェラー)レベルでも実務に直結し、将来的に社会基盤として需要が絶対に尽きない分野を考えた時、サイバーセキュリティは最強の武器になると考えました。
UTSでの学びは日本の教育とどう違いましたか?
日本で一般的な講義ベースの形態とは異なり、実践的な演習やケースワークが中心です。
特に面白かったのは全く異なる専攻やバックグラウンドの学生と組む「マルチ・ディシプリナリー(多角的分野)」のチームプロジェクトです。
例えば、Microsoft社がサポートに入った「AIをどのように社会に導入・活用していくべきか」という壮大なテーマのプロジェクトがありました。僕のチームは5人編成でしたが、そこでローカルの学生が提案してきたのが、「コロナ禍を経たオーストラリアでの、看護師の燃え尽き症候群」という問題でした。
IT専攻の僕一人や、留学生だけのチームでは、オーストラリア国内のそうしたニッチな社会課題にまで視野を広げることはまず不可能です。
一見、AIとは無関係に思える社会問題に対して、「テクノロジーをどうナビゲートすれば解決の糸口が見えるか」を、異なる専門性を持つメンバーと議論する。「自分にない視点を持つローカル学生と組むことで、テクノロジーが真に必要とされている現場が見えてくる」という体験は、海外大学ならではの、非常に刺激的な体験でした。
大学の科目で一番面白かった科目について教えてください
大学のレクチャールーム
「32513 Advanced Data Analytics, Machine Learning(高度データ分析・機械学習)」という科目です。 情報を抽出するための巧妙なアルゴリズムを、理論と応用の両面から学ぶ科目です。セメスターの後半には、自分でテーマを決めて実際のデータ分析や機械学習モデルを作成し、発表を行います。
僕は高専時代に画像認識をやった経験があったので、それに近いテーマで課題に取り組みました。難しかった点としては、多様なアルゴリズムの理解です。やはり専門用語が多くすべて英語なので、結構理解するのに時間を要しましたが根気強く食らいつきました。実際の企業が行うデータ分析の概要を学習できるこの科目は、将来データアナリストを目指す僕にとって、大きな足掛かりになったと感じています。
多国籍なチームで意見が割れた際、どうやってリードしましたか?

グループワークで大切だと考えているのは「いかに納得感を保持したまま方向性を定めるか」です。その中では意見のぶつかり合いが主な障壁となります。強引に方向を決めても納得感が担保されず、チーム全体がバラバラになってしまうことがあります。こういった状況を回避するために「全員平等に意見を展開し、メンバー全体で公平な項目で評価をする」という手法を取りました。
例えば、「ITで学食の混雑を解決せよ」という課題に対し、次のような2つの案が出たと想定してください。
案A:カメラやセンサーを使って、食堂の混み具合をリアルタイムで確認できるアプリ
案B:スマホで事前に注文と会計を済ませ、並ばずに受け取れるオーダーシステム
どちらも魅力的ですが、最善の案を絞り込むために、次のようなプロセスで進めました。
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評価項目(ものさし)を決める
「コスト(実装のしやすさ)」「将来性(長く使われるか)」「発展性(他の大学にも広がるか)」など、全員が納得する基準を1〜5点で設定します。
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プレゼンと採点
各自が調べた内容を発表し、メンバー全員ですべての案を採点します。
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決定
平均値が最も高かった案をメインの軸にします。
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統合
選ばれなかった案からも活用できる要素を拾い上げ、メインの案に組み込んでいきます。
このステップを踏むことで、全員のアイデアを拾い上げ、納得感を持ったままプロジェクトを進めることができました。
1日のタイムスケジュールと、リフレッシュ(オン・オフ)の切り替え方は?
大学の時間割
タイムスケジュールの優先順位は「大学講義 > バイト > 自習 > 休憩」です。
生活費は父との約束もあり、「学業との両立」を絶対条件として、Uber Eatsでのアルバイトで大部分を賄っています。 11時〜14時、17時〜20時のピークタイムに集中して働き、それ以外の時間を自習や講義に充てるというサイクルです。テスト前などはこの優先順位を入れ替え、Uberのメリットである「フレキシブルな調整」をフル活用して、学業を最優先にできる環境を自分で作っています。
また、優先順位の最後にある「休憩」ですが、僕の一番のリフレッシュ方法は、家で友達とゲームをしたり、愛車のバイクを走らせたりすることです。特別な遠出をせずとも、こうした日常の時間を大切にしています。
一人暮らしで困らないための、「お金の管理術」を教えてください。

お金の管理法については高専時代から培ってきたものです。
一番大切にしていることは「固定費を明らかにすること」。
オーストラリアの生活では、特に家賃と食費ですね。毎週何ドルまで食費に使うかの基準を定め、その計画通りに生活しています。余った分は貯蓄に回し、緊急時の対応などに充てられるようにしています。
特別な裏技があるわけではなく、決めたルールを淡々と守るようにしています。
Notionや生成AIなどのツールは、どのように活用していますか?
学習面でも
Notionで独自のデータベースを作成しています。例えば英語の語彙は、単に記録するだけでなく、「単語・意味・カテゴリー(口語・学術的など)・例文」をテーブル化し、チェックボックスで定着度を管理しています。
最近はGeminiなどの生成AIも活用していますが、大切なのは「答えを出すため」ではなく、自分の考えをブラッシュアップするための補助として使うことだと考えています。使い道によっては毒にもなり得るので、AIに依存せず、自分が主導権を握る正しい距離感を保つようにしています。
次回:Takumaさんの就職活動編
いかにして自身のキャリアへと繋がったのか。独自の分析と徹底した事前準備で挑んだ、就職活動のプロセスに迫ります。