日豪両方の視点で学ぶ国際関係学
日本で大学卒業後に海外の大学院へ留学しようと思ったきっかけ、そして留学先としてクイーンズランド大学を選んだ理由をおしえてください
国内より海外の大学院の方がより私が勉強したい学問をより深く学べると思ったからです。大学でもInternational Relationsを専攻していましたが、日本の視点からの学びが多かったので、海外で同じ分野を学ぶことで新たな視点を得ることができると思い海外の大学院を選択しました。
そしてクイーンズランド大学はInternational Relations(国際関係学)とPeace and Conflict Studies(平和と紛争学)どちらも勉強できる、そして2年間で2つの学位が取れるという点が大変魅力的でした。
多角的に学ぶ国際関係と平和構築
Masters of International Relations/Peace and Conflict Studiesコースでは具体的にどんな勉強をしていますか?
外交政策や安全保障などから平和構築、国際協力に関する勉強をしています。ジェンダーや国際経済政策に関する授業も取らなければならないので、様々な角度からIRや平和構築に関する学問を学ぶことができると思います。
また、Electiveのクラス(選択授業)もあるので自身の興味に合わせたクラスをとることも可能です。私は外交政策、安全保障に関する授業を多めに取っています。
実戦形式で学ぶ平和構築/バルト三国の「歌う革命」
特に興味深かった授業を2つおしえてください
1. Peacebuilding
平和構築のセオリーから批判的観点など幅広く行うクラスです。クラスメイトのほとんどが実際に平和構築に携わった経験を持った人達だったので、より実践的な視点からの学びをすることができ大変印象深かったです。
また、シミュレーションという課題があり、個人にそれぞれの役割が与えられた上で実際にクラスの中で停戦・平和条約の締結までの交渉や条約内容の交渉などを行うというものがあり、それを通じていかに平和構築活動が難しいかを身をもって知ることができ大変学びが多かったクラスでした。
2. The Politics of Nonviolence
通常、暴力(軍隊やテロ、暴徒化デモなど)が政治に変化を与えるのに効果的だとされていますが、このクラスではいかに非暴力活動が社会に影響を与えるのに効果的かについて学ぶクラスです。
最後のリサーチエッセイは自分で好きな「暴力を使わずに社会に影響を与えた運動や事象」について議論するというものでした。私は1980年後半から1991年にバルト三国で起きた歌う革命についてリサーチをしたのですが、バルト三国のソ連からの独立のために音楽が大きな影響を与えたということが大変興味深かったです。
暴力的なニュースを見ることが何かと多い昨今ですが、非暴力が持つ価値やその効果性について学ぶことができ、希望を持てたクラスでした。
課題には事前にしっかりプランニングを
授業や課題にはどのように取り組んでいますか?平田さんの勉強法やタイムマネジメントをおしえてください。
授業の準備として毎週100ページ以上のリーディングが各クラスに課されており、それをこなすのがまず大変なので、それぞれの論文の要点1個だけをまとめるという作業を毎回行なっています。私のコースは夕方からの授業が多いので、その日の午前中にリーディングをする、というようにルーティン化していました。
課題についても本当にたくさんあるので、Week1(学期の1週目)から構想を練り始めるなどまだクラスが本格的に始まっていない時点から何かやれることを探して無駄な時間を作らないようにしています。
平日はクラスの準備、復習で忙しいので課題は隙間時間プラス週末をメインにこなすようにしています。スケジュール帳に、この週までにこれを終わらせる、と計画立てをするやり方が個人的には合っています!
良好な国際関係を「個人」から「国家」へ
クイーンズランド大学で出会った人の中で、刺激や影響を受けた方はいますか?
同じクラスを受けている人全員です!このコースを受講している人たちは年齢、職業などもバラバラで様々なバックグラウンドを持っており彼ら彼女らと共に切磋琢磨しながらこの学問を勉強するというのは大変刺激的で毎日学ぶことばかりです。
セメスター中は本当に大変ですが、みんな同じように苦しみながらも励まし合いながら高め合って乗り越えているので、連帯感のようなものも生まれます。
特に、International Relationsにおける研究単位は基本「国家」ですが、国家を動かしているのは結局「個人」だということを考えると、
同じ問題意識を持った友達を世界中に持つことそのものが、国際関係良好化の第一歩であり、財産だと思っています。
さらに、最初のセメスターはオーストラリアの国境が開いていなかったので、日本でオンラインで受けていたのですが、その際にオンライン上でしか会ったことのなかった人達(教授含め)、もしくは声しか聞いたことがなかった人達と直接UQのキャンパスで会えた時は本当に嬉しかったです!パンデミックを乗り越えてオーストラリアでやっと会えたことへの達成感が大きかったので、感動しました。
オーストラリアならではの大自然に触れるブリスベン生活
勉強以外の時間はどのように過ごしていますか?平田さんのブリスベンでの生活についておしえてください。
ブリスベンはちょうど良く、都会っぽさと中心から少し離れると自然がたくさんあるところがとても気に入っています。ゴールドコーストやサンシャインコーストにも行けるので、ビーチも楽しめます!
ブリスベンに限ったことではないと思いますが、空が広いなという印象です。ほぼ毎日のようにとても綺麗な夕焼けが見えるのでオーストラリアに来てから、空の写真ばかり撮っています。
前回のセメスターブレイクはモートン島という沈没船と野生のイルカに餌付けできることで有名なところに行きました。冬に行ったのでウォーターアクティビティには少し寒かったですが、のんびりとしたリゾート地でとても楽しめました!
住まいはブリスベン市内のスチューデントアコモデーション(学生寮)に住んでいます。オーストラリアはもちろん、世界各国から来ている人達が住んでいるので、いろんな国の人と仲良くなれてとても楽しく過ごせています。
「とりあえずやってみる」をテーマに行動
留学してから自身が変わったところ、成長を感じるところはありますか?
留学前よりも何事にも積極的になりました。大学時代はどちらかというと一人の時間を大切にしたいタイプだったのですが、それでは留学生活を思いっきり楽しめないかも!と思ったことと、オーストラリアでの1年半は思ったよりもあっという間だろうなと思っていたので、学業でもプライベートでも「とりあえずやってみる」をテーマに行動しています。
授業内のディスカッションもとりあえず発言することを毎回意識しています。自分では大したことのない意見や質問も意外とそこから発展することがよくあるので、とりあえずシェアしてみることにしています。
プライベートでは、人との繋がりは一期一会だと思っているので、友達に誘われたらとりあえず行ってみることにしています。この意識のおかげでたくさん友達ができました!
多角的に熟考、そして意見を発信する
最後に、これからオーストラリアの大学で国際関係学/平和と紛争学コースを目指す方たちへアドバイスをお願いします。
世界各地で紛争や争いが絶えないことや、外交に限らずとも経済や文化の面でグローバリゼーションがより一層進む中、International RelationsとPeace and Conflict Studies両方の視点を持った柔軟な発想を持つ人材は今後大変重宝されると思っています。
特にこのフィールドは常に新たな出来事が起きるので、ニュース、新聞のチェックは毎日しておくべきです。ただ、ニュースなどを見てなるほどで終わるのではなく、なぜこのようなことが起きるのか、もっと違う考え方ができるのではないか、など批判的にそれらについて熟考する癖をつけておくと良いと思います。
また、英語力はもちろん必要ですが、それ以上に自分の意見を持ちそれをしっかりと発信できることの重要性を常に意識して欲しいです。もしそのトピックについての意見を聞かれたときにまず日本語でいいので発言できるようにしておいた方がいいと思います。この学問は正解がない学問なので、自分の軸をもち様々な出来事について考え続ける、そしてオープンマインドに他者の考え方もうまく取り入れながらその能力を高めていくことが大事だと思っています(私もまだまだ修行中です!)。