科学の限界を感じ国際関係へ
日本の大学では生物科学を学んでおり、科学の限界を感じ始めていた時に、経済や政治、宗教といったことにも興味を持ち始めました。
大学4年の研究を始めるまでは、すべての事象は科学で説明が出来ると思っていました。しかし研究をするにつれて、科学の恣意性や限界に気づきました。
例えば、生物科学ではここからここまでが一つの細胞、と境界線を描き、その前提条件を基に実験を行い、証明をします。しかし、実際は全ての細胞は外界と相互作用しているため、境界線など引くことはできません。つまり、自然界は複雑で、科学が客観的である限り、人間の頭では分析することが出来ないのです。
そういった科学の限界を学んだ時、哲学や宗教といった客観性を超えた学問や、経済や政治といったほかの学問にも目を向けるようになりました。それで、これまでの生物科学から分野を全く変えて、国際関係を学ぶことにしました。
宗教の役割を考える
例えば、宗教は自分で勉強をしてみましたが、宗教は人間の理解を超えたものを理解できるようにしていて、それが人間の生きる目的や価値観形成へとつながっていると思います。
日本では宗教はほとんど世俗化していますが、世界では宗教の果たす役割は大きく、宗教的な価値観を基に秩序を形成している社会はたくさんあります。
このように宗教は国際社会で大きな役割を果たしていますが、これを数値化して科学的に分析することは出来ません。
このような経緯で、ぜひ宗教や社会、経済について学びたいと考えました。またそういった学問を学ぶには、異なる価値観を基に秩序を形成している社会で学んだ方が、吸収できるものは多いだろうと考えたため、多民族国家であるオーストラリアへ大学院進学を決めました。
他の都市の大学院とも迷いましたが、都市として勉強に集中できる環境が整っているので、パースの西オーストラリア大学大学院を選びました。
価値観の違いを理解する
実際にオーストラリアに来て見ると、色々なバックグラウンドの人たちと出会うことができて刺激的です。
例えば、ムスリムの人ともよく話をしますが、誤解を恐れずに言えば、コーランをベースに理論立てていくと、「男女平等」や「人権」という考え方が、必ずしも正解になるわけではない、ということがわかりました。
善悪の話ではなく、コーランをひも解いていくと、そういった概念に行きあたらない、ということになります。
もちろん、ムスリムの中でもいろいろな考え方があるので、一概に「こうだ」ということはできません。インドネシアとアラブ出身のムスリムの人でも、考え方は違いますし、元々ない概念を持ち込むと、やはり衝突が起きると思います。
英語はコツコツ継続することが近道
日本にいる時は、基本的に独学で英語の勉強をしていました。
英語のドラマを見たり、英語の参考書を使ったりしていましたが、色々と手を出しすぎないように気を付けていました。例えば、使う参考書も、手当たり次第やるのではなくて、「これ!」と決めたものをじっくりとやります。
あとは、コツコツやることが重要です。色んな英語の勉強方法や教材がありますが、どの方法を取ったとしても、コツコツ勉強を継続することが、英語上達の近道だと思います。
大学院入学前に、大学付属英語学校の進学用のコースで勉強をしました。国際関係コースは、エッセイを書く量が多く、特に英語学校でエッセイの書き方を学べたことが、大学院での勉強の助けになっています。
世界の中の日本の位置づけ
働きながら大学院に通う人も多いので、17時~20時頃の夜の時間帯に授業があります。実際にクラスメートは、NGOや国際機関で働いていたり、そういった分野で経験を持っている人もいます。
オーストラリアで国際関係を学ぶと、日本という国がどのように海外から見られているかがよくわかります。
例えば、戦争問題や戦後補償、日本と近隣諸国の政治的関係等、センシティブな問題も出てきて、意見を聞かれることもあります。オーストラリアで育った中国系の先生もいて、国際関係論の視点から分析をして、先生の意見を述べてくれるので、とても勉強になります。
クラスメートと飲みにいくこともあり、政治や経済の話もよく出てきます。日本がいかに経済面、安全保障面で国際社会に貢献しているかを、日本国外からの視点で意見を述べてくれるので、いかに日本が重要視されているかを感じます。

日本人はおとなしい、と見られることも多いのですが、うまくバランスをとったり、双方の意見を昇華させたりといった、日本人の持つソフトパワーは、国際関係という大きな枠組みから、グローバルな時代の個人の人間関係という面まで、役立つものではないかと考えています。
実際に、自分の場合は、生物科学という全く異なる分野から国際関係に進学をしたので、国際関係学の前提知識がなくて苦労しました。そういった状態でしたが、「日本人」ということで、クラスメートから声をかけてくれ、助けられた面が多かったです。
日本の企業から内定を獲得
大学院での勉強も、今セメスターで最後です。
冬休み(日本の夏休み時期)に一時帰国をして、就職活動を行いました。海外進学者用の就職エージェントに登録をして、一時帰国中の短期決戦でしたが、コールドチェーンのインフラ事業を行う会社から無事内定を受けることができました。
日本の大学・大学院生とは異なる形での就職活動でしたが、留学したことで就職活動をする中で不利になる、とは感じず、むしろプラスになる手ごたえを感じました。
就職の面接では、なぜ海外進学をしたか、生物科学から国際関係へ変更したのか、なぜオーストラリアだったか、といったことを聞かれました。
実際にお会いした企業の方たちも、「パース」や「西オーストラリア大学」をあまり知らなかったと思います。おそらく「留学生」という一般的なイメージから、面接質問をしているように感じたので、場所や大学名よりも、「海外へなぜ進学をしたか、そして、実際に何をしてきたか」という部分が重要になると思います。
内定を頂いた会社は、海外展開を進めている最中の会社なので、私の西オーストラリア大学での経験が役に立つと、これから楽しみにしています。