社会人になったあと、MBA留学を決断
私は学生時代、「名古屋工業大学」というバリバリの理系大学で、土木工学を学部・大学院の両方で学び、卒業後は、日本の大手建設会社(ゼネコン)に入社し、6年間大規模な建設プロジェクトで現場監督や設計の仕事に従事していました。
本心から仕事には十二分に満足でした。しかし、その後2年間会社を離れ、畑違いのMBAをとるという決断に至ったのは、それ以上の強い想いがあったからです。学部生の時、私は土木技術者に必要なのは、純粋な技術的視点”と、それと同程度かそれ以上に"高度なマネージメントの視点"だと感じ、その想いは、まさに土木技術者になって働いていた会社員時代もずーと心の底にあったのだと思います。MBA留学はその想いを具現化するための最善の選択肢だった、といって間違いありません。
日本企業におけるMBAの重要性
MBAの目的は、「ある企業や組織が予測不可能な状態、あるいは今まで経験したことがないような課題に直面した際に、早急かつ適切な意思決定ができるリーダーを短期間に育てること」だと思います。MBAでは、その意思決定をする際に必要となる戦略論やそれを支える専門知識、フレームワークなどを総合的に学習します。もしあなたの会社で大きな問題が生じたり、大量の人を解雇する必要が生じた場合、おそらく社長や取締役が、過去の経験やノウハウを生かして、この時はこうしたからきっとこの方法で乗り切ろう、という風に決断すると思います。
MBAでは、20代や30代などもっと若いリーダーに、本来であれば長年の経験で体得していくような「意思決定のためのエッセンス」が既に体系化されたものを最初から頭に叩き込みます。そしてケーススタディーで、過去の良い決定をした経営者、あるいは適切ではない決定をした経営者の具体的な事例を大量にインプットして、もし自分が同じ立場であればどう決断するのか、という視点で実際にチームで意思決定をする訓練を行っていきます。通常の大学院は、専門知識を「習得する」のが主な目的と思いますが、MBAは習得したものを使って実際に「訓練する」場所だと思っています。
今まさに日本企業は世界から見ると非常に危機的状況にあると思います。さらに情報革命によって市場環境も過去にない猛烈なスピードで変化しています。今どの産業でもまさにビジネスモデルを根本的に見直す時期に入っていて、1つの意思決定次第では会社の存続に関わる事態に発展します。まさにMBAで学び、意思決定できるリーダーが必要な時代に入っていると感じています。
アメリカとオーストラリア、MBAの違い
(まず正直に申し上げて、アメリカMBAに私自身が行ったわけではないので正確には分かりません。しかし、アメリカMBA合格までの過程や、アメリカMBAで学ぶ友人たちとの交流を通じて感じたこと正直に述べます)
オーストラリアで学ぶMBAは、アメリカ発祥の純粋で文字通りの「MBA」を、アジア文化を多分に取り入れている現地の文化や環境に合わせアレンジされた、いわば「オーストラリア版MBA」だと思います。そのため、アジアの一員たる日本人には様々な理由で、より馴染みやすいのではないかと思います。
例えばInternationalのコースには圧倒的にアジア出身者の生徒が多く、グループワークでは彼らの思考方法への理解が不可欠です。当初私も相当戸惑いましたが、今ではかなり適応できると感じています。一方でアメリカ人のMBA生徒と話すと感じるのが、信じられないほど「MBAの論理や思考=彼らの思考パターン」ということです。自らの行動や思考を整理し記述していったものがMBAなので、当然と言えば当然かもしれません。日本人やアジアの人々は元々かなり異なる思考があり、「MBAの考え方を(新たに)学ぶ」という姿勢が主ではないでしょうか。だからこそ、アメリカ国内で純粋なMBAを学ぶよりも、オーストラリアの方がアジアの仲間が大勢いる!という意味において、より馴染みやすいのだと思います。
最終的にマッコーリーのMBA(MGSM)を選んだ理由
実は、私も当初はアメリカMBA一辺倒でした。しかし最終的にMGSMを選んだ理由は主に2つあります。
一つ目が、アメリカMBAとの相対比較の結果、MGSMが非常に優れていたからです。
まず私は勉強をすることが好きな人間ですが、人よりも頭がいいとか、効率的に勉強ができる人間だと思ったことは一度もありません。むしろ効率は悪いと自覚しています。私の場合はMBAの準備にかけられる時間は、フルタイムで働きながら7-8ヶ月しかありませんでした。そこで私は「コスパのいい」、つまり「同程度の難易度でもより高いランキングのMBA」に行く目標を立てました。2017年MGSMはMBAの世界ランキング(Financial Times)で49位と、オーストラリア国内1位のMBAコースでした。アメリカMBAの数校から合格を得ていましたが、相対比較ではやはりMGSMが一番でした。
もう一つは、社内留学生、もっと言えば日本全体でもアメリカMBAホルダーは大勢いるので、そうしたアメリカMBA生と差別化したいという想いもありました。幸い私の勤務する会社にはオーストラリア支店があり、将来的なキャリアも見据えられたことも決断できた理由です。
マッコーリーのMBA(MGSM)の特徴
1)世界MBAランキングが高い(2018年時点ではAGSMが一番ですので注意が必要)
2)キャンパスがMPID(Macquarie Park Innovation District)と呼ばれるイノベーションを起こす企業が集まったビジネス街の中心に位置し、Incubatorと呼ばれる起業家育成のためのワークスペースなども充実している
3)入学にGMATが免除できる
4)シドニー中心街にサテライトキャンパスがある*
5)アジアの大学、特に中国最高峰である清華大学や北京大学との間で交換留学が可能(交換留学プログラムがある)
などです。
*シティキャンパスで勉強していた時の知英さんのインタビューは
こちらです。
可能性の宝庫、交換留学プログラム
交換留学プログラムとは、MGSMのプログラムの途中で短期であれば2週間、長期であれば3ヶ月、シドニーのキャンパスを離れて他大学のプログラムに参加し、単位が得られる仕組みです。
私は2018年に北京大学交換プログラム(2週間)に参加し、北京、西安、上海の3都市を訪れながら、中国経済や文化を学ぶ講義や現地企業の見学、また中国留学生との交流などを通じて、世界経済を動かす中国の勢いを肌で感じることができました。更に交換留学は、他大学のMBA生徒と交流できるまたとないチャンスでもあります。実際、アメリカMBA、シンガポールMBAの生徒など、シドニーにいては難しい人脈形成にも大変役立ちました。その他、私は「スタディーツアー」という特殊なタイプの海外プログラムにも参加し、これはMGSMの生徒だけですが、香港、ロンドン、ワシントンの3都市を2週間で巡り、NASDAQなどの証券取引所を訪問、世界の取引市場の状況を間近で学ぶ機会を得ることができました。渡航費用などが別途必要になりますが、可能であれば是非参加すべきプログラムです。
起業を希望する20代にもMBAは絶対オススメ
起業(スタートアップ)する際には、即座にマーケティングやファイナンス、差別化のための戦略などの経営上の課題に直面します。MBAはこれらの課題解決に必要なノウハウが1つに凝縮されていると言えるため、何の勉強もなしで起業する場合よりも格段に成功率を上げられるのではないかと実感しています。
実際、選択科目の中にもEntrepreneurship financeなど、起業後のステージごとに投資家からの資金調達する方法や、Exitの方法など実践的なノウハウを身につけることができます。
また(前述の)Incubator施設も大学内にあり、MBAで勉強しながら起業する環境も確実に整いつつあります。(また国の制度上の話ですが、例えば個人事業主になる手続きなどはインターネットで1日で完了するなど、オーストラリアは非常にスタートアップしやすい環境であることも大きなメリットだと思います)
Incubator施設について
私が入って1年後くらいにできたばかりで、最初は存在すら知られていなかったのですが、Incubatorでは1ヶ月に数回程度、実際の起業家や大学の先生などが、起業に興味がある人や起業家向けに色々な話題を提供してくれます。私はデザインシンキングやブロックチェーンなど最先端の技術などを紹介するイベントに参加しました。これらのイベントは登録さえすれば誰でも無料で利用できます。また起業した人が比較的安い値段でシェアオフィスを利用することもできます。
留学生活について教えてください
1日のスケジュール:授業がある日は、(前日までに宿題を終わらせて、)朝食、朝9:00-13:00まで授業、その後チームメンバーで昼食、ミーティング、解散して自宅に帰宅17:00など。1週間で2-3日しか授業はありませんので、それ以外の日は、宿題やミーティング、事前課題などを処理する時間に当てます。
1年は4セメスターで、1セメスターは10週から成っています、1st=1-3月、2nd=4-6月、3rd=7-9月、4th=10-12月みたいな感じです。ただ実際には3ヶ月(=12週)ではなく、10週間しかないので、少しづつ前にずれていき11月まで授業があり、12月はまるまるブレイクになります。また各セメスター間には1週間(のみ)ブレイクがあります。アメリカのように夏季休暇などまとまった休みは少ない感じです。
マッコーリー大学の周辺環境は、とにかく緑が多くて静寂な場所です。ただマッコーリーショッピングセンター(日本の大型イオンみたいな感じです)がマッコーリー大学駅近くにあるため、日常生活で必要なものは全て入手できて非常に便利です。また、マッコーリー大学駅からシドニーの中心街まで30-40分くらいで行けるので、観光やカフェ巡り、買い物、またアルバイトなど足を運ぶのにもとても便利です。
だいたい授業はチームでプレゼンなどの課題をこなす必要があるため、授業を通して自然と友達や仲間が生まれてきます。私も同じチームだった生徒の何人かと家族ぐるみの関係で、自宅パーティなどを開いて交流していました。そうした大学以外の場所での交流も積極的に楽しむとよいと思います。
インターナショナルの生徒の多くは、大小ありますがアルバイトをしている人が多くいます。オーストラリアは学生ビザで週20時間までアルバイトできるので、Subwayのようなカジュアルな飲食店やショップから、MBAを活かせるコンサルタント会社、マーケティング会社など多様な場所で働いています。日本人留学生の場合、やはり日本語と英語が両方堪能である利点を生かして、日本人の顧客を持つ留学エージェントや日系のマーケティング会社、日本語の家庭教師などが多いと思います。MBAの生徒は、もちろん金銭的な理由で働いている場合もありますが、将来、母国以外で就職や起業を考えている人が多いので、実際のビジネスの世界で実績を作りたいという目的の人が多い気がします。
考えや文化の違いは当たり前
まず、MBAに来るという人に共通するとは思いますが、現状を変えたいとか、ビジネスを始めたい、転職したいなど非常に高いモティベーションを持っている人が多いと思います。
国籍はインド、東南アジア、南米、ヨーロッパと多種多様ですが、インド人が一番多いです。(中国人や日本人はクラスに1−2人しかいません。)私はインドから来たYogesh、ベトナムのThao、コロンビアのLuisに特に大きな影響を受けました。また、北京大学での交換留学でであった、現役アメリカMBAの生徒(アメリカ人)や、中国人の人にも大きな影響を受けました。
考え方や文化の違いということを肌で感じます。違いがあり過ぎて、些細な違いはどうでもよくなります笑
最後にこれからMBA受験・受講生に向けてのエールをお願いします!
私の場合は幸運なことに、留学を支援する制度を持っている会社に勤務していましたが、それでも会社内でMBAのことを知っている人となると、かなり少数になると思います。事実、(アメリカのハーバード大学は1校でMBA留学生が年間約900人と言われていますが、)2年コースのMBAに行く日本人留学生が年間で200人強ほどしかいないとも言われていることからも、自分の周りにいるほとんどの人が、MBAについては無知と思ってまず間違いないと思います。そういうある意味「孤独な」環境下でMBAの受験勉強を続けていくことは、精神的にも非常に困難であることは間違いないと思います。そんな時は立ち返って「自分にとってMBAがなぜ必要なのか?」を改めて考え、本来なりたかった姿や、将来の目標などを再度考えてみてください。これらをしっかり持ち、その思いや目標が強ければ強いほど、逆風が吹いても突き進むことができます。
MBAを志した時点で、あなたは日本人では既に稀な存在ですから、その素質は十分にあるはずです。あとは自分を信じて突き進んでください。ちなみに私は今、心の底からMBAに来て良かったと思えます。また、もしオーストラリアMBAを目指すならぜひ声をかけてください!一緒にオーストラリアMBAのチームを作りましょう!
スタッフからのコメント
日本でのハードなお仕事のあと、じっくりと準備をすることも出来ず留学生活がスタートした(であろう)知英さんですが、最初から戸惑ったり混乱に陥っている風もなく、質問をすれば素早く的確な回答を返してくれるような落ち着いた方でした。
マネージメント経験のある方向けのMBAはこういう方が学ぶのかな、と最初は思っていましたが、だんだん、勉強も大変なはずなのに「フットワークが軽くて、いつも新しいことをしようと楽しそうな方」と印象が変わってきました。留学成功の秘訣は、諦めない気持ちも大切だとは思いますが、「その勉強をする目的意識、探究心や好奇心、そして実行力」が大切だな、と改めて思わせていただきました。
日本に帰ったらますますお忙しいと思いますが、是非オーストラリアでインターナショナルなプロジェクトを成功させてくださいね。楽しみにお待ちしております!
湯淺さんにコンタクトを取られたい方、こちらまで
ご連絡下さいね。ご紹介します!