【体験談】日本の農業を違う角度から支援したい 〜アデレード大学でアグリビジネス〜

齋藤 健さん | アデレード | The University of Adelaide | Agriculture | 1年8か月
アデレード大学にて アグリビジネス修士号を修了した 健(たける)さんの体験談です。

健さんは、日本では文学部卒でしたが、将来のキャリアを考えた際、ご実家が農家、且つ、日本の農業(農家)の抱える問題点などから オーストラリアで アグリビジネスを学ばれる決意をされました。 農業分野とビジネスをつなぐ「アグリビジネス」。興味のある方は必見です。

今回の留学でアデレードをお選びになられた経緯を教えてください。


オーストラリアの大学院でアグリビジネスを専攻できるコースを探していく中でアデレードという地域を知りました。

オーストラリアで農業と言えば、代表的なクイーンズランド州も候補に挙がっていたのですが、日本の農業を考える上で季節に四季があるように アデレードは気候的にも四季が分かれていたこと、そして 住みやすく人口も多すぎないため、落ち着いた環境でアグリビジネスを勉強できると思い選択しました。
またファームなどもアデレードの中心地から比較的近い距離にあるので農業の実践的な知識を得る機会も多いのではないかと言う思いで選択しました。

アデレード大学で Master of Global Food and Agricultural Businessを選んだ理由をおしえてください


もともと実家が農家であり、日本の農業を違った角度から支援できないかと考え始めたことがアグリビジネスを専攻するに至ったきっかけです。

日本国内でアグリビジネスを勉強することもできますが、違った視点(海外)から日本の農業をみてみたいと考えていたため海外の大学院へ進学することを決めました。

特に自分の中で「オーストラリアは農業が盛んだ」というイメージがあったのですが、ほとんどの大学院では 経営や経済学のバックグラウンドが出願要件として求められました。

その中で、アデレード大学のMaster of Global Food and Agricultural Business は経済や経営バックグラウンドがない人でも受け入れしていることも理由です。

Global Food and Agricultural Business は、どんなことを学ぶコースですか? それは人々の社会や生活にどのような影響や応用できるのですか?


Global Food and Agricultural Business は世界の食農ビジネスに関する問題を現代の様々なトレンドと照らし合わせながら分析し解決方法を学ぶコースになります。

ビジネスというと経営学の印象が強いですが、このコースでは経済学を中心に学習を進めていきます。農業を中心に人やモノ、お金、土地の流れを分析して問題の原因を見つけ出し解決策を考えるというのがコースおおまかな形となります。

政府の政策という点から農産物の生産や販売に関する活動を分析してみたり、環境問題、戦争、テクノロジーの発展がどのように農業経済に影響を及ぼすかを分析したりします。


簡単な例でいうと、実際に人々の生活の中で、スーパーマーケットなど販売される農産物の値段が上がるといってもその要因は様々です。 大きく分けると作物の供給が減ったことが原因であったり、需要が高まったことが原因であったりします。でも供給が減った根本的な部分には肥料の高騰や水不足、政治といった実に様々な要因が考えられます。
需要の高まりも季節的なものであったり、戦争などによる突発的なものであったりとこれまた要因はたくさん考えられます。

なので、農産物一つの値段の上昇を説明するのにも農業において人、モノ、お金や土地に関するつながりや流れを意識して考える必要があります。

このコースではこういった農業に関する事象を分析するための方法を学びその解決策を考えるため、実際に世の中の食糧問題や農家の生産活動を分析、予測する際にも応用していくことが可能です。

特に面白かった科目やその授業内容を詳しくおしえてください。


自分の印象に残っているのはDecision Making という科目とExperience という科目です。

Decision Making は意思決定という意味ですが、この科目では実際のデータを基に農家の経営をシミュレーション、分析を行い架空の農家へのアドバイスを行いました。Excelを使用して自分でモデルを一から作り上げるのには苦労しましたが、授業内で学んだ方法を基にして過去、現在、未来の農家の経営状況を分析し解決策を提言するまでの過程は、まさに自分が農業における コンサルティング を行っているような感覚でとても楽しかったです。


Experienceは約1週間の集中講義で南オーストラリアの食農ビジネスを行う企業や農家を直接訪問して経営に関するお話を聞くというものでした。

授業は全員がチャーターした専用バスでの移動だったので集合時間は厳守、ある日は少し遠い農業地帯を訪問するために朝5時集合というのもありました。普通だと眠くて身体が動かない時間なのですが、この授業の際には普段見ることのできないようなビジネスの裏側を観ることができるため不思議と脳が覚醒していました。

この授業を通して教科書だけで学ぶことのできない実践的な部分を実際のアグリビジネスの現場で、経営者の方々へ直接質問などをして学ぶことができたのですごく有意義な時間だったと思います。またこの後に紹介させていただくバロッサアンバサダーのバロッサという地域も自分はこの授業を通して知りました。プライベートにおいてもとてもお世話になった地域なのでこの授業がある意味ターニングポイントのようなものであったと思います。

もう一つの科目のTrade negotiationという科目は WTO(World Trade Organization/世界貿易機関)の発足までの歴史やその役割を世界で起こった出来事と関連させながら学習します。

この授業でとくに印象に残った部分は授業日を丸二日間使って行われた、チームによるWTOの貿易交渉シミュレーションです。このアクティビティは7つほどのチームに分かれて、各チームの与えられた目標を達成するために交渉を行うというものでした。

事前に多くの資料が配布されてプライベートでの交渉(根回し。所謂ロビー活動です)も可能であったので、各チームの準備力が問われるものとなっていました。また、交渉本番においても認識の違いや事前の準備不足などからチーム間の対立が起こっていたりしました。

先生がおっしゃっていた‘スムーズにいく貿易の交渉は無いし、実際は長い年月をかけて行われるためもっと困難なものだ’という言葉が印象に残っています。

この授業、アクティビティを通じてWTOの役割はもちろん、交渉における事前の準備(根回し)やチームワークの重要性を強く認識しました。


アデレード大学の教授陣についても詳しくおしえてください。


自分が所属していたコースにはユニークな経歴を持った先生方が多かったと思います。
元農家であった先生やコンサルタントとして働いていた先生、一般企業で長らく働いていた先生など様々なバックグラウンドを持った方々が在籍している印象です。

授業においても彼ら自身の具体的な経験をもとに解説などをしてくれたので授業の内容を理解するうえですごく参考になりました。また、様々な経歴を持つ人が多いからこそ、自分自身新たなトピックに興味を持つきっかけとなったり、他の知識と掛け合わせて違った視点から物事を考えることができるようになったりと自身の学びにすごく影響を与えてくれたと思います。

特に選択授業で受講したTrade(前述のWTOシュミレーション)の授業を担当していた先生は以前、母国の国策で貿易交渉を担当した経歴があるなど 専門家の意見を聞けるチャンスが多かったと思います。


コロナ開け後にすぐに渡航されましたが、アデレード大学の授業スタイルについて教えてください

自分の所属していたコースでは基本はすべて対面授業が行われていました。

ただコロナ感染なども考慮して体調がすぐれない学生や感染が不安な学生はオンライン(Zoom)での授業参加も認められていました。事前にウェブサイトにアップロードされている資料を使って教室で対面授業をする先生もいますし、中には事前に授業内容をまとめたビデオ(計40分程)を予習として見ることを課す人もいました。

後者のスタイルは事前に授業の大まかな内容が把握できて細かい部分や分からなかった部分は対面での授業で先生に直接質問ができるので授業全体を通して理解しやすかったと思います。また、その授業内では動画で学んだ知識をディスカッションなどで深掘りすることもあったので、事前の予習のためのオンラインビデオは「知識の定着」という点においても大いに貢献していたのかなと思います。


普段どのくらい勉強していましたか?授業でわからないことがあったらどうしてますか?


少くても毎日3時間以上は 勉強していました。
3学期制で休暇の期間も短く、ほぼ毎日何かしら授業の課題や予習があったので休むことなく勉強していました。普段から継続的に勉強して早くから課題などに取り組むことで自然と友人たちと意見交換する機会が増えて、そこからまた新たな学びにつながっていくことが多かったので毎日続けて勉強してよかったと思いますしあまり苦には感じませんでした。

また、授業の内容や課題でわからないことがあったら、すぐに先生にメールで質問する、またはアポを取って直接会って質問などをしていました。質問する際にもただ疑問を投げかけるのではなくて自身の意見や状況などを踏まえて質問することを心がけていたら、わからない部分を丁寧に教えてもらうことができたと思います。

アデレード大学での2年間を振り返ってどうでしたか?


課題などに追われる時間が長くて疲れていることも多かったのですが、とても有意義な時間だったと思います。

自分のコースでは日本人が自分一人だったので最初はすごく不安でしたが、逆に一人だけという状況は自分を覚えてもらうチャンスだと考えるようにしました。
そのマインドセットで授業やコミュニティでも積極的に自己紹介をして誰かとコミュニケーションをとるように心がけていました。結果的に仲の良い友人もたくさんできましたし、先生方と良い関係を築くこともできたと思います。


アデレード大学で出会った友達などから影響を受けたり、新しい価値観に触れ、自身が成長したなと感じるところ(変わったところ)はありますか?


一番自分を成長させてくれたと感じる出来事は授業で知り合った友人を通して紹介してもらったバロッサアンバサダーの活動です。



アデレードから車で北に1時間ほど行った場所にあるバロッサバレーというオーストラリアで最大のワイン産地でVintage Festivalや地域のイベントなどを約8ヶ月間にわたってPRしていました。

合計9人のメンバーは自分以外のほぼ全員が地元出身であり、コミュニティなどもほとんどがローカルの方々で構成されていたので未知の世界へ足を踏み込むような感覚でした。

初は不安と緊張であまり自分から話せずにいたのですが、ローカルコミュニティの温かさや人々のバロッサへ愛情に触れて徐々に自ら進んでコミュニケーションをとるようになっていきました。この経験を通じて様々な人と出会い新たな繋がりを作ることが出来ましたし、普段おとなしかった自分が初対面の人にでも積極的に話せるようになるまで成長できたと思います。


週末などお休みの日はどのように過ごしていますか?


基本的に家でじっとしている(なにもすることがない)のが辛いタイプなので、日曜日などの休日でも学校に行って自習したりしていました。意外と休みの日にも勉強しに来る学生も多いので、自習スペースなどで偶然友人に会って一緒にいたりすることもよくありました。また平日の活動にはなりますが、水泳クラブにも所属していたので週に二日ほどクラブの活動にも参加して身体を動かすと同時にクラブのメンバーたちとよく話をしていました。

卒業を待たずに、大手食品専門の商社に内定が決まっていると伺いました。
就職活動で心がけたことや、就活をいつぐらいに初めて、どのような流れで内定を得られましたか?


就職活動を始めたのは今年の2月くらいになりますので、決して早い方ではありません。
むしろ、最初から日本での就活をするという予定ではなかったので、企業情報の収集や就活用の試験勉強などのスタートは遅れていたと思います。

ただこの時、むやみやたらにあらゆる企業に応募するのではなくて、自分の学んでいる分野(アグリビジネス)を事業として大きく展開している企業に絞って効率的に就職活動を進めることを心がけていました。

結果、試験から面接まですべてオンラインで行い、最終的に内定をいただきました。

最後に、これから同じコースを目指す学生へアドバイス・メッセージをお願いします


オーストラリアで生活を始めると自分が思っていた(想像していた)ことと違うことや日本ではありえないようなことが頻繁に起こります。
もちろん不安や寂しさを感じることも多くなるかと思います。
ただ自分はそういったストレスを乗り越えていくことで人は大きく成長することができると考えています。なのでストレスを感じるときは何か成長のチャンスだと考え、失敗を恐れずに積極的に行動していってほしいと思います。
また、知り合いとのちょっとしたつながりから思いもしないチャンスがやってくることもあります。現地でできた友人とのつながりなども大事にしていってほしいと思います。



スタッフからのコメント

健さんは アデレード大学に在学中の成績は GPA 6/7以上を維持しており、常に授業料 30%オフの奨学金が適応されていたのですが、それらの苦労を微塵にも相手に感じさせないのです。インタビューでも苦労はしたけど、とても楽しい大学院での時間でした、とサラっと言えてしまう好青年です。だからこそ、ローカルコミュニティにも愛されるキャラクラーなんだと思います。
8月にすべての授業を終え、来年4月の入社までは卒業生ビザで オーストラリアの農家さんで研修予定と聞いてます。ぜひ日本の農業の未来を支える人材になって欲しいし、そうなれると信じて応援しています!
豪政府認定留学カウンセラーPIER資格保持
(QEAC登録番号I009)
オーストラリア歴は24年目になりました。QLD州、NSW州、SA州の主要都市で仕事と生活していましたので、都市の違いから皆さまの目的に沿ったベストなアドバイスを心がけています。 このカウンセラーに質問する

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