【体験談】シドニー工科大学で磨いた「空間」デザインの感性と築いたキャリアの土台

村島涼音さん | シドニー | University of Technology Sydney | Architecture | 3年3か月
漠然とした憧れから始まったオーストラリア留学。シドニー工科大学(UTS)で興味を抱いていた建築・インテリア分野の学びを通じて、将来「人の暮らしに寄り添う空間」をデザインする夢を見つけたSuzuneさんの体験談です。

心から「挑戦して良かった」3年間を振り返って


長かったようで短かった3年間でした。多くの方々との出会いがあり、その支えがあったからこそ、無事に卒業を迎えることができたのだと、今は感謝の気持ちでいっぱいです。
旅行でさえ訪れたことのなかったオーストラリアに、ひとりで飛び込むのは大きな挑戦でした。すべてが初めてで、不安も大きかった中、大学が始まるまでの入学手続きや空港からの移動、生活に至るまで、大越さんに本当にたくさん助けていただきました。右も左も分からない中で、現地での暮らしの土台を整えることができたのは、大越さんのあたたかなサポートがあったからだと心から感じています。
1年目は、言葉も文化も異なる環境の中で、毎日が手探りでした。日本の大学とは異なる授業の進め方に戸惑い、慣れるまでは苦労の連続でした。
2年目になると少しずつ友人ができ、人とのつながりが広がるにつれて、大学生活にも余裕が出てきました。新しいことに挑戦する機会も増え、学ぶことの楽しさを実感できるようになっていきました。
3年目は、卒業設計に匹敵するような大きな課題が続き、毎日が目まぐるしく過ぎていきました。気がつけば卒業はすぐそこにあり、あっという間に最後の瞬間を迎えたような感覚です。
思い返せば、この3年間は多くの方に支えられて成り立っていた日々でした。困難も多かったけれど、それ以上に得られたものが大きく、心から「挑戦して良かった」と思える留学経験となりました。

オーストラリア留学、シドニー工科大学(UTS)を選んだ理由


高校生の頃から、「いつか海外で学んでみたい」という漠然とした憧れがありました。具体的に進学を意識するようになったのは、高校の友人がオーストラリア留学を目指していたことがきっかけです。その友人からオーストラリア留学センターを紹介してもらい、そこから本格的に情報収集を始めました。
いくつかの国を比較検討する中で、オーストラリアは治安が良く、大学までの進学ルートが明確で、学費も他国に比べて比較的リーズナブルだった点に魅力を感じました。
最終的にはカナダとオーストラリアで迷いましたが、希望していた建築・インテリア系のコース内容を各大学で比較した結果、より実践的で柔軟性のあるプログラムを提供しているシドニー工科大学(UTS)に強く惹かれ、進学を決意しました。



留学準備で大変だったこと、やっておいて良かったこと

やっておけば良かったと感じたのは、日本での運転免許の取得です。オーストラリアでは遠出や郊外への移動に車が必要な場面が多く、特に大学の課題で車で5時間ほどかかる現地集合の訪問があったときは、免許がないと自力では行けませんでした。たまたまペアの学生に乗せてもらえましたが、免許があればもっと自由に動けたと思います。

インテリア建築のコースに決めた理由は?

最初はArchitecture(建築)と迷っていましたが、コースの内容を比較し、自分の興味にぴったり合うテーマがInterior Architectureのほうに多いと感じたので選びました。自分が本当に関心を持っていることをノートに書き出してみると、自分の気持ちに気づけて、後悔のない選択ができると思います。

建築、インテリア建築、インテリアデザインの違い

ここで、よく聞かれる建築、インテリア建築、インテリアデザインの違いについて少し説明しますね。

建築は、建物の構造や間取り、骨組み、外観など、建物全体を設計する分野です。これには、部屋の配置や壁の位置、窓やドアの大きさなど、空間の土台となる部分すべてが含まれます。

インテリア建築は、その建築家がつくった箱(建物)の中身、つまり私たちが実際に過ごす空間の機能や形そのものをデザインする分野です。壁を壊してリビングを広くしたり、光の入り方を考えた階段をデザインしたりするなど、構造的な要素を含んだ内部空間の設計を行います。リノベーションもこの分野に含まれます。

インテリアデザインは、すでに完成している空間を活かして、家具や照明、カーテン、装飾などを配置し、より魅力的な雰囲気を演出することを目的としています。リノベーションのように構造を変えることは通常含まれません。

私が学んだInterior Architecture(インテリア建築)のコースでは、ほとんどの課題がプレゼンテーション形式で、CADやAdobeの編集ソフトを使いながら、リノベーションや住宅、コミュニティセンター、舞台美術など、多様なデザインを実践的に学べたのが印象的です 。



印象深かった科目について教えて

86005 Design Studio: Inhabitations

この授業では、シドニーのハーバーサイドにある歴史的建造物「エリザベス・ベイ・ハウス」のリノベーションに取り組みました。この邸宅は、19世紀に植民地時代の政務官のために建てられ、「最高の邸宅」と称されたものです。そのリノベーションを通して、クライアントの要望に沿った空間提案を行いました。
まずは現地調査を行い、建物の構成や状態を丁寧に読み解きながら、既存の図面への理解を深めました 。さらに、実際にクライアントへインタビューを行い、空間に対する要望や背景を聞き取ることにも取り組みました 。その上で、オリジナルの平面図を自分たちで描き直し、提案につなげるプロセスを経験しました 。現実のプロジェクトに近い流れで設計を学ぶことができ、観察力や聞く力、図面を通じて思いを形にする力が身についたと感じています。

86529 Design Studio: Scenographic Spaces

舞台セットのデザインに取り組みました。劇場見学や公演鑑賞を通して、舞台空間の構造や演出を体感的に学びました。ストップモーションアニメや映像編集を使った課題では、空間を物語として伝える力や、視覚的に表現するスキルが養われました。それまで「舞台デザイン」という発想がなかった自分にとっては、空間の新しい使い方や表現方法を学ぶ貴重な経験であり、将来の進路についても視野が広がるきっかけになりました。

86533 Design Studio: Spatial Agency

車で片道5時間かかるNroomaという地域を訪れ、先住民の方々へのインタビューを通じて、地域や文化に根ざしたデザインを学びました。一週間の滞在中には、限られた環境の中で手描きの図面を作成し、現地の住民に向けてプレゼンを行いました。ありがたいことに、私たちの提案は高く評価され、相手の声に耳を傾け、その価値観に寄り添う姿勢がいかにデザインの質を高めるかを、実感をもって学ぶことができました。地理・文化的な調査も通して、文脈を理解しながら空間を考える力が深まりました。

86221 Communication and Construction: Interior Technologies

ホテルのロビーと受付の空間デザインに取り組みました。最終課題は雑誌掲載を想定し、ビジュアル表現に特に力を入れました。模型や3Dモデリングのレンダリングでは、自分たちが読者に感じてほしい雰囲気や空間のイメージをどう伝えるかを工夫しました。どの角度から撮影するか、どのようなライティングで写真を撮るかなど、見せ方にこだわり、空間の魅力を最大限に引き出す方法を学びました。空間デザインだけでなく、デザインを伝えるプレゼンテーション力も大きく磨かれた授業でした。



留学生活と学業の両立について、大学生活のリアル

特に一つの科目が際立って大変だったというより、全体的に課題の量や内容がハードでした。クラスは20人に対してチューターが1人つく体制で、そのチューターがクライアントのような存在だったため、好みに合わせてデザインを調整するのが難しく、修正を重ねることも多くありました。
中でも一年目後期の課題では、新しい図面を一人で引く必要があり、気づけば朝になっているほど時間がかかりました。フィードバックをもとに何度も試作を繰り返し乗り越えました。また、限られた授業時間の中で、ツールの使い方を自力で習得する必要もあり、YouTubeなどで学びながら表現力や問題解決力を磨いていきました。

グループやペアでの課題では、できるだけ対面で集まり、意見を出し合って進めていました。役割分担やお互いの得意・不得意を活かすことで効率よく作業でき、質の高い成果につながったと思います。

1日のおおよそのスケジュールはどんな感じ?

午前中に授業がある日は、こんな1日を過ごしていました。

  • 9時〜10時:講義
  • 10時〜13時:チュートリアル
  • 13時〜16時:課題(グループ)
  • 16時〜19時:アルバイト
  • 19時〜22時(明け方になることも):課題(学校の図書館)

午後に授業がある日は、少し余裕ができます。
午前中にタスクを終わらせて、授業に備えることが多かったです。

  • 午前中:バイト、課題、または遊び
  • 14時〜17時:studio
  • 17時〜22時:課題(学校の図書館)

この3年間でさまざまなアルバイトを経験しました。例えば、1年目の長期休暇中に履歴書を配って仕事を探し、午前はパン屋、午後はジャパニーズレストランで掛け持ちしていました。学校が始まってからは、午前中に働き、午後は授業や課題に取り組むなど時間を調整していました。
課題に時間がかかるため週に何十時間も働くのは難しかったですが、短い時間でも働くことで気分転換になり、学業と両立させることができました。



シドニー生活のヒント

TripViewLitewというオーストラリア版乗換案内は交通機関を使う上でとても便利です。
そしてアルバイトの賄いをいただいたり、作り置きをすることで食費節約のやりくりをしました。

シドニーでおすすめの場所は、ずばり美術館です!
ほとんどが基本無料で入れるので、建築を学んでいる私にとって、気軽に芸術作品に触れられるのは本当にありがたかったです。さらに、少し歩くだけで自然が豊かな場所にも行けるので、勉強の合間の息抜きにぴったりだと感じています。

特に印象に残るエピソードについて教えてください

私にとって留学中で最も印象に残っているのは、住んでいた家が突然火事になったことです。最終課題の提出まで1週間を切った頃、大学で夜まで友人と勉強していた帰りに携帯を見ると、何人もの友人から「家が火事になっている」と写真付きで連絡が来ていました。私の家はシドニーのセントラル駅のすぐ近くにあり、火災の規模も大きかったため、テレビでも中継されていたほどでした。その日、私は突然住まいを失いました。

幸い、勉強していた友人がその夜泊めてくれ、手元にパソコンと充電器があったため、明日からの生活と課題の進行への不安からのストレスがあったものの、課題が続けられることに少し安堵しました。最終課題は成績の40%を占め、留学生にとって単位を落とすのは経済的にもビザの面でも大きなリスクだったからです。
翌日すぐにチューターに相談し、提出期限の延長、そして大学の宿泊部門に相談して、大学寮への一時入居をアレンジしてもらえました。当初はパスポートやお金、眼鏡すらなく、視界もぼやけたまま課題を進めていましたが、後日15分間だけ建物に入れる許可が出て、最低限の荷物を持ち出すことができました。
困難な状況でしたが、先生方や友人たちの支えのおかげで乗り越えることができ、人の温かさと自分の適応力の大切さを実感した経験でした。

留学を経て変わったこと


私はもともとシャイで初対面の人と話すのが苦手でしたが、留学を通して「挑戦する精神」と「行動力」が身についたと感じています。具体的には、UTS Peer Networkという大学のオープンキャンパスで新入生を歓迎するボランティアに応募しました。最初の面接では落ちてしまいましたが、諦めずに2回目のチャンスに挑戦し、無事合格することができました。
ボランティア活動では、初めて会う人とコミュニケーションを取ったり、チームで協力して新入生を迎えたりする経験を積みました。これがとても大きな挑戦であり、その結果、多くの友達ができ、人間関係のつながりも広がりました。
こうした経験から、自分の行動力や挑戦心が成長したと強く実感しています。

今後はどのようなキャリアを考えていらっしゃますか?

卒業後は、建築の分野で、特に人の暮らしに関わる空間づくりに携わりたいと考えています。それが住宅であったり、公共施設、美術館といった文化的な場所であったりと、関わる場所は様々だと思いますが、どの空間においても、人の営みに寄り添うデザインを目指していきたいです。
大学では、空間構成や建築的な視点だけでなく、ユーザー目線での快適性や使いやすさを重視したデザインを学んできました。今後はさらに、様々な実践経験を積み重ねながら、自分に合った専門分野を見つけていきたいと考えています。
将来的には、「クライアントの日常に寄り添う空間」をつくることが私の目標です。

UTSを目指す高校生たちへアドバイスをお願いします


「小さくてもいいから、まず一歩踏み出してみてみる」
明確なビジョンがなくて不安になったり、やりたいことがあっても自信が持てずに一歩踏み出せなかったり、どちらの気持ちもすごくよくわかります。両者不安ごとは尽きないと思うけれど、そういう時期があって当然だと思います。大事なのは、その不安や迷いの中で立ち止まるのではなく、自分なりにどう向き合ってみるかということだと思います。ぶつかった壁にどうアプローチするかで、これからの道が少しずつ形作られていきます。そして、その道に「不正解」はありません。なので、自分なりにその壁にぶつかってみてください。その経験があなたのしたいことを教えてくれる時もあります。自分なりに悩んで、考えて、進んでいけば、それがあなたにとっての唯一無二の道になっていきます。私自身、最初から「絶対オーストラリアに留学したい!」という強い思いがあったわけではありません。ただ、建築や空間デザインに興味があって、オーストラリア留学センターに相談してみたことが、私の一歩目でした。日本の大学と比べてしまい、「この選択でよかったのかな…」と悩むこともありました。でも、挑戦してみたからこそ気づけたこと、出会えた人、得られた経験がたくさんあります。今は、あの時の小さな一歩があったからここにいると自信を持って言えます。
あなたも、ぜひ自分なりのペースで「最初の一歩」を踏み出してみてください。

スタッフからのコメント

Suzuneさん、ご卒業おめでとうございます!
卒業式にご招待いただき、Suzuneさんの大切な瞬間にご一緒できたこと、私も心から嬉しく思っています。
インテリア建築で学んだことを活かし、これからのSuzuneさんのご活躍を、シドニーからずっと応援していますね。
豪政府認定留学カウンセラーPIER資格保持
(QEAC登録番号G175)
シドニー滞在歴15年を経て、現在東京オフィスで留学コンサルタントとして 皆さんのオーストラリア留学実現へ向けてサポートしています! 現地での滞在・進学経験を踏まえて、皆さんのご留学へむけての不安を解消して安心して出発の日を迎えられるよう、アドバイスしています。 まずはお気軽にご相談下さい! このカウンセラーに質問する

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