クイーンズランド工科大学をお選びになられた経緯を教えてください
QUT(Queensland University of Technology)への進学は、
・「ブリスベンという都市に惹かれたこと」
・「ITに強いこと」
・「学費がリーズナブルであること」
の3つ理由から、私はQUT(Queensland University of Technology)を選びました。
まず大学選びの前に、オーストラリアのどの都市に留学するかを考え始めました。留学前にはオーストラリアを訪れたことがなかったのですが、ネットでの検索から “都会すぎず田舎すぎない”“年中温暖な気候”といったブリスベンの特徴に惹かれました。
それからブリスベンにある大学を調べ始め、QUTは学名に”technology”が含まれていることから想像できるとおりIT分野に強く、また他の大学と比べて学費がリーズナブルであることが決め手となりました。

実際に進学してみると、「the university for the real world」と掲げるとおり、アカデミックな理論の勉強だけではなく、ビジネスシチュエーションを想定した実践トレーニングが豊富で、もともとキャリアチェンジを見据えて大学院留学を決めた私にとって、学びたかったことを実際に学べているという実感があります。
Master of Data Analytics 専攻の理由は?

前職ではコンサルティング会社に勤めており、日本企業のさまざまな課題の解決をサポートしていく中で、
ビジネスにおけるデータの持つ力に興味を持ちました。
その興味が大きくなり、データアナリストという職種へのキャリアチェンジを考えるようになったのが専攻の理由です。
今回の留学では英語の習得とデータアナリティクスの専門性を身につけることを目的にこのコースを選択しました。
Data Analytics は企業と従業員、社会や生活、どのような影響や応用が注目されていますか?
まず、Data Analytics とはデータを調査・分析して、トレンドやパターンを特定することや未来予測を行うことで
意思決定に活かすプロセスです。
まずデータを分析する際に統計学・数学の知識が必要不可欠なのですが、QUTのコースではこれらの基礎知識を学ぶ授業が提供されています。また、手計算やエクセルでは高度な分析が難しいため、
プログラミング(Python/R)を使った分析手法を学びます。他にも機械学習、データベース(SQL)、ビジネスに関する授業があります。
先ほど述べたとおり、
QUTはとても実践的な授業が多く、例えば、ある授業では仮想の小売店のデータを使い、データをもとに経営に対する示唆だしを行い、教授陣をCEOに見立ててプレゼンテーションを行うという課題がありました。
データを活用することで、熟練した従業員の経験に基づく勘よりも確実性の高い未来予測およびパターンの特定をすることができます。その活用範囲は幅広く、例えばAmazonやNetfrixのレコメンド機能はデータ活用の代表的な例です。
これらのサービスは世界中の大量のユーザーの購入履歴や閲覧履歴のデータを収集し、個々のユーザーの好みを予測することでパーソナライズされた”おすすめ”を提供しています。
また近年では、特に
医療分野でのデータの活用が期待されており、病気の予測や早期発見、個別に合わせた治療が可能になるかもしれません。
Data analyticsは
多くの業界・領域のコスト削減や競争力向上など、さまざまな可能性を秘めている学問だと言えると思います。
特に面白かった科目やその授業内容を詳しくおしえてください
個人的にもっとも面白かった科目は「
Data Exploration and Mining」です。
この授業ではデータ分析の前処理部分であるデータ探索(Data Exploration)とデータマイニング(Data Mining)を学びました。
まず、データ前処理では自身でデータを理解し、コンピュータが理解できるようにデータを整える必要があります。授業ではデータを理解するための可視化手法やデータの加工方法について学びました。たとえば、病院患者のデータを分析する場合、年齢のカラムに欠損値があるとします。この場合、欠損値を(NA)と記載するか、全体の平均値に置き換えるか、データを削除するかなど、様々な加工方法があります。正解は一概になく、分析の目的や年齢データの重要性を考慮しながら加工方法を選択する必要があり、その手法や考え方について学びました。
また、Data Miningではデータを分析するための手法として、記述分析とよばれる
①アソシエーション分析
②クラスタリング、
そして予測分析とよばれる
③決定木
④ロジスティック回帰
⑤ニューラルネットワーク
の5つの手法を学びました。
データの種類や分析の目的に応じて適切な分析方法が異なります。課題では糖尿病患者のデータを用いて入院の有無を予測する分析をそれぞれの分析手法で行い、その結果や精度を比較しました。
この授業が面白かった点は、5つの分析手法を学び比較することができたこと、そして
Pythonを使って実践的なデータで分析して結果を考察できたことです。
また、データ分析自体は手法が決まればすぐに結果を出せますが、データの理解や加工、適切な分析方法の選定には試行錯誤が伴うことが多く、
データアナリストの仕事が地道な作業の積み重ねであることを実感しました。
修士号の前にEAP英語コースから就学を開始しましたが、受講して良かったですか?
EAPコースを受講して非常に良かったと感じています。毎日4時間ある授業と予習・復習を行い、かなり英語漬けの日々を過ごしていたため、英語力が向上したことはもちろんのこと、その他にも良かった点が3つあります。
(1)まず一つ目に、
アカデミックな英語のレポートの書き方を学べたことです。大学院の授業ではレポートの書き方を知っていることが前提とされていて、その説明はほぼありませんでした。私はアカデミックな文章では一人称の"I"や"We"を使わないなどの基本的なルールすら知らなかったため、EAPを受講しておいて良かったです。
(2)二つ目に、大学(QUT)のシステムの使い方に慣れたことです。
課題の提出方法やルールについて丁寧に説明を受けました。大学院の授業でも簡単に説明はありましたが、とても重要な内容なのでEAPでの丁寧な説明のおかげで大学院でも安心して課題を提出することができました。
(3)最後に、大学院留学では周りの生徒の英語力が非常に高く、教授やクラスメイトの話している内容が理解できないことがよくあります。EAPでも同様で、最初は戸惑いやストレスを感じましたが、3ヶ月経つと”全部理解できなくてもいいや”と割り切れるようになり、その環境に適応できるようになりました。大学院でも私だけが授業や会話を聞き取れない状況は日常茶飯事ですが、それに
めげないメンタルをEAPで培っていたことは精神的に良かったと感じています。
大学院では、普段どのくらい勉強していましたか?授業がわからない!どう解決してますか?
普段は毎日授業が2〜4時間ほどあり、授業の復習や予習などに1〜2時間ほど費やしています。ただ
課題期限前は朝から深夜まで図書館に籠るような生活を送っていて、大体3ヶ月ある一学期のうち合計約3〜4週間は課題に追われてそのような生活だった思います。
また、
教授とチューターには気軽に質問できる環境があるため、授業で分からないことや課題の内容の理解があっているか確認したいときなど、
ほとんど毎週のように質問していました
大学で出会った友達などから影響を受けたり、新しい価値観に触れ、自身が成長したなと感じるところ(変わったところ)はありますか?
大学の友達や授業を通じて「
自信を持つこと」と「
正解はひとつではないこと」を学びました。
海外からのクラスメイトは常に自信にあふれ、間違いを恥じることなく、授業中に積極的に発言します。また、彼らのプレゼンテーションはしゃべり方や態度がとても自信に満ちており、聴衆を引き付けるのが上手く、内容に差がなくても聞いている側ではかなりの印象の差があることに気づきました。
また、授業の中でプログラミングが出来るか尋ねられて該当する人が手を上げる場面があり、私は基本的なことしか知らないため、手を挙げる勇気がなかったのですが、友人からプログラミングの授業を終えているにもかかわらず "なぜ?手を挙げないのか?" と指摘され、できることを自信をもってアピールする必要性に気づきました。
さらに、授業を受けていて日本との違いに気づいたことは、日本の教育では常に正解がひとつでしたが、現在の大学院の授業では、なぜそのような答えに至ったのかを説明し、教授が納得すれば正解とされることがよくあります。
正解が一つではなく、
どのように考えたかが重要であることに最初は驚きました。そのため、全員が模範解答である必要はなく、多様な考え方を尊重し合う環境があり、私も多様な考えに寛容になったと思っています。
大学院以外の生活について。週末などお休みの日はどのように過ごしていますか?

ブリスベンでは、週末にはよく小規模なイベントが開催されているので、それを調べて友達と参加することが多いです。また、おしゃれなバーを開拓したり、ゴールドコーストのビーチに出かけたり、テニスを楽しんだりして休みの日を過ごしています。
修士号で1年目を終えました、2年生の1年を残していますが、大まかに卒業後はどんなキャリアを考えていますか?
まだハッキリとした形ではないですが、卒業後はオーストラリアでデータアナリストの仕事に就職したいと考えています。
その理由は、まず英語での職務経験があるとキャリアの幅がかなり広がると思っているからです。また、働き方がオーストラリアと日本とで異なるところが多いと思うため、実際に働きながら比較してみたいからです。
さらに将来住める国の選択肢を増やすためにも、永住権の取得を漠然と考えています。
最後に、これから大学院留学を目指す社会人たちへのアドバイス・メッセージをお願いします
大学院留学に必要なものは「英語力」「専門知識」「資金」だと感じています。
まず、英語力はもちろん必要なことは皆さん承知だと思いますが、得意・不得意をしっかり見極めて、不得意分野を補ってくることをオススメします。
私の場合は、会話に必要なリスニングとスピーキングに力を入れて準備してくればよかったと思っています。私はリーディングがもっとも得意で留学前もリーディングに頼って英語テストのスコアを伸ばしていましたが、留学開始した直後はリスニングとスピーキングが他の学生よりも劣ることに後悔しました。(もっと頑張ってくれば良かった!)
次に専門知識についてですが、英語でまったく知らないことを学ぶのはハードルが高いため、ある程度知識がある状態で留学したほうが良いと思います。
私の場合は統計学検定や気軽に受けられるオンラインコースでプログラミングやデータアナリティクスの基礎を学んでいたため、授業についていけない・・・と言う事が殆どなく、準備しておいてよかったと思っています。
最後に資金です。私は事前に2年間の学費と生活費を見積もっていましたが、急激な円安とオーストラリアの物価高でかなりの出費が増えてしまいアルバイトをしながらやりくりしている状況です。経済状況は予測するのが難しいですし、急な出費も多くなると思うので、社会人であるからこそ、しっかり
余裕のある資金計画をおすすめします。
留学では大変なことがたくさんありますが、留学しようと思った動機や明確な目標を忘れずにいれば乗り越えられると思いますし、気づいたら友達も増えてとても充実した留学生活になると思います。もし留学に興味があるのであれば、後悔しないよう一歩踏み出されることを応援します!
スタッフからのコメント
修士号1年目を終えた段階で体験談のお願いをしたところ、快諾してくれた麻里亜さん。お話だけを聞くと、データアナリストを目指すだけあって、思慮深く、聡明な印象を受けますが、とても明るく人に優しい印象を与えてくれる方なんですよ。
データアナリストを目指す留学をご検討中の方、麻里亜さんは卒業時にも再び体験談を寄稿してくれるはずなので、1年後の続編もお楽しみに!