ウーロンゴン大学のMaster of Education(TESOL)受講のきっかけ
私は、小学校教員として働いており、実際の教育現場にダイレクトに生かすことができ、今まさに必要とされているものとして、TESOLの修士号が最適でした。中でも、ウーロンゴン大学では、これまでの学校現場での英語指導経験が考慮されて、24単位(半年分)が免除になるというのはとても大きかったです。これなら、休職期間中に、落ち着いてしっかり勉強ができると思いました。また、2020年から小学校で英語が教科化されるという時だったので、留学を終えて帰ってくるときには、ベストタイミングだったと思います。
進学準備英語コース(ETS)の授業内容について教えてください。
English for Tertiary Studies(ETS)コースでは、おもに4つのことを学びました。どれも、大学院で成功するためにか絶対的に欠かせないもので、とても価値のあるものでした。
①英語論文の読み方について
英語論文のどこを読むと、どんな情報が得られるのか。ということを徹底的に学びます。これを学ぶことで、実際に大学院の課題のEssayを書くときに必要な論文を効率的に探せるようになりました。全文を読んでいる時間も暇もないので、すばやく必要な情報を得られるようになり、とても役に立ちました。
②エッセイの書き方について
大学院の課題のほとんどがエッセイだったので、絶対的に必要なスキルです。エッセイで使うべき単語・使うべきでない単語、エッセイの構成、適切な文法、Critical thinking, logical thinkingなど、どれも大学院の学習を成功させるためには欠かせない内容を学びました。
③リファレンスのつけ方
これも英文エッセイの書き方に関係しますが、エッセイを書くときには必ずReferenceをつけなければいけません。文中と文末のReferenceがあるのですが、その両方の書き方をきちんと学ぶことができます。
④プレゼンテーション
プレゼンテーションの組み立て方、効果的なスライドの作り方、どうすれば、聞き手をひきつけることができるのか、プレゼン中の立ち振る舞い方、話し方、グループワークの進め方などを学びました。プレゼンも大学院の課題になることが多いので、ここでしっかり学べてよかったです。
私はオーストラリアに来る前にエッセイの書き方は学んでいましたが、その他のスキルは全く知らなかったので、大学院に入る前にこういう基礎的な知識とスキルを身につけられたことは本当によかったです。これを受けていなかったら、間違いなく大学院の成績は、現実でもらったものよりもずっと低かっただろうなと思います。また、多国籍な仲間たちと一緒に学べたこともとてもいい経験になりました。
大学院の授業の様子、雰囲気について教えてください。
授業は1コマ3時間です。先生はレクチャーをしてくれますが、リーディングの予習を全員が済ませて、理解できていることが前提で進みます。周りの生徒とのディスカッションも多く、先生によっては簡単なフィールドワークも入れてくれたりして、私はとても楽しかったです。私は主に3人の先生から学んでいましたが、本当にどの授業も大好きで、勉強を初めて楽しいと思いました。
先生との距離もとても近く、課題で少しでも疑問に思ったら、すぐに先生の部屋に相談にいきました。納得できるまで、ずっと付き合ってくれて、何もないときでも、先生の部屋の前をふらっと通りかかると、「Ayakaおいで」って声をかけてもらって、授業とは関係のない色んなお話をしたり、カフェに連れて行ってもらったりと、とても温かかったです。私はどの先生も大好きでした。
クラスメイトはローカルの学生と、日本、中国、ネパール、インドネシア、パプアニューギニア、バングラディシュ、香港、インド、ロシアなどから来た学生のミックスです。英語の指導経験のある人が多いので、いろんな国の英語教育事情が分かっておもしろかったです。たくさん笑って、課題に追われて励ましあって、、、多国籍のすばらしい友達ができました。
Master of Education(TESOL)で学ばれた科目について教えてください
【1学期】
EDGZ921 Introduction to Research & Inquiry
教育現場でのリサーチにはどんな種類があるのか、データの収集方法、アンケートとインタビューの違い、データの分析方法、注意点など、教員としての立場から行うリサーチの仕方について学びました。自分のこれまでの研究授業などの経験をResearch Paperにしたり、これから実践してみたい研究テーマを設定して、それに対してのResearch Proposalを書いたりすることが課題でした。様々なJournal Articlesを読むことで、Research Paperの構成、順序、内容などのまとめ方を学びます。ここで学ぶ知識はEDGT991 Researching TESOL Perspectives and Practicesにとても生きるので、先に受けておくといいです。
EDGT985 English in Specific Context
私の一番のお気に入りでした。様々な分野には異なる英語の使われ方があることを学びました。例えば、旅行業界の英語、レストランの英語、先生が話す英語、医療現場で使われる英語は、それぞれニーズが異なるため、単語だけでなく、話す順序や使われる文法が異なることも多いです。主に2つの課題があり、1つ目は、1つ分野を選択し、その分野での英語のニーズを適切に知るには、どのような方法が有効なのかを考察します。2つ目は、1つ目のニーズを反映した特別な英語のコースを作成し、それについて説明するというものです。私は海外でスキューバダイビングのガイドをしていた経験を生かして、ダイビングガイドに必要な英語というテーマで研究し、その英語のコースを作りました。課題は課題なのですが、私の大好きな海とダイビングのことをずっと考えられたので、趣味に近くとにかく楽しくて、情熱溢れるエッセイが書けました。教授も今まで見たことのないテーマだったのでとても興味をもってくれました。そして、このテーマを最後のEDGT991 Researching TESOL Perspectives and Practicesで取り組むことを薦めてくれました。
EDGT983 Assessing and Evaluating in TESOL Environments
英語学習者のよい評価方法について学びました。Reading, Listening, Speaking, Writingの4スキルがありますが、それぞれの、どの観点についてどのように評価するのか、どういう評価方法だと正当に学習者を評価できるのかを具体的に学ぶことができます。課題では、実際にあるたくさんのテストの中からひとつ選び(私はTOEICを選びました)、Practicality, Validity, Authenticity, Reliability, Washbackの5つの視点からそのテストの特徴を分析して、どういう点がよいのか、課題となるのかを、なぜそのような考えになるのかをLogicalかつCriticalに意見を述べます。二つ目の課題では、自分の教員としての背景を考えて、実際にテストを作り、なぜその様なテストにしたのか(問題の数、問題選択の意図、時間配分、採点方法など、ありとあらゆる事を論理的に説明)、さらにそのテストを5つの視点から分析するというものです。私は小学校6年生の児童に向けてのListening とReadingのテストを作り、実際の教育現場に戻ったときにすぐに使えそうなものを作ることができました。教師として評価方法は欠かせないものなので、必ず受けたほうがいい科目だと思います。
EDGT934 English Pronunciation and Prosody
英語の発音や音声について学びました。英語は今ではGlobal languageとして世界中で話され、様々なアクセントがありますが、IntelligibilityとComprehensibilityの二つを伴っていれば、より伝わりやすい英語と見なされるので、それをどのように高めるのかということを学びました。各国の英語学習者にはそれぞれの母語の影響により、異なる英語音声習得の難しさがあります。課題では、英語学習者を一人選択し、その人の英語音声について、子音や母音だけでなく、ストレスやイントネーションの課題を見つけ、その人の英語の伝わりやすさを上げるために、何が一番必要なのかを分析して、それに適したアクティビティを提案するというものでした。同じ音声を100回以上は聞くので、そのうち全てが同じように聞こえてしまったりして、何が何なのか分からなくなったこともありました。でも、他の課題と違って、ひたすらエッセイではなくどちらかというと、聞き分ける耳を育てる技能に近い授業だったので面白かったです。私は日本人の英語音声を分析したので、日本人英語学習者の課題により詳しくなることができました。
【2学期】
EDGT984 Theories of Second Language Learning
第2言語学習者がどのようのその言語を習得していくのか、そのメカニズムについて学びます。学習者の年齢や性格、特性、モチベーションの関係と言語習得の進み方について学びます。この科目でも1人の英語学習者を選び、その人のこれまでの学習方法、学習環境、モチベーション、性格や特性などをインタビューによって収集します。そしてその学習者の現在の英語力と照らし合わせて、どうしてその様な結果になっていると思われるのかを考察しました。その学習者の課題を見つけて、学習者にあった学習方法を提案することが最後の課題でした。
EDGT940 Materials and Technology in Second Language Teaching
様々なテクノロジーをどのように英語教育に生かすのかを学びました。ネットでもアプリでもPCでも本当にたくさんのデジタルリソースがあり、それの活用方法なので、まさにこれからの時代の英語教育にぴったりだと思います。1つ目の課題ではWeb上の様々な英語教育サイトから3つ選び、その良さと、どのように自分の教育現場(私の場合は小学校6年生)に生かせるのかを考察します。特に面白かったのが、最終課題のWebquestという取り組みです。プレゼンを作って、子供たちがそれにそって薦めていくことで、自然に英語に触れ、英語で情報を集めて、発信して、というまさにアクティブラーニングの授業を組み立てました。さすがに設定が小学校6年生ではハードルが高かったので、このときは高校生に設定し、オーストラリアへの修学旅行の計画をするという題材の授業を作りました。Webを使って英語で情報を集めるだけでなく、SkypeやEmail, Google Docs, Smartboardなどを使った授業を作成しました。自分のクリエイティビティが最大限に生かせて、アイディアもどんどん浮かんでくるので、時間がかかったのですが、楽しかったです。いつかこういう授業が実践できる日が来たら楽しいだろうなと思いました。
【3学期】
EDGT931 Oral Communication and Pedagogy
英語学習者のスピーキングやリスニング習得のメカニズムやその順序、適切な指導方法とタイミング、様々なアクティビティについて学びました。授業では学生一人ひとりが、教科書の担当箇所を教授に代わって、レクチャーをするものもあり、指名の仕方、学生が自分から発言したいと思わせる授業作りを学ぶこともできました。Toast Masterというパブリックスピーキングのアクティビティにみんなで取り組んだときは、それぞれが役割(Ah…をカウントする人、タイムキーパー、ユーモアを提供する人、課題スピーチの人、それを評価する人、即興でスピーチをする人等)を担当して、1つのパブリックスピーキングの場を作ったのは面白かったです。私は即興のスピーチで「人生で一番最悪な影響を与えた人」について当てられて、本当に思いつかなくて困ったのですが、なんとかひねり出してスピーチをしたのが楽しかったです。みんなすごく真剣に聞いてくれていたのが印象的でした。課題では、自分の対象の生徒を設定し、その生徒たちが抱える問題点とその理由について考察しました。そして、最後の課題では、その問題点を効果的に解決できると思われる授業プランを考え、その理論的な根拠についてまとめました。この授業では、教授も、周りの友達も本当にアットホームで、何でも受け止めてくれる安心感があり、みんな中が良くて、おしゃべりが尽きず、いつも笑いが絶えなくて、毎回この授業に来ることが楽しみでした。
EDGT991 Researching TESOL Perspectives and Practices
最後のリサーチ課題でした。自分の決めたリサーチに向けて、実際にアンケートやインタビューをしてデータを集め、分析して、考察する、という一連のリサーチを全て行います。私はEnglish in Specific Contextで扱ったダイビング英語についての研究をしていたので、楽しい事尽くしでした。2月の休みにケアンズのダイビングクルーズを手伝いながら、そこで働く日本人ガイドにアンケートやインタビューをしたり、自分のガイド友達(モルディブ、パラオ、フィリピン、タイ)にも協力してもらったりして、ダイビング業界で英語を使う日本人の悩みをまとめました。また、オーストラリア人、ヨーロッパ系の人、日本人インストラクターのダイビングブリーフィング(英語)を分析し、ダイビング英語ならではの、単語、文法、話す順序、文の長さ、アクセントのつけ方などを見つけました。そのデータを元に、どうしてこのような特徴が出るのかを考察し、日本人インストラクターが海外で英語を使って働くときに必要なスキルについてまとめました。ダイビング英語についてのリサーチは、過去にも1例しかされておらず、データはほとんどない状態だったのですが、新しいものにチャレンジすること、自分にしかできないものを作り上げることは本当に楽しかったです。
コース中、苦労されたことや、印象に残っていることについて教えてください
コース中に常に意識していたことは、2つあります。1つ目は、「授業では必ず発言をする」、2つ目は、「課題はこれ以上絶対によくできないと納得できるレベルになってから出す」、ということです。なぜなら、私は、留学中に、自分に与えられた全ての環境を生かして、英語力を最大限伸ばしたいと思っていたからです。
英語を話すことは大好きで、ディスカッションも平気だったのですが、それでも、「授業中にみんなの前で発言する」は、簡単ではありませんでした。TESOLコースの1学期目、一番初めのクラスのとき、教授が日本人の学生に対して、日本での教育現場のリサーチについての質問を投げかけた時、後ろのほうに座っていた私は、私は怖くて目もあわせられず、「当てないで・・・」と思っていました。
一方で、一番前に座っていた、香港の学生(今ではすごく仲がいいです)は、授業中にバンバン意見を言っていたんです。それを見て、「なんて自分は情けないんだろう。あの子みたいになりたいな。」と思いました。それから、毎日、簡単な目標を作ってそれを達成するようにしました。初めは、1授業で1単語、次は3単語、その次は1センテンス。ハードルを下げるために、座る席は、一番前、その香港の友達の隣です。そうすると、教授が目の前にいる+隣の子が良く話すので、とても意見を言いやすくなるのです。初めは汗をかくくらい緊張しましたが、非常に達成感がありました。発言したい→予習もしっかりやる+一番前に座る、という好循環で、授業がさらに良く分かるようになり、より発表ができるようになる、教授にもかわいがってもらえる、といいこと尽くしでした。最終的には、初めは一言も発言できなかった私が、最後の学期には、のびのびと授業に参加し、誰よりもクラスで発言ができるようになりました。教授たちから、”You are the fifth speaker because you are dominant and a leading student in classes.” といわれたのは、最高のほめ言葉だと思っています。
留学中のモチベーションを保つには?
私は常に、自分の留学している姿が、自分の過去やこれからの教え子たちが、もし見ているとしたら、、、といつも言い聞かせていました。自分が胸を張って伝えられる留学生活をしたいなと思っていました。そう考えると、
・ 授業中に小さくなって発言しない → 授業中にはネイティブに負けないくらい発言する
・ 日本人と一緒にいて日本語ばかり話してしまう → ローカルのコミュニティの一員となる、たくさん英語を話す、上達する、世界中のいい友達をたくさん作る
・ 課題では合格ギリギリ → 一生懸命がんばっていい成績をとる
・ バイトと遊びで勉強がおろそか → 全部しっかり両立する
・ 勉強ばっかり → ちゃんとオーストラリアらしい生活も満喫する
という目標が自然に決まりました。あとはこの目標にむかって、自分を信じて突き進んだだけです。実際に、教え子たちが見ているわけではありませんが、意識をすることで、がんばる力をもらいました。子供たちは敏感なので、事実と違うことを伝えれば、すぐに分かりますし、何よりも私が、それをしたくないので、もし、自分の先生がこうだったら、とか、もし子供たちが見ていたら、というのは、一番のモチベーションになりました。
TESOLコースでは大学での講義+予習など1日どのくらいの勉強量でしたか?アルバイトやご自身のフリータイムとどうやって両立を工夫されましたか?
【1学期目】
4教科とっていたので、アルバイトはしていません。それどころか、3ヵ月半の間、友達とご飯を食べに行くことも、遊びに行くことも1日もありませんでした。寝る、食べる以外の全ての時間、1日15時間くらい勉強していたと思います。月曜日に1コマ(隔週)、水曜日に1コマ、木曜日に1コマあり、1教科50~100ページのリーディングの予習があります。それ以外にも、ネットのプラットフォームに、その日の学習内容や、プレゼンのスライドが事前にアップされるので、授業当日の午前中に必ずチェックして、概要を頭に入れてから授業に行っていました。これらが基本で、それにプラスされて課題、1500~3000ワードのエッセイ、プレゼンなどが入ってきます。私は、平日の月火水木をリーディングに集中する日、授業のない金土日(隔週で月)を課題に集中する日と決めていました。リーディングは寮の自分の部屋で、エッセイ作成は図書館にこもって、ランチとディナーを持参して23時くらいまでやっていました。とにかく寮と図書館の往復の毎日でした。
【2学期目】
2学期は2科目をオンラインで受講していました。授業に行かない代わりに、全ての講義やスライドがネット上でできるので、便利なのですが、私には対面の授業が合っていたと思います。オンラインだと、自分のペースでできてしまい、ついダラダラしてしまいがちだったからです。朝9時~4時・・・図書館で勉強し(リーディング、オンラインのレクチャー視聴、エッセイやプレゼン作成)、17時~22時半・・・タイレストランでアルバイトをし、23時半~24時半・・・再び勉強(バイト前にやったものの再チェック)というスケジュールでした。フリーダイビングの練習には週2回くらい行っていました。1回2時間くらいなので、いい気分転換になり、帰ってからまた勉強していました。時間が限られている分、「今日は、何を、どこまで終わらせる」という計画を立てて勉強に取り組んでいました。学会で「日本人の英語の音声について」ポスタープレゼン発表をさせていただいたのも、とても貴重な経験になりました。
【3学期目】
最終学期は、2科目をオンキャンパスで受講+アルバイト+海の活動の両立がテーマでした。2月のお休みの時期にサーフィンのグループにも入ったので、学生寮からシェアハウスへも引越しをして、毎朝8時~9時は目の前のビーチでサーフィンの練習をするのが日課に加わりました。授業は月曜日と木曜日に1コマずつだったので、日曜日に月曜日の準備、火水曜日に木曜日の準備をしていました。バイトでは多くのシフトを任されるようになり、昼と夜、両方シフトが入っているときもありました。そんな時は、朝サーフィン、9時半~11時・・・リーディング、11時半~15時・・・昼シフト、15時~17時・・・リーディング(バイト先)、17時半~22時半・・・夜シフト、23時~24時半勉強、1時就寝、というサンドイッチのようなスケジュールで勉強していました。授業のある日の午前中には図書館に行って、PCでその日のスライドと授業内容を確認、木曜日にはカレッジでスピーキングのクラスも担当させてもらっていました。授業で学んだことを実際の場で行かせるのでやりがいがあって、とても楽しかったです。
フリーダイビングのプールトレーニングにも欠かさず行き、土日のどちらかにはチームの仲間と近くの海(シェルハーバーやウーロンゴン)で潜っていました。基本的にお昼過ぎには終わることが多かったので、その後から勉強したり、バイトに行ったりして両立することができました。
私は、ライティングに時間がかかる(構成を考えたり、新しいアイディアがでたりする)ので、エッセイの課題は提出日の1ヶ月前から開始していました。エッセイはアイディアがないと進まないので、バイト中に立ちながらエッセイのアイディアについてずっと考えているときもありました。大体、週末3日間に集中して1つドラフトを仕上げるのですが、私はいつもこの段階で1000ワード以上オーバーしていました。文字数を減らすために、内容を吟味し何度も何度も訂正ををしなければならなかったのですが、そのおかげで、読み直せば読み直すほど、より簡潔かつ論理的で、文法などのエラーのない論文が仕上がり、いい評価に繋がったのだと思います。平日にリーディングとあわせて、エッセイのチェックをして、そして、また次の課題集中日には次の課題をして・・・という流れで取り組んでいました。
日本とオーストラリアの教育方法の違いについて感じること
日本とオーストラリアの教育法で違うと思うのは2つあります。1つ目は、学生の授業への積極性です。日本では、いまでもレクチャースタイルが基本で(アクティブラーニング・・・生徒主体の学習に変わろうとはしていますが)、教師主導の発問から、児童が発言するのがほとんどで、授業中に生徒が自由に発言するのはまだ少ないように思います。そして、授業中に意見を言い過ぎるもの控えようとする傾向があります。その点、オーストラリアでは、生徒が思ったことを自由に発言し、何よりも自分の意見をきちんと持って表現できることが良いものとされています。それがきちんと認められていることが、授業への積極性に繋がっているように感じました。
二つ目は、オリジナリティのあるものを良いとするところです。日本では入試のテストのように答えが決まっているものが多いですが、オーストラリアでは、「学んだことをどう使えるのか?」が重要視されているように感じます。答えが1つではなく、それぞれが、「自分のクリエイティビティを生かして考え、なぜ自分の考えたもの良いのかを論理的かつ、説得力のある方法でまとめる」、という考え方です。似たようなものより、他とは異なる視点や、新しい考えがより良いとされ、採点は大変だと思うのですが、きちんと正当に評価していただけるのでとてもモチベーションが上がりました。私は、「自分の意見をきちんと言う」、「自分だけのクリエイティビティを発揮できる」というスタイルが自分にあっていたので、楽しく学習できたのだと思います。このオーストラリアの学習の良さを日本の学校教育に生かせる部分は取り入れてみたいと思います。
大学での勉強以外にチャレンジしたことについて教えてください
私は、Wollongong free diversという地元のフリーダイビングのチームに所属していました。寮に住んでいたときの友達が、紹介してくれたことがきっかけです。もともとスキューバダイビングが趣味なのですが、「新しいところで新しいことに挑戦したいな」と思い、フリーダイビングを始めました。アジア人は私だけで、あとは様々なバックグラウンド、年代のオーストラリア人やヨーロピアンが中心でした。週に1~2回、ジムのプールで、トレーニングをしていました。泳ぎこみで心が折れそうな時はいつもそばで応援してくれて、ノーブレススイムで追い込みすぎて、一瞬気を失いかけた時には、すぐに助けてくれて、記録が伸びた時には自分のことのように喜んでくれました。必ずバディと潜るのですが、その競技の特性上(命を落とすかもしれない)、仲間同士の信頼関係がすごく強くなるんです。私の一番の居場所はここにいる仲間たちでした。
そのフリーダイビングのスキルを生かして、ウーロンゴンのOcean cleanupを月に1回行っていました。私たちフリーダイバー、サーファー、ノンダイバーたちみんなが協力して、水中のゴミを拾い、大好きな海を守ることで、ウーロンゴンの街の一員になれたようでとても嬉しかったです。大量のペットボトル、ストロー、釣りの糸、袋、タバコの吸殻など、合計325キロものゴミを集めたときもあって、環境について考えさせられました。私たちの活動は地元のメディアに取り上げられ、新聞やインターネットのニュースにも掲載され、とても誇りに思いました。みんなの環境問題への意識の高さと、行動力は見習わないといけないなと思いました。
森次さんが参加されたOcean Cleanupの記事は
こちら
ウーロンゴンという街の良さについて教えてください
こじんまりとしていて、きれいなビーチがあって、海好きな人にはたまらない場所だと思います。街中にはフリーバスも走っていてとても便利です。アップダウンが多いのでサイクリングは辛いです。街中に行けば、ショッピングモールも、カフェも、いろんな国のレストランもありますし、アジアングローサリー(アジア食料品店)で、日本の調味料も揃います。家がビーチまで徒歩3分だったので、サーフボートを抱えてウェットスーツを着て、はだしでビーチまで歩いているときは「オーストラリアだなあー」としみじみ感じました。ビーチにはライフガードの人もいてくれるので、安心でした。
ウーロンゴン大学卒業式、卒業生代表としてのスピーチ
勉強量や時間はとても多いのですが、正直、私はこの大学院の勉強や生活で辛いと思うことはほとんどありませんでした。課題も個人戦なので、自分で考え、自分の力で進めていくものばかりなので、「友達に支えられて・・・」という感覚はほとんどなかったのです。ですが、卒業式当日、卒業生代表としてのスピーチ前に、緊張で眠ることも話すこともできず、押しつぶされそうなときに、本当にたくさんの友達が駆けつけてくれて、声をかけてくれて、ぎゅっとハグをしてくれて、たくさん応援してくれて、「自分はすごく支えられているんだな。こんなに素晴らしい友達がいるんだな。本当に幸せものだな」と感じました。
当日、スピーチを話し出したら、私一人しかそこにはいないんですけど、本当に一人じゃないような気がしました。いろんな人が私の背中を支えているように本当に感じたんです。目の前のVIP席では私のスピーチを聞いてビデオを撮りながら泣いてくれている友達がいて、ライブ映像を見てくれている世界中の友達がいて、私のスピーチを手伝ってくれたセルビアの友達の声も耳に残っていて。スピーチの中にある、ちょっとしたジョークに会場にみんなが笑ってくれて。卒業生はみんな聞きながら私のほうを見て、うなずいてくれて、壇上の教授たちも私を見ながら、話をきいてくれて。終わった後の、降り注ぐような温かい拍手とかも心地よくて。ずっとスピーチを聞いている人の反応を見ながら話していたので、きちんと伝わっていることも分かって・・・。たった4分間のスピーチでしたが、本当に言葉に表すのが難しいんですが、特別な体験でした。自分の留学に関わってくれた、全ての人に感謝の気持ちで一杯でしたし、そういうたくさんの人の思いを感じることができました。そして何より、あのときの大学スタッフから「学長推薦で卒業生代表のスピーチに選ばれた」というお知らせがあり「やります」と答えた自分に感謝したいなと思いました。
卒業生代表のスピーチを任せていただいたことはとても光栄なことでしたが、それ以上に、私にとって、ものすごく大切なことを教えてくれたような気がしました。
VIDEO
留学によりご自身の行動や考え方にどの様な変化がありましたか
一番変わったのは、自分に自信がもてるようになったことです。日本ではスポーツ推薦ばかりで受験経験もなく、きちんと勉強したことがなかったので、勉強そのものに自信がありませんでした。そして英語の勉強を始めたのも、たった4年前の2015年でした。周りのみんなが自分よりもずっと賢そうに見えて、自分の英語力が通用するのかも分からなくて、「授業についていけないだろうな、単位落としちゃうんだろうな。」と初めは本当に思っていました。そんな自分がまさか、卒業生代表に選ばれるなんて想像もしていませんでした。今では、自分でもやればできるんだと自信がもてるようになりました。たった4年でこんな風に自分が変わったことに本当に驚きました。これから出会う自分の生徒たちにも、この経験を通して、自分の可能性を信じることや挑戦することの大切さを伝えたいと思います。
留学前は、一般的などこにでもいる全教科を教える小学校の教員で、留学後も同じ立場に戻るんだろうな、と思っていましたが、留学をするにつれて、自分の英語力も含め、TESOLで学んだ英語教育の知識を最大限に生かしたいと強く思うようになりました。たくさんいる小学校の教員の一人ではなく、自分にしかできない仕事がしたいという思いが日に日に強くなりました。今までは1つだった選択肢が、留学を経て何個にも増えたという印象です。
TESOLコース受講をお考えの方へメッセージをお願いします
当たり前なのですが、英語力は高ければ高いほどいいです。事前にエッセイの書き方や、論理的な意見の言い方などを練習しておくと、非常に役に立ちます。私はこのようなアカデミック英語をしっかり学んでいたので、あまり困ることはなく、「Ayakaのエッセイは良くまとまっていて本当に読みやすいね」とよく、褒めていただきました(課題に時間はかかるのですが・・・)。教授たちは一生懸命勉強していれば、必ず分かってくれますし、困ったらいつでも相談に乗ってくれます。図書館にはLearning coopという課題サポート、私たちの学部にはInternational tutorがいて、エッセイのチェックもしてくれます。このように充実したサポート(もちろん無料) があるので、安心して学習できると思います。
率直に、私はすごく楽しかったです。どの授業も、リーディングも課題でさえも、全てがとにかく楽しかったです。私の勉強の様子などを見ると、大変そうに見えるかもしれませんが、私は楽しいほうが強くて、そこまで大変ではなかったです。その場に行ってしまえば、やるしかないので何とかなりました。チャレンジした人にしか分からない、新しい発見や世界が見えるようになります。少しでも興味があるのであれば、挑戦してみてください。
今後(帰国後)の目標、予定について教えてください
2020年の4月より埼玉県の公立小学校に復帰します。英語専科の教員として配置していただけるように配慮していただいているところです。もし、英語専科になることができたら、学校全体のすべての子供たちに対して、TESOLで学んできたことを生かして指導できること、そして、その効果や反応が目の前で見られることがとても楽しみです。TESOLコースで研究をした、テクノロジーを利用した英語教育にも興味があります。e-mailやビデオメッセージを使って、オーストラリアやヨーロッパの小学生との交流を実際の授業の中に取り入れて、子供たちのモチベーションや、学習態度の変化などを研究したいと思っています。
スタッフからのコメント 先日、森次さんより、市で初の英語専科教員としての採用が決定した、という嬉しいご報告をいただきました!
「大学院で学んだことを生かして英語教育を実践することができるのがとっても楽しみです。
あの時、ウーロンゴン大学への留学を決めていなかったら、英語専科教員枠が作られること自体も考えられなかったので、本当に留学してしっかり学んできてよかったです。」
今回のご留学が森次さんのキャリアへの架け橋となりました。
ウーロンゴン大学で学んだ英語教授法を、ぜひ現場で活かし、一人でも多くの小学生に英語の楽しさを教えてくださいね。
これからの森次さんの新しいステージでの益々のご活躍を楽しみにしています。