【体験談】精一杯の情熱を傾けた大学3年間 メルボルン大学でデザイン、建築を学ぶ

村上 花さん | メルボルン | The University of Melbourne | Architecture | 3年
日本の高校をご卒業後、メルボルン大学のファンデーションコースで学び、この度Bachelor of Design(Architecture専攻)を修了された村上花さん。
大学生活を振り返っていただき、また今後の将来の展望についてもお伺いしました。

村上さんのファンデーションコースの体験談はこちら

村上さんの留学プラン
・日本の高校卒業  

・2019年8月-2020年6月 トリニティカレッジファンデーション(1年間)  

・2020年8月-2023年6月30日 メルボルン大学(3年間)

メルボルン大学ご卒業、おめでとうございます!まず今一番感じることを教えてください。

一番感じるのは、「長かった‥」です。本当に長かった。よく、大学生活はあっという間だったなどと聞きますが私にとっては全くそんなことはなくて。メルボルン大学生であった自分の一日一日はあまりに濃く、学びの多いもので、一瞬で過ぎ去ったような感覚は全くありません。
あとはやっぱり、「諦めなくて良かったな」と言うことだと思います。メルボルン大学入学も、卒業も、途中で諦めなくて本当に良かった。辛かったことも多かったけれど、絶対に卒業して、支えてくれた家族に感謝を伝えたいとファウンデーションコースを含め4年間ずっと思っていました。

留学中にはコロナもありました。休学を選ばれる方も多い中、休学せず日本からオンラインで学習を続けられた理由は?

私は結局1年間オンラインで日本から学習しました。オーストラリアでも多くの留学生が母国に帰ったタイミングだったと思います。
そこで休学しなかった一番大きな理由は、一度足を止めてしまったらまた学業を再開するのが困難なように思えたからです。建築学科では特に、1年目、2年目、3年目、と施工、法規、デザインなどと言う軸が繋がっていることが多く、途中で一度間を開けてしまうと、私の場合ではせっかく1年目コロナになってすぐの頃に学んだことが2年目(一度休学した人が周りに多かったタイミングでした)に生かしにくくなってしまうかなと感じました。
こればっかりはそれぞれのチョイスだと思いますし私は予算にも制限があったので、最短で卒業したいという気持ちはコロナに関係なく常に持っていたと思います。そのおかげで単位を落としたりすることも一度もありませんでした。

ファウンデーションコースが修了し、大学がスタートした時が一番勉強が大変だったそうですが、具体的に教えてください。

ファウンデーションコースは、いわば、学校が私たち留学生に膝をついて色々と優しく教えてくれる時期ですね。英語でのアカデミックエッセイの書き方、教授への礼儀正しいメールの書き方、西洋思想史や英文学。日本の高校までの教育では知り得なかった新しい世界を紹介してくれたとともに、大学での授業にスムーズに慣れていけるよう促してくれました。
大学の学部に入学するともうそこは誰も妥協してくれない厳しい学問の世界です。考えないと、聴いていないと、ついて行こうと努力をしないと簡単に置いていかれます。同じ科目を3回以上やり直している友人もいましたので、かなり気合を入れて毎学期取り組まないといけません。


授業スピード、短時間で覚えなければいけないことの多さ、そして私は建築学科だったので新しいデザインソフトや3Dモデリングソフトの操作に慣れるのにも手こずりました。急にネイティブの学生とコミュニケーションを取らないといけなくて、彼らのスラングやオージーイングリッシュについていくのも簡単ではありませんでした。でも苦労して手に入れた知識やスキルは今でも将来のプランを立てるとき指針となってくれているし、授業では真剣に取り組んでいれば必ず教授やチューターは助けてくれるので、今では苦労も含め全ての思い出に感謝しています。

大学で一番印象に楽しかった科目、また一番大変だった科目はなんですか?どのように工夫して乗り越えましたか?

一番楽しかったのも一番大変だったのもやはり最後の卒業制作のクラスです。スタジオの全員が真剣だったこともあり週2回、3時間のスタジオの時間はとても楽しかったです。卒業制作の課題は簡単にいうと1万平方メートルほどの決められた敷地にテーマを決めて4階以下の集合住宅を設計することでした。コンセプト、ユニットごとのプランと断面、素材や表現の仕方まで、最初から最後まで全力で取り組みました。乗り越える、というよりはできる限りの時間と情熱を注ぎ切ったという感じで、それはもうただの単位のハードルというよりは自分の中でどこまでいけるか、の大きな挑戦だったと思います。


他文化でクリエイティブなクラスにいられて楽しいのは、やはりクラスメイトがどのように違うかを感じること。私は比較的真面目なタイプでしたが(日本からオーストラリアに留学したらそういう人が多いと思いますが)、ものすごく時間にルーズなのにアイデアや発言力がすごかったり、すでに社会人で実践的な知識がすごいクラスメイトがいたり、自分もいくつか殻を破らないとついていけないと思ったことを覚えています。そういう人とディスカッションをして自分が知らなかった自分のクリエイティビティが新しく芽を出してきたように思い、さまざまな人と関わることの大切さを身をもって感じました。
国籍という点では最後のクラスでは半分以上がオーストラリア人の学生で、あとは中国人学生が数人でした。学部での3年間で日本人と同じクラスになることは結局ありませんでした。

メルボルン大学特有の学部を超えて学べるBreadth Subject

他に面白かった授業は意外にも建築学科以外で履修していたメルボルン大学特有のBreadthというシステム。この制度は、自分の専攻している学部以外の授業を受けられるというもので、例えばサイエンスの専攻の人がフランス語をBreadthで選択できるなど、自分の専攻以外の興味を追求するのにとてもいいシステムです。
私は建築史に関する授業を主専攻の方で多く選択していたので、Breadthでもそれと結びつけて考えられる美術史やジェンダー史などをよく取りました。
文化、特に西洋の文化というのはだいたいジャンルを跨って栄えてきたので連携させて勉強すると非常に学びが深くなって面白いです。
例えば18世紀半ばに興った新古典主義(Neo-Classicism)では、建築では啓蒙思想(Enlightenment)への反動とも取れる形で古代ローマやギリシャの建築への回帰やリファレンスが見られ(その時期に建てられたパリのPantheonなどやその後には大英博物館など)、それと同じ流れで絵画でも、フランス革命の時期ですから新古典主義のJacques-Louis David作のナポレオンの戴冠式などは古典的、写実的な構図とタッチで描かれていますね。
そうやってジャンルを越えることで学びが楽しくなる、ということに気づかせてくれたメルボルン大学のBreadthシステムは非常に良かったと思います。

優秀作品展に連続5期選出という素晴らしい成果を出されましたね!最終学期は残念でしたが、そこで感じられたことを教えてください。

そうですね。メルボルン大学の建築学科のあるデザイン学部には、MSDxといって優秀作品展が学期末にあります。私は入学してから順調に毎回選ばれていました。(オーストラリアの大学学部は主に3年で2学期制なのでそれで5回連続選出ですね) 

(写真は3年1学期で入選時のもの)

(1年生で入選時のもの。大学のインスタに掲載されました)

最初のMSDxでFoDR(Foundation of Design :Representation)と言う科目で非常にいい評価をもらえたのでそこで調子に乗って建築を選んだと言うのもあるくらい私にとって重要なイベントで、ずっと、とにかく選ばれるために頑張るのが楽しくて。もちろん建築設計の世界ではそう言うことは全てではないですが、将来のことを考えるとコンペの結果で仕事が決まると言う点ではこの展覧会に選ばれることは自分の将来性を少しでも認めてもらえるような気分にさせてくれました。
課題の意図を読み取り、良い作品から学び、美しくテーマ性があり機能的かつ実現可能な設計をする。そのためなら寝る間も惜しんで、学期が始まってからずーっとエンジンがかかったままを繰り返した3年間でした。美しい線を、配分を、素材の選択を、表現の仕方を学部生なりに考え抜きました。
先生とできるだけ多くの時間ディスカッションをして、評論会ではプロの建築士の方々にできるだけ認めてほしかったし、展覧会に選ばれたかったし、結局はそこまでしてでも自分の作品を好きになりたかったのだと思います。
学部レベルにしては非常に大袈裟な表現をしていると自覚はしていますが私はそのくらいの情熱を持って取り組んだし、そうでないとあそこまでの時間をかけることはできなかったと感じています。

最終学期でまさかの落選、そこから気づいたこと

そして最終学期。私は最後の最後に、初めて、その優秀作品展に選ばれませんでした。本当に本当に悔しくて。今までで一番頑張ったのに。最後に有終の美を飾って終わりたかった。卒業式に来てくれる母親に胸を張って自分の作品の展示された美しいデザイン学部の校舎を案内したかった。
悔しい、ああ悔しい。もう大学でそれを知った瞬間から涙が止まらなくて。友達にもギョッとされたしMelbourne Centralの駅でも涙が止まらなくて人目も憚らずあの端っこにある赤い階段の下でわんわん泣きました。
結局その後も眠れずに18時間くらい部屋で泣き続けて、身体中からっからになってようやく、まあ人生こういうこともあるか、と思えました。
両親に電話で報告したけれど2人とも、全力でやったのなら今はそれでいいでしょうと言ってくれました。そう、確かに自分のできる範囲で頑張ったことに変わりはないし、どんなに私が頑張ったと思っても、きっともっと頑張った人、もっとセンスがあった人もいたと思う。何より誰がやったかより良いものが選ばれるべき世界。私はその建築における潔さ、厳しさが突然愛しくなりました。余計やる気が出たというか。ここまで悔しくても立ち向かっていきたいと思えるものが自分にようやくできたと感じられたことはとても嬉しかったです。
結果については単純に実力不足やそもそも課題に対するアイデアのズレもあったと思っています。が、ひょっとしたら神様が、社会に出る私に調子に乗るなよと教えてくれたのかもしれないとも思います。
人生において、後から振り返れば、あの時あの失敗をしておいて良かったと思う出来事はたくさんあって、この出来事は、この瞬間一点だと悲しいし悔しかったけれど、きっと私はここからたくさん学ぶことが出来、何年後かに必ずあの時でああなっておいて良かったと思える日が来ると考えています。実際そうするためにこれからも謙虚にこつこつと努力していければと思います。
少し時間が経った今考えると、メルボルン大学の本質的にとても良かったところは、かなり多くの割合の学生が、自分の学んでいることに対して愛があり、真剣であることだと感じています。彼らと話しているだけで勉強になったり制作の刺激になったりして、結果というよりは、最終的にそういう何かを、仲間と共に真剣に目指していく過程に意味があったのだなと今となっては思います。

メルボルンで出会った人の中で、刺激や影響を受けた人は?

まずはもちろん大学の先生たち、本当にオーストラリアという移民大国を象徴するようにさまざまな国にルーツがある沢山の先生に教わりました。特に最後の1年間チューターとしてずっと一緒に取り組んできた先生からは、実際に建築士として働いておられる側の目線、取り組み方を時に楽しく時に厳しく教えてもらって、一生忘れない制作活動の哲学を少し伝授してもらったように思います。


そして先生や多くのクラスメイトと一緒に、これからの生き方、そしてメルボルンという街の楽しみ方も開拓していきました。

コーヒーを持って授業に行き、プレゼンが終わったらみんなでパブに行ってフットボールの話をする(私は結局最後までオーストラリアンフットボールのルールはよくわかりませんでしたが)。彼らの日常が日本出身の私には特別で、新鮮で、とても楽しかった。ようやく大学の裏のパブで大きなPintといわれる600ml弱のビールを一人で飲み切れるようになった頃に卒業‥やっぱり彼らと最後に別れることはちょっと寂しかったです。


あとは長い時間を一緒に過ごしたルームメイト。4年間でさまざまなルームメイトと一緒に住みましたが色々とあって一番仲が良かったのはカナダ人のDJでありエンジニアのお兄さん。なんでも直してしまうすごい人で、壊れた大きなコーヒーメーカーをどこかから拾ってきて直して、キッチンに置いてくれたことも。私が課題につまっていたら深夜に車でアイスを食べに連れて行ってくれたり、メルボルンの郊外の森林に星を見に行ったり。彼自身2児の父親で、勉強以外ずさんだった私を放って置けなかったのかもしれません。日本に戻ってきてからもずっと連絡をとっています。


そしてメルボルンに渡ったその日からお世話になっていたハウスオーナー。私はもともと早めにここのお家を出るつもり(大学から遠かったので)だったのですが、このオーストラリアでの私の父のような存在だったハウスオーナーの優しさに甘えてずっとここに住むことになりました。


(ハウスオーナーさんと私、私の母です)

その方は私が最初に利用したホームステイ会社の社長さんで、私に人生において大切なことをたくさん教えてくれたし、飼っていらした犬と触れ合えることも一人で異国の地にきた私にとっては癒しでした。ワイン通で美味しいオーストラリアンワインについてもたくさん教えてもらいました。私のことを実の娘のように大切にしてくれたし、悲しい時も嬉しい時も優しく話を聞いてくれて、「試験どうだったかい?」などと優しい言葉を何気なくかけてくれて、誰かに気にしてもらえるということがこんなにも自分の支えになるのだと思ったのを覚えています。

留学生の視点からメルボルン一番のおすすめスポットを教えてください。


沢山あります! 本当に大好きな街。でもまずは一番大好きなRoyal Exhibition Buildingですね。メルボルンで一番好きな建築で卒業式に参列した時の夢のような気持ちはきっと一生忘れられません。あとは沢山あるけれどSt. Paul Cathedral等の教会施設や、モダン建築ならSouthern Cross Stationは用事がなくてもわざわざ降りたいほど。美術ならNGV(National Gallery of Victoria)はいつもかなりいいコレクションをしています。穴場ですがacmi( Australian Centre for the Moving Image)もおすすめです。


食事ならLygon St.に行けば本場さながらのイタリアンがあるし、そこでピザを食べてデザートにPidapipoのジェラートを食べるのはメル大生の定番コースかも。Southbankのリバーサイドのバーやレストランは雰囲気もいいですね。
少し郊外に出れば壮大な星空、カンガルーなどの野生動物にも出会えますし、ワイナリーが広がる景色を見に行くのもおすすめ。運転できる人はぜひGreat Ocean Roadを(気をつけて)ドライブしてみて欲しいです。私も何度か行ったのですが一生忘れられない本当に広大な景色でした。

留学を経て自ら成長したなと感じることはありますか?

毎日成長痛‥というか、とにかくうまくいかないことだらけなのでその度に成長しているなとは感じていました。とにかくいくらやっても自信がないタイプだったのですが、押しの強い現地の学生の姿勢に背中を押されて言いたいことをディスカッションで自信を持って言えるように少しはなれたかなと思います。
最初は少し苦労していたオージーアクセントも今では大好きです。英語の面は本当にいろんなアクセントの人がいるので、ある意味コンプレックスを持つことなく自分のペースで勉強しました。みんな基本的には違うアクセントに寛容な文化なので、まだまだだと思うこともありますがやっぱり4年間まるまる海外進学して良かったことはある程度英語に自信がついたこと。それでもネイティブのものすごく早いスラングまみれの会話にはついていけないこともありますが‥ それはここからのチャレンジということにしたいと思います。
あとはやっぱり精神的にも体力的にも前より強くなれたこと。私は本当に運動習慣がなく体力もなかったのですが、体の健康は心の健康というのは真実で、コロナで外出禁止、異国の地で部屋に一人‥となったときできるだけ運動を沢山して気持ちを強く保つようにしていました。あとは毎学期訪れる課題の山を乗り越えていくうちに少しずつタフになった気がします。これはどの大学生もそうだと思いますが。留学生は苦労が多い分成長も間違いなく大きい。だから失敗してもまた強くなれると思って諦めないことは大切だと思います。

卒業後はどのようなキャリアを考えていらっしゃますか?今目指していることや、取り組んでいることがあれば教えてください。

卒業後は、2022年から開始されたイギリスのHPI (High Potential Individual) Visa というビザを申請していて、ロンドンで2年間就労する予定です。
これは2つ以上の認められた公式の世界ランキングで50位以内の大学の卒業生に与えられるビザで、今年は40校ほどが認定されており、オーストラリアではメルボルン大学とクイーンズランド大学の卒業生には申請資格があります。
自分が卒業するタイミングで始まった制度でしかも自分が対象となるということで、偶然も感じましたが一番の目的はこのチャンスを活かしてヨーロッパ建築をもっと見て、英国での建築にまつわる就労経験を積むこと。20代のうちにできるだけ世界中の美しいものを見て周り、その後の自分の表現や人生を支える一部になっていくようにしたいです。
そして、自分のペースで努力していつかは建築士として独立するのが今の遠い将来の夢です。

メルボルン大学を目指す高校生たちへアドバイスをお願いします。

メルボルン大学は私が本当に4年間という時間をかけて微塵の後悔もないほど素晴らしい場所。世界基準の教育、熱心な学生たち、プライドを持った教授陣との時間は一生ものです。それと同時に、「どこにいくか」より「自分が何をするか」が大切なのはどの場所に行っても変わらないこと。大学名や憧れだけではなく本当に自分がやりたいことがそこでできるか、そこにいる自分に憧れられるか考えて進学先を考えてみてくださいね。今やりたいことが見つからなくても刺激のある場所で全力を出していれば何か見えてくるはず。私も卒業後の人生をなんとか頑張っていきたいと思うので一緒に頑張りましょう!
豪政府認定留学カウンセラーPIER資格保持
(QEAC登録番号G175)
シドニー滞在歴15年を経て、現在東京オフィスで留学コンサルタントとして 皆さんのオーストラリア留学実現へ向けてサポートしています! 現地での滞在・進学経験を踏まえて、皆さんのご留学へむけての不安を解消して安心して出発の日を迎えられるよう、アドバイスしています。 まずはお気軽にご相談下さい! このカウンセラーに質問する

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