【体験談】自分らしく生きるということは? ジェンダー&女性学

山口 優夏さん | 2年
日本の大学を卒業して、フリンダース大学のジェンダー&女性学修士号、Master of Arts - Gender and Woman's Studies に進学をした優夏さん。この数年、ジェンダー学は日本人からもお問い合わせも多くいただきます。

同分野での就学にご興味をお持ちの方は、ぜひ大学院進学の参考にしてください。

ジェンダー&女性学を学びたいと思われた経緯をお聞かせください



大学生の時に受けた「Women’s leadership」という授業をきっかけに女性学・ジェンダー学に興味を持ちました。

私自身、小さいころから「女性らしさ」や「男女の役割」というものに影響を受けてきたため、性別にとらわれず自分らしく誰もが生きていける社会を作りたいと思うようになり、もっと深く学ぼうと大学院進学を決めました。

日本ではまだ男女格差や伝統的なジェンダー規範が社会に影響しているので、新しく革新的なジェンダーについての考えを持っている海外の大学院に絞りました。

留学先をオーストラリアに決めた理由は、ジェンダー・ギャップ指数がほかの英語圏に比べて高かったためです。ジェンダー・ギャップ指数とは特定の分野での男女間の度合いを測るための指数です。指数が高ければ高いほど男女間の格差が小さく、男女平等が進んでいることを表しています。そのため、男女平等が進んでいるオーストラリアで学び、政治的、経済的、社会的にどのようにジェンダーが人々や社会と関わっているのかを学びたいと思いました。


フリンダース大学を志望校にお選びになられた経緯や理由をお聞かせください


オーストラリアを留学先として決めていたころ、オーストラリア留学センターが掲載していた「女性学・ジェンダー学を学べる大学院」というウェブサイトに出会い、そこでフリンダース大学の情報を知りました。

フリンダース大学について調べていくと、まさに私が学びたいと思っていた科目について書かれており、ここなら将来につながる学びが出来ると決心しました。ジェンダーやフェミニズムについての基本的な歴史や概念から、ジェンダーが社会的アイデンティティとどのように交差しあっているのかなど幅広く学べるのもフリンダース大学を選んだ一つの理由です。


ジェンダー学、特に女性学とは?どんなことを学ぶコースですか?


社会における「性別(sex)」の意味や、性別による不平等・差別がどのように生まれ、どう影響しているのかを学びます。

例えば世の中で「男だからこうするべき」「女だからこうしないといけない」という考えがどこから来たのか、どうしてそんなふうに思われるのかを考えます。そして、そういう考えが人々にどんな影響を与えているのかを学びます。また、ジェンダー(社会的性別)だけでなく、それが他の要素(例えば人種、階級、文化や障害)とどう関わっているかを考えます。

具体的にはまず、「女性だからピンクが好き、料理ができる、愛想があって華がある」や「男性だから青が好き、泣かずに強くて頼りがいがある」などのイメージがなぜできたのか、自分らしく生きるということはどういうことなのかを考えます。
また、性別による職場、教育や家庭での差別についても学び、公平で平等にしてくためには社会がどのようにその問題に対応していくべきなのかも勉強します。

ジェンダー学では世界には男女の性別しかいないという二元論を否定し、LGBTIQA+(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス、クィア、アセクシャル)のコミュニティについて学び、差別や偏見を減らし多様性な生き方を誰もができるよう異性愛者中心の社会に疑問を投げかけます。


大学院で1年目を修了されました。特に面白かった科目やその授業内容を詳しくおしえてください。



特に面白かった科目は「性別、ジェンダー、アイデンティティ」について学んだ授業です。
一学期に履修する必須科目なのでこの授業で女性学・ジェンダー学の基盤を築きます。

まずとても印象的だったのが性別(sex)とジェンダー(gender)の違いについて定義するところです。今までこの世界には男女の二つの性別しか存在しないと考えていたので、性別とジェンダーに違いがあるという理論に驚きました。

私が興味のあるJudith Butlerという哲学者によると性別とは人間が生まれたときに与えられる生物学的なものであり、ジェンダーとは社会的に・文化的に作られ、行為やパフォーマンスを通じて成立するものであると考えられています。そのため女性らしさや男性らしさという社会的イメージを作り出します。

例えば、赤ちゃんが生まれたときに性別が女であると判断された後、性別にあった服装や玩具を与えられ、「女性らしい」話し方や態度に変わっていきます。よって人間は女性や男性を「演じ」、意図的に男性らしい服を着て、女性らしい振る舞いを繰り返すことにより男女という概念を作り出します。

つまりジェンダーが文化や歴史から作られているということは、その概念を崩し新しいアイデンティティやジェンダーの枠組みを作ることが出来るという可能性があるということです。これは性別により今まで差別や制限をしてきた環境を根本から変えることが出来ます。

またもう一つの興味深い科目では、異性愛者中心の社会を批判的にとらえています。今まで性別が違う人を好きになることに疑問をもったことがなく、それは自然に起こるものだと考えていました。

しかし女性学・ジェンダー学では異性愛が正しく、異性愛以外を異常と捉えることを批判し、歴史や文化によって作られたものであると問い直します。私たちの日常生活でも無意識に女性に対して彼氏の有無を聞いたり、男性に対して彼女の有無を聞いたりする人が多いです。しかしそれは全ての人間が異性愛者であり正常なものであると最初から決めつけている証拠になります。そしてそれは女性らしさ男性らしさを助長してしまいます。

あらゆる性やジェンダーが公平に平等に扱われる社会を実現するためには人間が作り上げてきた「あたりまえ」を壊し、そのあたりまえに一人一人が疑問をもって生きていかなければならないと思います。


フリンダース大学の授業スタイルや教授陣についても詳しくおしえてください


留学生は一学期に履修する単位が決まっているので4つのトピックを選びます。
一つのトピックにつきそれぞれ講義とチュートリアルがあります。

講義型の授業ではその週で学ぶ内容について教授から教えられます。コースによって異なりますが、私のコースは人数が比較的少なく大学生とも同じ授業を受けるので約10人から20人のクラス構成になっています。

チュートリアルでは授業で学んだことをもとに生徒でディスカッションを行います。これは大学生と大学院生は別々で受けるため、約6人程度で行います。チュートリアルは週ごとにそれぞれ違う生徒がディスカッションリーダーとして質問を用意し、その質問に答えたり自分の経験を話したります。たとえ全てのチュートリアルに参加したとしても、出席率はどれだけ発言をしたのか、クラスに貢献できたかによるので毎回必ず一回以上は発言するようにしていました。

教授は女性学・ジェンダー学についての豊富な経験と知識を持っている方々で、とても柔軟な発想とアイデアに毎回驚きました。

また自分らしく生きる社会を実現するために様々なことに情熱をもって取り組み、アデレードで行われる中絶に対する女性の権利についての会議でプレゼンターを務めたりなどしていました。


1年目の大学院では、普段どのくらい勉強していましたか?授業でわからないことがあったらどうしてますか?


毎日次の授業に関するリーディングの課題があるので、一週間で100ページほどの英語のテキストを読んでいました。内容がとても難しく、単語の意味を調べながら注意深く読んでいたので一日に4、5時間はリーディングに時間をとっていました。

特にディスカッションリーダーの時はリーディングをもとに質問を考えたり、自分が感じた重要な内容を発表したりするために他の調べ物もしたので6時間以上は課題に費やしていました。学ぶ中でわからないことがあった場合は授業終わりやチュートリアル中に教授やクラスメイトに質問をしたり、教授に時間を取ってもらい一対一で分からないところをもう一度学んだりしていました。


大学のクラスメートから影響を受けたり、身が成長したなと感じるところ(変わったところ)はありますか?


クラスメイトは私以外働いた経験があり、様々なバックグラウンドの方々がいました。

政府で働いていたり、NGOやNPO、国連で働いたことのある人などジェンダー平等に向けて情熱と探求心を持った素晴らしい友人たちと授業を受けています。

そのクラスメートと一緒に学ぶ中でとても驚いたことはそれぞれ自分の国の状況を深く知っているということです。チュートリアルの中で自分の国のジェンダー平等に関する政策や団体などの情報を発言する場があるのですが、私はインターネットで調べたことを発表するだけで精一杯でしたが、クラスメイトは追加の情報やバックグラウンドについての情報を知っており、教授の方々が感心するほどでした。

オーストラリアに来る前は図書館で女性学に関する本を読んだのですが、まだまだ情報収集をしておくべきだったと反省しました。

また、興味があることには積極的に行動するということも友人たちから学びました。私の性格上、失敗しないようにしっかりと準備をしてから挑戦するかしないかを判断するのですが、クラスメイトは躊躇せずにイベントなどに参加していました。誘われる度に最初は戸惑いましたが、何もしないで後悔するより挑戦して失敗したほうが経験になると教えてもらい最後は自分から行動するようになりました。

10月にはアデレード市内でPride Month Marchがあり、クラスメイトとLGBTIQA+コミュニティのパレードに参加しました。とても貴重な経験になり、改めてジェンダー平等に向けて活動する人々の熱意を肌で感じることが出来ました。



学生寮での生活や、週末などお休みの日はどのように過ごしていますか?


学生寮に住んでいたのでたくさんの友達が出来ました。同じFlatに住む友人とは市内に遊びに行ったり、パーティーをしたり、ビーチでピクニックをしながら夕日を見たりと充実した日々を過ごしました。

最初は国もバックグラウンドも違う人々と過ごせるのかとても不安でしたが、今では家族のような関係を築くことが出来ました。不安で泣きそうなときやうまくいかないときはFlatの皆に支えてもらっています。

また学生寮では他大学対抗の多くのスポーツ大会が開かれており、私はバレーボールの大会に参加させていただきました。

小学生のころから続けていたスポーツだったので多くの候補者の中から6人の中に選ばれたときはとても嬉しかったです。英語でバレーボールをするのは初めてでしたがたくさんの友達もでき、話したことがなかった方々からプレーについて褒められたときは寮の仲間として認められたような気がしました。チームの中で活躍した選手として2位に選んでいただき、本当に貴重で楽しい思い出を作ることが出来ました。


2025年より大学院2年目が始まります。2年目に向けての豊富をお聞かせください


一年目より発言の質を上げたいと思っています。今まではクラスメイトがたくさん話しているディスカッションに分け入って自分の意見を言うのが難しく、一回以上発言をするだけで精一杯でした。

しかし二年目からは自分の意見に説得力を持たせ、柔軟な発想を取り入れていきたいです。
日本のジェンダーに関するアイデアやポリシーもたくさん調べて、授業で発表できるようにしたと思います。またアデレードでのインターンにも参加し、実際に女性学・ジェンダー学を仕事にするというのはどういうことなのかを経験したいです。授業では理論や歴史、ポリシーなどを学びましたが今度はそれらを実践で使ってみたいと思います。


これから同じコースを目指す大卒や社会人たちへのアドバイス・メッセージを!


女性学・ジェンダー学は自分のことも含めて人間のことを知るので複雑なところもありますが、絶対に学んで後悔しないと思います。フリンダース大学で様々な友人と勉強できるので自分を成長させることにもつながります。

また生活面では日本に住んでいることに毎日感謝するくらい、オーストラリアでの生活は不便で大変なこともありますが、それを楽しんで人間としての厚みが増す経験になると考えを変えていくことが大切だと思います。

そして一人で渡航する中で一番大事なことは友人の存在です。日本にいる友人にはたくさん励まされ、みんなが頑張っているのだから私も負けてられないと何度も勇気をもらいました。
また現地ではたくさんの友人を作ることも大切ですが、一人でも気を許せる友人を作ることが私にとっては必要なことではないかと思います。寮でのFlatのメンバーたちとは将来や勉強のことなどたくさん深い会話をしてきました。そのためオーストラリアでの家族としての存在ができ、つらいことも乗り越えてこられました。困難や楽しいことがこれから待っていますが、皆さんのオーストラリアでの生活が素敵なものになりますよう願っております。
豪政府認定留学カウンセラーPIER資格保持
(QEAC登録番号I009)
オーストラリア歴は24年目になりました。QLD州、NSW州、SA州の主要都市で仕事と生活していましたので、都市の違いから皆さまの目的に沿ったベストなアドバイスを心がけています。 このカウンセラーに質問する

サイトのご利用について

当サイト記載の情報の正確性には万全を期しておりますが、当社はそれらの情報内容に関し、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。また、情報は予告なしに変更となる場合がございますので、随時ご確認ください。

お問い合わせはお気軽に! 平日24時間以内にご返信いたします

無料メール相談

平日24時間以内にご返信いたします

お電話での留学相談はこちら